ちょっと研究内容 その六

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続きです。

液体麹の特許に引き続き、乳酸菌培養液が高血圧低下に効果あり、と言う内容で2008年に出願した特許申請もまた、今年8月に特許確定となりました。おめでとうござりまする!!!!!!

特許証-2-2.jpg特許証:第4810483号

これまでも牛乳を原料として得られた乳酸菌の培養液中に抗高血圧機能が見いだされた例は報告されており、既に大きなメーカーから商品として発売されておりますが、テクノさかき研究室で発見した乳酸菌は、糠味噌の糠床から得られた、いわゆる「植物系乳酸菌」に属するもので、正式名称をリューコノストック・メゼンテロイデスと言うものです。舌をかみそうな名前ですね!

この菌は、ぬか床やぬか味噌漬け、その他の漬け物などから分離した百数十種類に上る乳酸菌の中からいくつかの試験を行って選ばれたものです。

どのような試験を行ったのか、ここで簡単にお知らせ致しましょう。

 

ACE試験-2.jpg

 

右の図は、百数十種類の乳酸菌の培養液の上澄みを取り、これの抗ACE活性を調べた結果です。

ACEとは、Angiotensin Converting Enzyme の略でして、話が難しくなるので簡単に申し上げますと、血圧を上昇させる酵素と考えてください。

右の図の赤い玉はリューコノストック・メゼンテロイデスとして同定された菌群から得られた大豆麹乳酸菌発酵液の上澄み液を表し、黄色のものはラクトバシラス・ファーメンタムから得られたもの、青いのはラクトコッカス・ラクチスと言う乳酸菌群から得られたものを表しています。

これらがどのぐらいACE酵素の働きを抑えるか調べたところ、図の様に、赤いものは全て良く押さえた一方で、黄色や青いものは全く押さえませんでした。従いまして、リューコノストック・メゼンテロイデスの培養液は、ACE酵素の働きを抑えて血圧上昇をブロックする可能性がある訳です。

 

図-2:ラットの血圧測定.jpg次に行った事は、それでは本当にリューコノストック・メゼンテロイデスの培養液は血圧を下げることが出来るのか、調べました。

方法は、SHRラットと言う、年を取ると自然に血圧が上昇して行くタイプのラットにこれらの培養液上澄みを飲ませ、その後にラットの血圧を測定すると言う方法で調べました。左の図がその結果です。ごらんの通り、リューコノストック・メゼンテロイデスを飲ませたラットの血圧は、統計学的にも有意な差をもって、対照(例えば蒸留水を飲ませた群;左端)に比べて低下しました。ACE活性の試験では、ラクトバシラス・ファーメンタムはACE酵素活性を阻害しませんでしたので、ここでも同様に血圧上昇を抑制しませんでした。ところが面白いことに、ACE酵素阻害試験では全く効果を示さなかったラクトコッカス・ラクチスの培養液上澄みは、リューコノストック・メゼンテロイデスと同じように、ラットの血圧上昇を阻止しました。これら乳酸菌の血圧上昇抑制の程度は、高血圧のお薬の一つであるカプトプリルよりもむしろ強いものでした。濃度が異なっているので単純比較はいけませんけど、、、。

メカニズムとしては、リューコノストック・メゼンテロイデスの場合は培養液中にジペプチド~トリペプチドと言われる物質が増加したと考えられ、これらがACE酵素に対して拮抗的に働いたと想定出来ます。一方でラクトコッカス・ラクチスの場合は他のメカニズムが考えられますが、第一候補としまして、ラクトコッカス・ラクチスがGABA(ガンマーアミノ酪酸)を産生し、これが抗高血圧に働いたのでは無かろうか、と考えています。と言うのも、ラクトコッカス・ラクチスの仲間にはGABAを産生するものが多いですし、GABAには抗高血圧機能が報告されているからです。

嬉しいことに、大豆麹乳酸菌発酵液で使われている乳酸菌の仲間には、このGABAを産生するラクトコッカス・ラクチスの仲間も含まれています。

今回のブログはなかなか内容が高度でしたね!たまには小難しいお話をしておきませんと、センセの股間に、ではなくって、沽券に拘わりますので、、、。・・・・やっぱり最後は落としてしまいました・・・・すみませぬ・・・・。

大豆麹乳酸菌発酵液に関してはもう一つ特許申請中ですので、これも確定したらご報告致しますね。乞うご期待であります。

それでは皆様、ごきげんよう!

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2011年10月10日 14:00に書いた記事です。

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