お焦げとガンについて-8

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そう言う訳で、動物実験ではdecisive = 決定的 な結果は得られません。もちろん、ヒトにヘテロサイクリックアミン(HCA) を投与して調べる訳にも行きません。そこで、疫学的なアプローチからこの問題を俯瞰(ふかん)してみたいと思います。テーマは、「食肉~HCA~大腸ガン」です。

世界の食肉消費量と大腸ガンの罹患率

初めの図は、横軸に肉の消費量、縦軸に大腸ガン罹患率を表して、国別の相関を調べた有名なグラフです。但し、数十年前のものですので(たぶん、1970年代だったと記憶)、現在は色々変化している所も多いです。でも、基本的趨勢は現在でも似たようなものです。

Cancer_and_diet_from_NIH.jpg
この時代は日本人の大腸ガン罹患率はずいぶんと低いものでした。同時に、食肉消費量も低かった事が見て取れると思います。

最新の世界の大腸ガン罹患率マップを見てみます(2012年)。女性のみを俯瞰します。女性のみを見る理由は、女性の方がタバコやお酒の消費量が少ないために、より鋭敏に食肉と大腸ガンの関係が見て取れるためです。


大腸ガンマップ 女性.jpg
ちょっと見づらいかも知れませんが、青色が濃いほど罹患率が高い事を表しています。北米~北欧~西欧~南欧~オセアニア~日本と韓国~南米ウルグアイなどが色が濃い事が分かります。他には、シンガポール、イスラエルなどが色の濃い国です。ザッと見て、一人当たりのGDP が高い国々、いわゆる先進諸国に多い事が分かります。

一人当たりのGDP が高くなると、日々の食肉量が顕著に増えます。人間の自然な趨勢かと思います。と同時に、大腸ガンも増えてきます。従いまして、これを持って「食肉が大腸ガンの原因だ!」と単純に決定したくもなりますが、一人当たりのGDP が増えてくる=国も豊かになってくる、と、それ以外にも様々な要因が同時に介入して来ますので、そうは問屋が卸さない、と言うカンジになってきます。
詳しくは後ほど議論しますが、そう言うわけで、ここでは先進諸国に限定して食肉と大腸ガンの関係について考えて行きたいと思います。

下の図は、上のデータから、大腸ガンの罹患率上位の国々20カ国=先進諸国、の女性の大腸ガン罹患率データを抜粋し、高いものから順番に並べた図です。これに加えて、先進国とは言えないけれど、特徴的なパターンを示す2 カ国、モンゴルとエジプト、を加えたものです。
モンゴルは典型的な遊牧民の国で、食事内容も、食肉と乳製品が多い国です。
エジプトはイスラム教徒が多い中近東の中核国家で、食肉量や飲酒量は少ない一方、肥満人口の割合が高い国です。
両者共に、大腸ガンの割合は、先進諸国と比べ、顕著に低い事が分かります。

この先は特に、日本と韓国、ウルグアイ、フィンランド、モンゴルに注目してください。

2012年 国別大腸ガン罹患率(10万人中 女)IARC.jpg
次に、世界の国別食肉消費量の図を示します。データは2007 年のものです。但し、元データのうち、ウルグアイの数値が明らかに間違っておりましたので、個人的に訂正したものを用いています。

total meat consumption.jpg
この「食肉」の内訳は、牛肉+豚肉+羊肉+鶏肉+その他肉です。また、示されている国々は、先の大腸ガン罹患率マップ上位の国々+モンゴルと言う内訳となってます。
次にそれぞれの肉の消費量を比較してみます。
常識的なセンの国々が並んでいます。多くの場合、韓国は日本よりも消費量が多いです。

国別牛肉消費量.jpg
牛肉に限った場合、ウルグアイが一躍トップに躍り出ました。やはり韓国は日本より多く消費します。

国別豚肉消費量.jpg
豚肉の場合は欧州勢が不動の地位。韓国は豚肉も良く食べる様です。

国別赤身肉消費量.jpg
牛肉と豚肉を足した結果です。いわゆる「赤身肉」を意味するグラフです。

国別鶏肉消費量.jpg
これは鶏肉の消費量の比較です。牛肉や豚肉との大きな違いが日本と韓国で見られます。日本人は焼き鳥が大好きな様です。

国別羊肉消費量.jpg
これは羊肉の消費量の比較です。モンゴルが一躍トップに躍り出ました。ニュージーランドやオーストラリアはここでも上位です。


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このページは、喜源テクノさかき研究室が2014年4月22日 09:18に書いた記事です。

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