腸管免疫のお話 その一
みなさんこんにちは!ご機嫌いかがですか?大型連休をとられた方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、風薫る五月の連休、大いに満喫しておりますでしょうか?
私は研究室に缶詰状態で、普段出来ない論文書きのお仕事を一生懸命やっています。でも、いささかと言おうかめちゃらくちゃらと言いましょうか、疲れましたので、気分直しにブログの更新を致します。今回はこれまでと趣を異に致しまして、免疫学、特にバイオジェニックス乳酸菌をより深く知っていただくための必須科目であります腸管免疫学について講義したいと思います。
いきなり「腸管免疫学」とか言うと、これはいささか手強そうですね!
でもご安心ください。中山センセお得意の「マンガ」で逐一解説して行きますので、小学生でも分かるようになっております。本当に小学生でも分かるかどうかは小学生に聞かないと分かりませんが、分かるかも知れない、ぐらいの意味でございます。小学生で分かっても大学生では分からない、などと言うこともこの世には良くあることですので、小学生にでも分かる様に書いたからと言ってそれが何だ!と言うご意見もごもっともかと存じますが、相変わらずどうでも良いことをくどくどしゃべりますね、このオトコは!
さて、免疫と言う言葉について、まずはお話を致します。
基本的には、「病原菌やウイルスなどの外敵をやっつける仕組み」と定義するのが適切かと思います。本来的な意味は少し異なるのですけど、それはこの際無視しちゃいます。あんまり詳しく話し出すと、小学生はすぐ退屈しはじめて隣の女の子の髪の毛を引っ張ったりして泣かしたりするでしょうから、出来る限り簡単明瞭にお話して行きます。
本来的には、「病原菌やウイルスなどの外敵をやっつける仕組み」が免疫ですけど、そのうちに色々免疫学も発展して参りまして、外敵だけではなく、ガンなどの「内敵」に対しても常日頃から働いてくれている事が分かって参りました。「外敵」に対しましては既に「抗生物質」などの優れた医薬品が発明されておりますので、我々現代人は以前に比べて外敵に対してはそれほど注意を払うことも無くなりましたが、なにぶん現代日本人の少なくとも1/3はこれで死ぬこととなろうとも言われているガンに関して免疫が働くともなれば、やっぱり免疫の働きを理解しておくのは大変重要かと思います。
それではまず、いくつかの免疫担当の細胞クン達にご登場願います。まず始めに「マクロファージ」から。
この絵はマクロファージが「グラム陰性菌」や「グラム陽性菌」を貪食(どんしょく=がつがつ食べること)しているところです。赤いのがグラム陰性菌、青いのがグラム陽性菌です。
グラム陰性菌やグラム陽性菌は大体1g なんぼで売られていますので、グラム陰性、陽性菌と言われています。というのは、もちろん嘘です。
「グラム染色」で染まるのがグラム陽性菌、染まらないのがグラム陰性菌です。
では「グラムって何?」と言う質問が小学生から挙がりました。ハイ、それはヒトの名です。おしまい。詳しくお話しするときりがないので、どちらも「細菌です!」でおしまいと致します。
さて、マクロファージの役割の一つは、この絵のように、「異物」をがつがつ食べることです。本来的には「異物」とは「外敵」のことですが、ある場合にはガン細胞も異物として認識されますので、マクロファージもガン細胞をこの絵の様に食べる場合もある様です。マクロファージは貪食機能だけでなく様々な役割を果たしており、基本的には免疫機能の中心となる細胞です。
さて、次に登場致しますのはリンパ球です。その中でもBリンパ球と呼ばれるリンパ球に登場して貰いました。
この絵では、Bリンパ球クンがなにやらY字型のものを体から発射していますね!これは「抗体」と言うもので、いわば時代劇の「さすまた」の役割を致します。「さすまた」を知らない小学生は、お父さんやお母さんに聞いてください。さすまたを知らないお父さんやお母さんは、ご自分のお子様に聞いてみてください。
さて、Bリンパ球クンは、このさすまたで病原菌をやっつけます。このBリンパ球の抗体=さすまたは、病原菌に対して「特異的」で、ちょいとでも人相の異なる病原菌に対しては、せっかくのさすまたも役には立ちませぬ。
でもそれで良いのです。誰彼にもさすまた攻撃を行いますと、善男善女の長屋の皆さんにもあらぬ攻撃が仕掛けられてしまいますので、やっぱり「正しい人相書き」の大悪人に対してのみ、さすまた攻撃となる訳でございます。さすがですね、免疫!
さて、さらなる登場人物、ではなくて登場免疫細胞は、NK細胞です。 NK細胞のNKはNAKAYAMAの略では有りませぬ。では無くて、Natural Killer 細胞の頭文字です。先ほどのBリンパ球が「正しい人相書き」の悪人に対してのみ攻撃を仕掛けるのに対して、NK細胞クンは、正しかろうが正しくなかろうが、「他人」に対して攻撃を仕掛けます。その意味で、Natural と言う名前が付けられています。
この絵は、NK細胞がガン細胞群を攻撃しているところをマンガにしたものです。
NK細胞は自分とは異なる者をお構いなしに攻撃する傾向が有りますので、元々は身内であったガン細胞も、その後に身内である為の「証明書」を失いますと、このようにNK細胞の攻撃を受けてしまいます。この絵では、ガン細胞群に対してNK細胞が「パーフォリン」という物質を出してガン細胞に穴を開け、その後に「グランザイム」という物質をガン細胞内に注入してガン細胞を攻撃する様を描いています。グランザイム攻撃を受けたガン細胞は、「アポトーシス」と呼ばれる「自死」行動によって自らの命を絶ってしまいます。その結果、元の出自たる身の回りの人々にご迷惑を掛けずに、自らの存在を消し去るのでございます、、、。
次に、好中球(こうちゅうきゅう)や好塩基球(こうえんききゅう)、好酸球(こうさんきゅう)のお話を致します。これら「三兄弟」は、マクロファージやリンパ球、NK細胞が出動する前に真っ先に外敵に向かって突進する連中です。好中球は「膿み」の元で、細菌が侵入して来たときに真っ先に爆弾を抱いて立ち向かい、特攻隊の役割を果たします。外敵を爆弾でやっつけるのと同時に、自らも爆死してしまいます。その名残が、「膿み」という訳です。好塩基球は、鼻粘膜などに定着して「肥満細胞」となり、花粉などに反応して「ヒスタミン」などの化学物質を放出する結果、「花粉症」の原因ともなる細胞です。ならば悪い細胞かと言うととんでもなく、そもそも本来的には外敵である花粉に対して一生懸命働いてくれている細胞ですので、皆さんどうぞか、か、かわいがってやってくださ~い。ハ~~~ックショ~~~ン!!!
この絵は「好酸球」が寄生虫をやっつけているところの絵です。
好酸球は専ら寄生虫退治を行う細胞で、この絵の様に、細胞内に保持している物質を放出して、回虫やらその他、寄生虫退治に活躍します。
以上述べました好中球、好塩基球、好酸球の三兄弟は、先に述べましたように、外敵侵入に対して真っ先に駆けつけて仕事をしてくれる連中です。それ以外にも、血液の中には補体(ほたい)とか、涙や母乳中にはリゾチウムなど、細胞では無いけれど、体の中に進入した外敵を排除する為の仕組みが数多くあります。普段我々はこれらに気づかずに毎日過ごしておりますが、これらの「裏方」さんのヒト知れない日々の仕事があってこそ、我々は平和な毎日を過ごす事が出来るのであると言う事を今回のお話から知っていただければ、センセも大変嬉しく思います。人間の社会と一緒ですね!
それでは本日はこれまで!明日からは「腸管」のお話に続きます。
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