今月の書評-17

| | トラックバック(0)
最近、NHKの特番で、人類の進化史が放送されてます。
特定の仮説が強調されすぎるきらいはあるものの、各種最新のデータがちりばめられていて、ナカナカ面白いです。
本日午後9:00 の放送ではネアンデルタール人とクロマニヨン人との関係がテーマとなるようですが、ペーボ博士のデータに基づき、両者の間にある程度の混血が生じた可能性を放送するかと思います(先取!)。また、イギリスに最初に定住したホモサピエンスの肌の色は黒かった、などという点も、今後の放送で(あるいは今日?)述べられるかも知れません。

さて、再び縄文人です。

Y染色体のDNA(YDNAと略します)分析から、現代日本人男性の特殊性が指摘されます。それは、現代日本人男性のおよそ半数が縄文人の遺伝子タイプを引き継いでいる、という点です。
このような遺伝子タイプを、前回でも述べたように、ハプロタイプと呼びます。
単なる「タイプ」、あるいは「パターン」と呼び換えても全く問題ありません。

で、現代日本人男性を四群に分けます。一つは本州の男性群、二つは北海道のアイヌ民族の男性群、三つめは沖縄本島~奄美群島の男性群、四つ目は、宮古島~八重山諸島の男性群です。

以下、YDNAのハプロタイプを述べていきますが、A だのB だのC だの、さらに加えてA2 だのB3 だのC4 だのごちゃごちゃします。加えてこの後、ミトコンドリア遺伝子分析に基づいたハプロタイプのお話もしますが、これも同じくA2 だのB3 だのC4 だの、YDNAと同じくアルファベットと数字との組み合わせでタイプ分けしていきますので、読んでる皆様は相当に混乱するかと思います。
申し訳ないです。
でも、これを分かりやすく勝手に改変するのもどうかと思いますので、ごちゃごちゃして本当に申し訳ないのですけど、そのまま使っていきます。
覚悟のほどを!

このA だのB だのC だのというのは、アフリカを出発したご先祖たちがそもそも持っていた遺伝子タイプ(仮にA とします)から、時間が経つにつれてB のタイプを持つものが現れた、と考えてくれればOK です。A1 とA2 の違いは、より大きな括り(くくり)でみれば両者ともA タイプに属するが、細かくみると少し異なる、というカンジでOK です。

で、現代の本州の日本人男性群が持つYDNAのハプロタイプは、東北~北陸~関東で40%を占めるD2 タイプが優勢です。D2 は、関西では20%です。
アイヌ男性ではこの割合がさらに高く、90% 近くに達します。
さらに沖縄本島では40% であるのに対し、先島諸島では4%と極端に少なくなっています。このD2 タイプは朝鮮半島~中国大陸にはほとんど見られません(チベットを除く)。このことから、D2 タイプは縄文人(あるいは縄文前の旧石器時代人)に由来するタイプであることが確実です。

現代日本人に多かれ少なかれ縄文人の形質が伝わっていることは日常的にもしばしば目に付くことも多いわけで、また東日本と関西との間の様々な違いを普段から感じている我々としてはそんなに驚くことではないようにも思われますが、遺伝子レベルで見ると実に(東日本の)4 割もの男性が受け継いでいるという事実を改めて示されると、確かにビックリします!
また、沖縄本島の住民と本州東日本の住民との間で同じく4 割というのも意外ですし、さらに沖縄本島と先島諸島との間で大きな違いがあるのも興味深い点です。これに関しては、先々議論したいと思います。

さて、縄文を引き継ぐD2 のお次は、O2b タイプです。
O2b は、アイヌで0%、本土で35%くらい、沖縄本島が30%くらい、八重山では67%も占めます。朝鮮半島では51% を占めることから、O2bタイプは弥生由来であると考えられています。

お次はC3 タイプ。
C3はユーラシア大陸東部に広く分布し、特にシベリアに多いタイプです。アムール川流域の狩猟採集民がC3の祖とする研究もあり、いわゆる典型的な「モンゴロイド」の祖であるか?とも考えられています。
アイヌで12.5%を占めますが、本土ではわずか。一方、九州に比較的多い(8%)のに対し、南方の沖縄では0%。朝鮮では12%。
アイヌと九州で多いことから、細石刃文化を伝えた人たちが持っていた遺伝子タイプではなかろうか?と考えられていますが、個人的には違う!と考えています(今月の書評-10 を参照)。

最後にO3 タイプ。
いわゆる「漢族」に優勢なタイプです。
華北の漢族で66%、朝鮮33%、満州38%、モンゴル23%。華南の漢族で33%、台湾漢族60%、ミャオ族60~70%、ベトナム41%、マレーシア31%。
日本では、アイヌ0%、本土10~20%、九州26%、沖縄本島16%。
恐らく、歴史時代になってからの中国の戦争(春秋戦国とか、あるいはその後)の時代に広く拡散し、流れ流れて日本列島にも達したと思われる人々です。

その他少数派のタイプがいくつかあり、いずれも日本人の特質を形作るのに貢献していますが、あまり細かく述べても混乱するばかりなので、大体この4 種のタイプを参考にして考えていけば十分だと思います。

では、一旦ここまで!




トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 今月の書評-17

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.kigen-technosakaki.jp/old/mt/mt-tb.cgi/187

この記事について

このページは、喜源テクノさかき研究室が2018年5月13日 09:59に書いた記事です。

ひとつ前の記事は「坂城散歩道-21」です。

次の記事は「今月の書評-18」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。