今月の書評-62

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「縄文人が育てていた熱帯ジャポニカ米は陸稲である」とのことですが、では、熱帯ジャポニカは水田では育たない?との素朴な疑問が生じます。

答え:育ちます。

そもそも陸稲と水稲の違いは、「陸稲は陸でも湿地でも育つが、水稲は陸では育たない」というのが正解です。

ですから縄文時代人も、たぶん、湿地でも陸でも山の斜面でも、播いて育つところならばどんなところでも熱帯ジャポニカ米を播いて育て、実がなったら収穫していたと思います。

じゃ、なんで、弥生人はわざわざ「水田」なるめんどなもんをこさえて水稲を一所懸命に植えたのか???「陸でも湿地でも育つ稲をそのまんま適当に直播して収穫していた縄文人の方が賢いジャン!」とおっしゃるあなたにセンセは親近感を感じます。

お答え:なんだかんだ言って、結局、水田稲作の方がコスパが良いから!です!以下、理由。

1. 陸稲は乾燥に弱い!
2. 連作に弱い!!
3. 雑草がはびこる!!!

陸稲.jpg
陸稲のイメージ:畑の作物なんでも実験 http://ononomugi.seesaa.net/article/452552218.html
より拝借させていただきました!

そもそも稲の原種は森の中でほそぼそと生きていたようです。
これが湿地にニッチェを獲得した理由の一つとしては、「競争相手が少ないから」で説明できると思います。
観葉植物にせよ何にせよ、植物を育てるヒトが注意しなければならないことの一つとして「水をやりすぎない!」ということが挙げられると思います。
水をやりすぎると根は酸素を吸収できなくなり、いわゆる「根腐れ」を起こし、最終的に、その植物は枯死してしまいます。

でも、湿地に育つ植物は根腐れを起こしません。
詳しいメカニズムは知りませんが、合目的的な説明をすると、「競争相手の少ないニッチェを探した結果、湿地を選び、根腐れを起こさないような形質を獲得した」ということになるかな?

いずれにしましても、純然たる水稲種である「温帯ジャポニカ」は、競合する相手の少ない湿地に特化した結果、「湿地である限りは繁栄する。けれども湿地以外では生育できない」という選択肢を選んだ種である、と言えると思います。

で、陸稲である熱帯ジャポニカは、未だ選択肢に自信がない「中学生」のような存在、といえるかも・・・。

1. の「陸稲は乾燥に弱い」ですが、これも中途半端なニッチェ選択の結果を反映するものだと思います。

2. の「連作に弱い」ですが、これは熱帯ジャポニカの特性と言うよりも、むしろ「水田」という特殊な条件によるものだと思います。
水田と畑を比べてみて一目瞭然なのは、水田は、少なくとも稲を栽培している期間は水を張っている、ということです。
で、多くの場合、現代においてすら、水田に水道水を引いている農家は居ないと思います。もし居たら、居ないと思うけど、お金の問題もさることながら、やめたほうが良いと思います。
普通は、川やら沼やらの水を水路で引いて落とし込みます。
で、これらの水には土壌中のミネラルを始めとして、山の木々の葉が微生物によって分解された様々な種類の養分などが含まれています。
そのため、水田は、畑作と比べ、施肥が少なくて済むと言われています。

その他にも水田の利点は数多くあります。

水は「比熱」が大きいため、田んぼは「夏は涼しく冬は暖かい」状況となります。その結果、稲にとっては「温度的」に安定した状況がもたらされます。

秋には刈り取られるので、冬の温かさはどうでもいいと思うけど・・・。

また、水を張ったのちの水田の「泥」には多くの微生物が住み着きますが、これらが稲の根との間に一種の「共生関係」を築くことにより、稲の生育を助ける働きをすることも分かってきました。

3. の「雑草がはびこる」に関してはすでに述べたも同然ですが、根腐れを起こさない競合植物は限定されるので、畑作よりも雑草駆除は圧倒的に楽、という訳です(しょせん農作業とは無縁のセンセがほざくだけの世迷言だとお考えください)。


このような特殊な条件に特化してきたジャポニカ栽培米ですが、これをsystematic に domesticate したのが古代長江流域の人々だった、と指摘して、令和二年初のブログをお開きにしたいと思います。

では皆さま、よいお年を!


・・・って、冗談が過ぎるよね ✖



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このページは、喜源テクノさかき研究室が2020年1月 4日 21:43に書いた記事です。

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