お焦げとガンについて-4

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「お焦げを食べてはいけない」の意味

いよいよここから本論に入ります。
まず、「お焦げを食べてはいけない!」と言う言葉の意味を、多くの人が字句通りにとらえてしまっているのではないのか?と言う疑問を挙げます。

普通お焦げと言ったら、昔、お釜でご飯を炊いていた頃、お釜の底に出来てきた、あの美味しい部分を思い浮かべますよね?あれでしたらいくらでも食べてください。ガンになんか成りませんから。と言うか、現代のご家庭の殆どは電子炊飯器でご飯を炊くと思いますので(センセなんぞはパックのご飯をパックパック食べてます)、食べたいと思ってもナカナカお焦げを食べられないのが現状かと思います。

ここで言うお焦げと言うのは、肉や魚のお焦げのことです。それも「お焦げ」そのものと言うよりも寧ろ、「焦げ目がつく程の高熱で調理した肉や魚の長期的な過剰摂取は発ガンに繋がる可能性が高いので、注意が必要です!」と言う事を言っているのです!!!

これは昔、日本の国立癌研のグループが、エームズテスト(Ames test) と呼ばれる実験系を用いて食品や化学薬品の変異原性(細胞遺伝子の複製ミスを誘発する性質)を調べた結果、肉や魚の焦げの部分に強力な変異原性を有する物質を見つけた事から、一躍世界的な注目を浴びるようになりました。

エームズテストと言うのはネズミチフス菌(Salmonella typhimurium) の遺伝子を改変し、ある種のアミノ酸(ヒスチジン)合成能を失わせた菌株を用いて行う実験系で、この系を用いて現在でも多くの実験が行われています。以下に簡単にメカニズムを説明致します。


遺伝子を改変したネズミチフス菌の培養液に変異原物質を加え、短時間培養します。
すると、変異原物質は菌に取り込まれた後、菌のDNAに変化をもたらします。
その結果、菌は変異を起こし、色々な形質的変化が生じます。
そのうちの一つに、ヒスチジン合成能力を取り戻す、と言う変化も生じます。
この様なネズミチフス菌を、ヒスチジンが殆ど含まれていない(わずかには含まれている)寒天培地に
接種します。
すると、ヒスチジン合成能力を取り戻したネズミチフス菌は、寒天培地上に集落を形成します。
そうでない菌は、集落を形成しません。
集落の数は変異原物質の変異原性の程度に比例しますので、これを数え、
当該物質の変異原性の指標とします。


先の「ガン概論:その3」で、「ある種の化学物質には、直接的に変異物質として働くものと、代謝を受けて変異物質に変わるもの」の二種類があると書きましたが、体内で代謝を受けて変異原物質に変わる化合物をエームズテストで試験する場合は、化合物に代謝酵素を反応させて変異原物質に変化させる必要があります。
肉や魚の焦げの部分に含まれる物質は、体内で代謝を受けて始めて変異原物質に変化するタイプの物質です。この「代謝酵素によって代謝を受けた結果、発ガン性を有する様になる」と言う点は非常に重要な点で、ネズミを用いた実験結果を単純にヒトに当てはめてはいけない事を強く示唆する点です。

次回は、この物質についてお話致します。それでは皆様、Buenas Noches! 

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2014年4月15日 21:27に書いた記事です。

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