腸管免疫のお話 その二
続きです。
前回は、免疫を担う代表的な細胞たちをいくつかご紹介して参りました。今回はまず、体の中の免疫組織全体について説明し、その後、腸管免疫組織に的を絞ってお話ししたいと思います。
腸管免疫が学問的に注目を浴びる前は、腸管は単なる消化吸収の場であるとしか認識されていませんでした。ところが20数年ぐらい前から腸管に存在する免疫細胞の数は体全体の50~70% にも及ぶことが分かりだして以来、腸管はがぜん多くの免疫学者の注目を浴びることとなりました。
左の図は、腸管免疫に注目が集まる以前に考えられていた「免疫臓器」です。
黄色いぽつぽつしたものが「リンパ節」、真ん中の臓器は肝臓と脾臓です。肝臓や脾臓にも数多くの免疫細胞が存在しています。
右の図は、腸管免疫系の組織です。腸管以外にも、鼻腔~咽喉~肺などが含まれている事が分かります。すなわち、体の外部と内部を分け隔てる「粘膜」系組織の全てが含まれている事が分かります。従いまして、現在ではこれらを総合して「粘膜免疫」と呼ぶこともあります。
下の図は、胃と腸を表した図です。図の中で、ピンク色で描いた組織が小腸に沿っていくつか並んでいるのが分かります。これは「パイエル板」と呼ばれる組織で、腸管免疫にとって非常に重要な役割を果たしている組織です。
パイエル板の中には、リンパ球などの免疫細胞が非常に多く存在しておりまして、腸管管腔内を流れてくる細菌菌体などの「抗原」を認識し、病原菌などに対処すべく、常時備えを構えて居ります。
下の図は、そんなパイエル板を輪切りにした図です。
真ん中にたくさんのリンパ球が存在して居るところを表現して見ました。腸管管腔に面しているところに黄色い細胞が見えますが、これはM 細胞と呼ばれる細胞で、腸管免疫において大変重要な役割を果たします。M 細胞に関しましては、後ほどご説明致します。
下の図は、腸管管腔を輪切りにし、腸管の蠕動運動(ぜんどううんどう)によって、管腔内を細菌が流れていく様子を表したものです。
なんかはじめの「小学生にも分かりやすい」という約束をすっかり忘れてだんだん難しくなって来ましたが、そんなもんです。次はパイエル板の粘膜上で行われる免疫細胞の活動についてお話して行きたいと思います。
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