と、昨日の筆の先が乾かぬ間に、
いきなり「トランプ・ドクトリン」に基づく行動が実行された!!!
ベネズエラ空襲を行ったかと思う間にサッサとマデューロ大統領夫妻を拘束し、
アメリカに連行してしまった!!!
先のイラン空爆も完全に意表を突くものでしたが、
今回のカラカス空襲~大統領拘束もまた、
あっけにとられるものではあります。
確かにトランプ大統領、事の是非は置いといて、
その実行力には一点の曇りもない!
ま、今回の軍事行動の秘匿性、精密性、迅速性に関しては、
近年の軍事部門の驚異的な技術進歩によるものであることに
間違いはありませぬが、
行動そのものは、
昨日述べたアメリカ国家安全保障戦略そのままに沿ったものだ。
すなわち、
あのドクトリンは単なるお題目ではない、
すべてが、今後、実行性が極めて高い「行程表」であると考えるべきであろう!
で、その法的根拠云々ですが、実のところ、アメリカはこれまでも、
自国の裏庭である「西半球」においては、
似たような行動を繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し行ってきています。
19 世紀の西部劇時代やその後の帝国主義時代はさておき、
第二次大戦後においても、
レーガン時代の「グレナダ侵攻」や
親ソ・ニカラグア政権への対抗軍事組織である「コントラ」の設立、
オヤジ・ブッシュ時代の「パナマ侵攻」など、
いずれも国際法上どうなの?というものです。
で、レーガン時代は未だ東西冷戦のさなかであり、
ある意味、国際的、少なくとも「自由主義世界」においては、
軍事進行に対して一定の「正当性」は認められたとは思いますが、
今回のベネズエラ政権に関しては、ソ連崩壊後でもあり、
イデオロギー的要因は大きいとは言えないと思います。
ただし、前政権であるチャペス時代におけるベネズエラは
明白な反米~社会主義政権であり、
チャペス大統領は自らを共産主義者であると唱えておりましたし、
後継者であるマデューロ氏はチャペス政権を踏襲して
明らかな反米かつ中国~ロシアに依存した政権ではあります。
左右の政権が時代的にも地域的にも複雑に絡みあう中南米諸国の歴史に関しては
センセもよくよくお勉強してからお話ししたいと思いますが、
とりあえず現状をザザッとみておきますと、
最も根底のところには、
昔の宗主国であるスペインやポルトガルなどのラテン系の伝統である
「マッチョイムズ」の存在があるように思われます。
すなわち、原住民である「インディオ」を「力」でねじ伏せ、
大地主制度の下、「ファゼンダ」とか「エスタンシア」と呼ばれるような
大規模プランテーションにおいて彼らを「半農奴」的にこき使ってきた歴史が
最根底に横たわっているように思われます。
「今月のお悔やみ」で紹介したハリー・ベラフォンテの「バナナボート」などは
当時のプランテーション労働者の過酷な労働を歌ったものですが、
このような「半農奴」的な労働者は、一般的に、
原住民であるインディオ、
アフリカから連れてこられた黒人奴隷、
そして宗主国の白人を含むさまざまに混血した労働者によって
構成されておりました。
19 世紀初頭、宗主国からの独立運動~その後の内乱期を経て
現在見られるような多くの国家が中南米に生まれましたが、
大地主 vs 貧困労働者という経済構造は相変わらずのものでした。
しかしながら 19 世紀後半には「メキシコ革命」が起こり、
このような構図に反旗を翻す社会主義的勢力が生まれてきました。
20 世紀に入るとこのような構図の中にアメリカ巨大資本が入り込み、
中南米はアメリカの裏庭と化していきます。
東西冷戦期ともなると、
これにイデオロギーが絡んだ米ソ間の覇権争いが加わり、
キューバに共産主義国家であるカストロ政権が生まれ、
その後はニカラグアにサンディニスタ政権が生まれるなど、
「裏庭」が騒然としてきた結果、
当時のケネディ政権やレーガン政権は
軍事的な対応を迫られる形となりました。
基本、大規模農園を所有する伝統的地主層、
ならびにアメリカ資本と手を組んだ資本家層に代表される富裕層と、
貧困にあえぐ農民と労働者の対立軸が常に緊張を孕んで
この地域の政治の不安定化の原因となっているように思えますが、
目の前にキューバというソ連を後ろ盾とした共産主義国家が出てきた結果、
例えばチェ・ゲバラに代表されるような「革命家」が大陸を股にかけて暗躍し、
その結果、各所に「左翼ゲリラ」が林立して、
多くの国々がさらに不安定化していった、という経緯でしょうか?
ソ連崩壊後はこのようなイデオロギー的不安定さはある程度は落ち着き、
安定化し始めたように思われた中南米諸国ですが、
折に触れて米国資本主義に対する反米意識の高まりが生じ、
この間隙をついて、
新たに強国として台頭してきた中国が勢力拡大を図るようになった結果、
中国よりの左派と米国よりの右派が目まぐるしく政権争いを繰り広げる
今日見られるような状態となってきた、
と考えて大体よろしかろうと思います。
ベネズエラに関しても、
20 世紀初頭にはアメリカ資本が原油資源をほぼほぼ独占しておりましたが、
その後にはベネズエラ国家による国営石油会社も興り、
1970年代のオイルショックによる原油価格高騰によって
一時期は「サウジ・ベネズエラ」と呼ばれるほどに
石油利潤で潤う時期もありました。
しかしながら結果的に富裕層と貧困層との間に大きな格差が生まれ、
1989 年にはこのような状況に反対する国民の大規模なデモが発生しますが、
これに対して当時の政権が発砲した結果、多数の死者が出てしまい、
最終的には軍人であったチャペス氏がクーデターを起こして政権を握った、
という経緯があります。
共産主義的思想を信奉するチャペス氏はアメリカ資本を追い出し、
石油関連企業をすべて国有化した結果、
現在の状況に繋がる原型を作り上げました。
チャペス氏を引き継いだマデューロ氏はチャペス氏の思想に共感し、
彼の政策をそのまま受け次ぐこととなりますが、
両者の共産主義的思想に基づく各種政策は
貧困層には強く受け入れられた一方で、
近代資本主義に基づく現実的な政策を打ち出すことに失敗し、
政治は大混乱。
大量の難民が発生することになり、
マデューロに反対する野党党首が
ノーベル平和賞をもらうというまでになってしまったのが、
つい先日の出来事です。
仮にマデューロ氏がもっとまともな政治を行いさえすれば
恐らくはトランプといえども
このような形での介入を行う余地はなかったのでは?と思いますが、
そうは上手くいかなかったのは今更ながらに仕方のないことであります。
大体、中南米諸国というのはこういうカンジで右派左派の確執が見られ、
これに対してアメリカが介入する、
というパターンが非常にしばしば見られます。
実のところ、今回のトランプの介入は、米国による数ある介入の一つ、
とみるほうがよろしかろうとも思えます。
で、今後の展開ですが、
高市政権としては、
ともかくも当面は様子見としゃれ込むしか手の打ちようはありませぬ。
また、安定政権が確立するまでは米国が直接的に統治する
などとトランプは言っておりますが、
中露の出方に関しても興味深いものがあります。
少なくとも今回の軍事的成功に関しては
中露両国ともに大変に驚愕したことかと思いますが、
肝心のベネズエラ国民としても、
マデューロ政権崩壊を喜ぶ連中はそれこそ数多いでしょうが、
一方で政権を支えていた「岩盤層」も一定数いるわけで、
再び国内が混乱する可能性も否定できませぬ。
さらにはここにきていまさらではありますが、
トランプ政権が国際法なぞどこ吹く風の政策をホントに実行する
ことが明らかとなりましたので、
例えば現在進行形で進んでいるウクライナ紛争解決交渉においては
まさに国際法をガン無視して侵攻したロシアに対して
「道徳的~国際法的」な観点から抑止をかけることは原理的に不可能で、
これを彼に求めることは「ないものねだり」に等しい行為です。
従いまして、例の
「プラグマティスト」ではないが「現実的」な形で解決に臨む、
ということとなるのでしょうね、何とも申しようがありませぬが・・・
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