腸管免疫のお話 その五

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続きです。今日は本当に暑いです。嘘ではありません!!!・・・何もムキにならずとも、、、。

お昼はインスタントのきつねそばを食べながら、缶ビールを飲みました。眠くなりましたので、冷房を掛けながらお昼寝。今さっき起きて、続きを書いております。現在午後4:30。猛烈な西日・・・。外気温は、たぶん、35度ぐらいはありそうな、、、。

さて、前回までに腸管免疫の大事な点は大体お話できたと思います。もちろんまだまだ大事なところがたくさんあるのですけど、全て話していてもきりがないので、腸管から細菌菌体などが直接取り込まれ、体全体の免疫系を活性化している、と言う事実を分かってもらえれば、とりあえずは十分かと思います。

ここでは、「それでは乳酸菌、特にバイオジェニックスの概念とはどのように関わっているのか?」と言う疑問に対してお答えしていこうと思いますが、実は腸管免疫のお話の中で、もう一点お話したい大事な事柄があります。それは、「免疫寛容」と言う概念です。寛容と言う言葉は、「ま、いっか!?」と言う事を意味する概念です。これについて、ここで少しご説明したいと思います。

腸管、特に大腸には、夥しい数の多くの種類の細菌が住み着いていますが、その殆どは体にとって無害な菌です。これら無害の細菌群に対して免疫系が過剰に反応したら、腸管全体にわたって大規模な炎症反応を引き起こす恐れ無しとは言えません。普通に健康的な毎日を過ごしている大部分の人々は、もちろんその様な事態に陥ってはおりません。その理由は、これらの無害な腸内細菌群に対しては、我々の免疫系が「免疫寛容」の状態になっている為です。免疫寛容が具体的にどのように生じるのか未だ不明な点が数多くあるのですが、一つの事実として、様々な免疫細胞には「抑制系」の細胞が数多く存在し、これらの「抑制系免疫細胞」が活性化する事によって、「免疫寛容」が発動されたり、或いは「過剰な炎症反応」が抑制されると言う事が分かってきました。

従来は、「免疫系が活性化する」と言いますと一方的に「病原菌などに対して抵抗を示す免疫系が強くなる」と言う意味でしたが、このように抑制系の免疫の役割が明らかとなってきますと、「免疫系が活性化する」と言っても単純に外敵に対して抵抗力が強くなり、炎症惹起能が強くなる、と言う風には捕らえられなくなって参りました。

従いまして現在では、「免疫系を活性化する」と言う言葉には、このような「免疫寛容」を生じさせると言う意味や、或いは「過剰になった免疫反応を抑制する」と言うニュアンスが含まれています。もっとはっきり言いますと、「免疫系が活性化すると言う事は、すなわち、炎症系免疫と抑制系免疫の両方が、互いにバランスを維持しながら機敏に体の恒常性の維持に努めると言う事」と言う風に捕らえるべきかと、個人的には考えています。

さて、前置きが長くなりましたが、乳酸菌の摂取が免疫系にどのような影響を与えるか、研究室のデータを元にしてお話致します。

下の図は、普通の餌を与えて育てたマウスの血中白血球数の変化の図です。縦軸が白血球数、横軸は日数です。

 

normal.jpg 一匹一匹の白血球数が、のんべんだらりと、増えもせず減りもせず、推移している状況がよく分かるかと思います。このようなマウスに大豆麹乳酸菌発酵液を10%に混ぜた餌を与えました。そして同じように血中白血球の数を数えました。下の図がその結果です。

SKL.jpg

 

 

 

 

 

 

 

これを見ますと、大豆麹乳酸菌発酵液を与えた全てのマウスで、摂取開始2日後には血中白血球数が急増する事が分かります。面白いことに、全匹共に白血球数が増加した後、同じように全匹の白血球数が今度は低下。さらにその後、全匹再び増加、と言う事を繰り返しています。

これは、恐らく次のように解釈出来るかと思います。すなわち、白血球数が増加しっぱなしでは体にとっては良くないので、今度は白血球数を抑制する様な因子が発動し、これに反応して低下した白血球数が減りすぎますと、今度は再び増加させる様な因子が発動した、と考えられます。すなわち、免疫系全体の動きが機敏になった、と考えられます。

大豆麹乳酸菌発酵液の成分中、免疫系を最も活性化するものは乳酸菌菌体であると考えられます。加えて、投与した大豆麹乳酸菌発酵液は加熱滅菌しておりますので、その中の乳酸菌も全て死んでおります。乳酸菌の免疫賦活能はその菌体にあると考えられておりますので、この結果は、加熱死菌体にも免疫賦活能が存在する事を意味しています。

それでは今回、乳酸菌死菌体はどのようにしてマウスの血中白血球数に影響を与えたのか?

恐らく、腸管パイエル氏板のM 細胞から菌体が取り込まれ、これが全体の免疫系を活性化し、その結果、免疫系の反応が機敏になった、と考えられます。このとき腸管免疫系は乳酸菌に対しては免疫寛容を発動し、無反応状態になっていると考えられます。

従いまして、ビフィズス菌は別として、少なくともその他の乳酸菌に関しましては、死菌生菌の区別無く、これを口から摂取する事により、まずは腸管免疫系が活性化し、その後、体全体の免疫系が活性化されると言う事がお分かりになったかと思います。

さて、「腸管免疫のお話」も今回で終了。書いているうちに、お相撲も終了。今日の白鳳、危なかったデス・・・。外の気温も一向に下がる気配ナシ!この後はとりあえずシャワーを浴びて、その後、よおっく冷えたビールをキュウ~~~っとやる予定でございます。

次回は夏休みまでお休み。次は何を書きましょうかね?まだ決めておりませぬ、、、。

それでは皆様、夏休みまでおさらばデス!

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2012年7月16日 16:29に書いた記事です。

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