今月の書評-93

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この期に及んでも感染者数を更新し続けるアメリカですが、
あの国、どうなっちゃうの?

コロナにとどまらず、黒人暴動~銅像の破壊~真っ二つに割れた民意~力に任せたパワハラ外交その他その他・・・。

アメリカ大統領と言えば真っ先にJ・F・ケネディを思い出すセンセの世代は辛うじて(かろうじて)米国にあこがれを持っていた世代ですが、「古典の一冊でも読んだことがあるのだろうか?」という現職大統領を抱く今のアメリカに対して、今の日本の若い人たちはどう感じているのだろうか?

明治維新以降、基本、学ぶべきものの多くを外から得てきたこの国ですが、米国に限らず欧州をも含めて、これまで、先進国と認めてきたが故に比較的無批判に受け入れてきた数々の理念~価値観に対して、ようやく自らの頭を用いて根本的に批判を加えて再構築すべき転換点に立つきっかけとなれば良い、とセンセなどは考えてます。


ガラパゴス化をさらに推し進めるのも、一つの面白い方向かと・・・。


さて、興味深い点が満載のお酒遺伝子ALDH2 ですが、前回、「変異型ALDH2 遺伝子を有するマウスの細胞は活性酸素の産生能が高い」という研究結果がある、というお話をしました。また、ALDH2 酵素の基質であるアセトアルデヒドも活性の高い物質である、ということもお話しました。

アルツハイマー病の研究ですから、ここで用いた細胞は脳に関連した細胞だと思いますが、免疫細胞の一種である好中球などが体内に侵入した外敵を攻撃する武器の一つが活性酸素種です。
仮に、変異型ALDH2 遺伝子を有するマウスの免疫細胞がそうでないマウスに比べてより多くの活性酸素を産生し、その結果、外敵に対する抵抗力がより強くなるのであれば、これは極めて興味深い結果となります。

加えて、活性度の高い(=毒性の強い)アセトアルデヒドの分解能が低いという事実は、ウイルスや病原菌などがアセトアルデヒドに暴露する時間が長くなることを意味するわけですから、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドにはこれらの外敵に対してむしろ防御効果があるのでは?という仮説すら提出できます。


一方で、飲酒は免疫力を低下させる、という一般論があります。


「酒は百薬の長」なのか、あるいは「適量の飲酒は体に良い」のか、はたまた「わずかな飲酒でも体に悪い」のか、いまだ混沌として結論が出ていません。
免疫に関しても同様で、過剰なアルコール量は論外として、ほろ酔い程度の適度な量が免疫に及ぼす影響に関しても、決定的な結果は得られていないようです。
経験的には、「風邪をひいたら玉子酒を飲んですぐ寝る!」などというのを含め、適度な量のアルコールは免疫にも良い!と言いたくなりますが・・・。

いずれにしましても、「今月の書評-90」の図を見て頂ければ一目瞭然であるように、変異型ALDH2 遺伝子を有する大規模なポピュレーションの存在は極めて印象的であり、何らかの生物学的な存在意義があることは間違いないと思われます。

また、この図は、現在ここに住んでいる住人たちから得られた結果に基づいて描かれた図である、という点にも注意が必要です。
要するに、この遺伝子変異が生じたのが今からおよそ2 万年前ですが、その当時から現在に至るまで、この変異を固定する因子が営々として存在し続けていることを意味するからです。

ことによると、この遺伝子変異型とお酒とは関係がない可能性もあります。

要するに、アセトアルデヒドをもたらす基質(=酵素の標的物質)はアルコール(エタノール)に限定されないからです。従って、他の基質によってもたらされたアルデヒドが何らかの利益をもたらしている可能性も、ゼロではありません。

あるいはまた、ことによると、この遺伝子とリンクした、知られざる他の遺伝子が関与しているのかもしれません。けれどもその場合は変異型遺伝子にリンクする他の遺伝子も同じように変異している必要があるため、%としては限りなく低くなり、このセンは無い!と断言してもOK だと思います。

一方で、この図の真っ黒に塗りつぶされた華南の地域を見れば見るほど、稲作発祥を抜きにして考察する方が不自然であるように思われます。以下、妄察。



今からおよそ2 万年前、すでにこの地域の住民は稲作を行い、酒も造っていた。
酒は原始的などぶろくで、度数も低かった。
米も現在のように精米されたものではないので、ミネラルなど、
米糠由来の栄養素も多く含んでいた。
このような米から生まれたどぶろくには、自然の乳酸菌や酵母によって
産生された様々な種類のビタミンやアミノ酸が含まれていた。
日々の暮らしも現代のように複雑ではなく、
車の運転をする必要もなかったので、
度数の低いどぶろくは、未成年であっても、食事の一部として
食べられていた」。
この地域の住民は、古来より、ウイルスや細菌や原虫その他、
様々な感染性疾患に定期的に悩まされていた。
ある時、ある村で、これらの疫病から逃れた一群の人々が生まれた。
これらの人々の特徴は、どぶろくを飲みすぎると顔が赤くなることであった。
これまで「赤顔村の住人」とからかわれてきた村人たちであったが、
徐々に数を増やし、そのうち他の村の娘っ子からは
「とうちゃん、あたいは結婚するときは、
酒を飲んで顔が赤くなるヒトの方が良いなあ・・・」
とまで言われるほどになった。
このようにして「赤顔村の田吾作」は子孫を増やし、
アジア全土を支配することとなったのだ!


福沢諭吉の自伝、「福翁自伝」には、「酒を食べる」という表現が出てきます。
実際にどぶろくを飲む機会に接すると、この表現には違和感がないことが分かります。ぜひ、ご自分で作って試してみてください。

但し、自己責任でお願いいたしまする・・・。








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このページは、喜源テクノさかき研究室が2020年7月 5日 14:10に書いた記事です。

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