今月の書評-92

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未だ終息とはいかないコロナですが、みなさまいかがお過ごしですか?
コロナに加えて本格的な梅雨入りとなり、バイクにも乗れずゴルフにも行けず、どうにも煮え切らない日々が続いております。

センセの実験も「三歩進んで二歩下がる」展開が延々と続いておりまして、まさに牛歩状態。ま、一歩ずつでも、ともかくも進んでいるのが救いかな?


さて、お酒遺伝子 ALDH2 の続きですが、「今月の書評-90」の地図を今一度見ていただきたい。福建省~江西省~広州を中心とする中国華南地域が真っ黒です。
少し薄いエリアが中国全体~台湾~日本列島~朝鮮半島などの東アジア全体に広がり、チベット~満州~東南アジア地域あたりは、も少し薄い色で覆われています。

で、これらの色は、アルデヒド脱水素酵素であるALDH2 の変異型遺伝子が多く見られる地域を表しています。詳しくは「今月の書評-89」をご覧ください。

で、まさに現在、リアルタイムで世界的規模に厄災を振りまきつつあるコロナウイルスですが、湖北省武漢市で発生したのは皆様よお~っくご存知のところであります。

で、毎年のインフルエンザを始めとして、SARS などのウイルス性疾患、マラリアなどの原虫による疾患、コレラやペストなどの細菌性疾患が定期的に発生するのがこの地域です。さすがに近年ではコレラやペストの発生はほとんどゼロ水準に抑えられていますが、過去にはこの地域で発生したコレらの www 細菌性疾患が世界規模に拡散し、多くの人々の命を奪った歴史も存在します。

で、今回の新型コロナウイルスによる肺炎の国別死亡率の歴然たる差に、今現在、我々は驚愕しつつあるわけですが、このアルデヒド脱水素酵素のALDH2 変異型とコロナの死亡率との間には何らかの関係があるのではなかろうか?と、センセは考えているわけです。

ALDH2 変異型と感染症との間には何らかの関係があるのではなかろうか?という疑問はこれまでも時々指摘されていましたが、どうにも決定的な証拠に欠ける。
けれども今回のコロナの件を見ても、決定的証拠がないからといってこれをおろそかにするのもつまらない。

新型コロナウイルス肺炎の罹患率~死亡率が東アジアにおいて明らかに低い理由に関しては、すでにいくつかの仮説が提出されています。
以下、箇条書き。


1) 欧米人に比べて肉体的接触の習慣~機会が少ない。
2) マスク着用の習慣化
3) アジアと欧米のコロナウイルス株の違い(種類がちょいと異なるということ)
4) BCG ワクチン接種の有無~株の違い
5) 結核~インフルエンザ~他のコロナ関連疾病の過去の流行による抗体の獲得
6) 季節的要因


といったところでしょうか。
どれもこれもそれなりに説得力があり、実際はこれらが絡み合って違いが生じているのでしょうが、罹患率ではなく純粋に死亡率のみで考えると、やはり遺伝的差異に関して考察するのは意義あることである、と思われます。

で、以降、考察というか妄察というか、していきます。ちょと難しいかも・・・。


昨年の12 月、アルツハイマー病の研究をしているアメリカのスタンフォード大学のグループが、ALDH2 に関して興味深い研究結果を報告しました。
すなわち、アルツハイマー病の患者から得られたALDH2 変異型の細胞を正常型の細胞と比較検討した結果、変異型細胞は正常型細胞に比べてより多くの活性酸素を産生することが分かり、さらに、この細胞にアルコールを添加すると、その傾向が一段と強まる、とのことでした。
さらに、変異型遺伝子を持つマウスにアルコールを与えて調べたところ、変異型マウスは正常型マウスと比べてより多くの活性酸素を産生し、脳神経の炎症やベータアミロイドタンパクなどのアルツハイマー関連因子の増加が見られた、と結論付けました。

そうなりますと、ALDH2 変異型を有するヒトは、他の諸条件が等しいと仮定した場合において、アルツハイマー病や食道ガンなどの疾病に罹患する確率が高いと、とりあえずは結論付けられます。

欧米人と比べて東アジア人の方がアルツハイマーになりやすいという事実はありませんし、コロナとは関係ないので、ALDH2 アルツハイマーとの関係に関してはここではこれ以上突っ込みませんが、大事な点は、ALDH2 変異型を持ってるヒトがお酒を飲むと活性酸素が生じやすい、という点です。

実は活性酸素、ある種の免疫細胞が病原菌を殺す際に利用する強力な武器です。さらに、ALDH2 酵素の基質であるアセトアルデヒドもまた、反応性の強い(=毒性の強い)物質です。

ということは、ALDH2 変異型を有しているヒトは、正常型を持っているヒトと比べてアルツハイマーや食道ガンになりやすい一方で、ウイルスを含めた外部からの病原微生物に対して抵抗性がある可能性が考えられます。

ここで注意して頂きたい重要な点があります。それは、アルツハイマーにせよガンにせよ、一般的には、比較的老年になって発病する病であり、発病する頃には既に結婚して子供も生まれ、或いは孫すら生まれている可能性がある、ということです。

どういうことかというと、老年になってやっかいな病にかかる確率が高くなるとはいえ、若年において何らかの利益が得られるのであれば、その変異には意義がある。加えて、その意義ある変異は子や孫に伝えられていく、ということです。

本日はここまで!次回も続きます。



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このページは、喜源テクノさかき研究室が2020年6月28日 15:23に書いた記事です。

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