今月のウクライナ-129

さて、イスラム教の創始者であるマホメットは、アラブ人です。もちろん。
本人は「預言者」と自称します。
イエス・キリストは自分が新しい宗教を唱えている、
という自覚は無かったと思いますが、
マホメット氏ははっきりと自覚しておりました。
そのアラブ人が住むところ=アラビアは
イスラム教が普及する以前はどうだったのか?
そこから見ていきます。

現在ではアラブ人=アラブ民族はアラビア半島以外にも多く住んでます。
特に、イスラム教の展開に伴って北アフリカに多く分布して居りますが、
イスラム以前はほぼほぼアラビア半島に限定して住んでおりました。

誰でも知っているように、アラビア半島と言えば砂漠です。
住める所といえば、オアシスとか沿岸部の一部くらい。
その砂漠の北方には
チグリス川とユーフラテス川に挟まれた肥沃なメソポタミアがあり、
また、その上流部から地中海沿岸にかけては
シリアと呼ばれる、いわゆる「肥沃な三角地帯」があります。
古代文明揺籃の地です。
アラブ人は、ラクダと共に、これらの地域の南の辺縁に住んでおりました。
普段はラクダの遊牧を行って生活していたようですが、
時々はこれらの肥沃な地帯に侵入し、略奪などに勤しんでおりました。
遊牧民のいつものパターンです。

で、アラビア半島の中でも南西部、
現在果てしなく応仁の乱を続けているイエメン地方ですが、
ここはアラビア半島の中でも比較的降雨量が多く、
「ワジ」を利用してダムを作って農業を行うなどして
アラビアの中でもいち早く古代文明が栄えた場所でした。
ワジとは、「雨が降るときだけ水が流れる川」のことです。
雨が降らなくなれば水もワジかとなり、枯れてしまいます。

このイエメン地方に元々住んでいたのは南アラブ人と呼ばれる連中でしたが、
紀元前 1000 年代、北方のアラブ人が南下してこの地に移住し、
南アラビアに初の王国を打ち立てました。
これが「今月のウクライナ-119」で登場したシバ王国です。
シバともサバともシェバとも書かれますし、
「これらは各々別の国だ!」とのご意見もあるようですが、
ここでは同じであるとし、
また、前回お話したように、我々に馴染みのある言葉、シバで統一します。

因みにセンセは、魚の中ではサバが一番好きです。
煮てよし焼いてよし〆てよしの、三拍子揃った魚です。
焼きサバずしなんか最高過ぎて普段食べるのは恐れ多い・・・。
だもんで、以前、還暦の時に食べたので、
次は古希になったら食べようと考えてます。
もう少しです!がんばろっと!

で、シバ王国を打ち立てた北方からのアラブ系の人々ですが、
彼らの南下の引き金となったのが
今月のウクライナ-34」でお話した
海の民」のパレスチナへの侵入ではないのか?
と考えられています。
シバの連中は、イエメンだけでなく、紅海を渡ってアフリカ大陸にも進出し、
エリトリアからエチオピアにかけて植民した可能性も指摘され、
また、今後に簡単にお話する予定ですが、
時代が下ってエチオピアに興るアクスムと呼ばれる王国の建国に関与した、
とも考えられています。

シバ王国.jpgイエメン辺りからエチオピア~ソマリアにかけては
アラブ系とアフリカ系の人々が色々な程度で混じた人々が多い場所です。
すぐ西方にはアフリカ系のクシュ~メロエ王国などがあり、
ここら辺の歴史もつつきだすと面白いです。