今月のウクライナ-172

さて、契丹についてお話する前に、
トルコ~モンゴル~ツングースに共通の YDNA のハプロ、C2 について
より詳しく突っ込んでいこうと考えましたが、
そうなりますと、
C2 に文化的に大きく影響を与えたと思われる N の話をする必要がありますし、
そうなりますと、
C2N の拡散により生じたシベリアの少数民族の話をしたくなりますし、
そうなりますと、
彼らに影響を及ぼした Q の話が必要となりますし、
そうなりますと、
アメリカ・インディアンに言及するのは必定、
ということとなりまして、
結局のところ、地球上の人類みな兄弟、という結論となりそうです。

で、N に関してはこのブログでも至る所で顔を出しているので
ここで詳しく彼らに言及することはありませんが、
Q に関しては「今月のウクライナ-100」でケット人について述べただけなので、
まずはこれをやっつけてしまいます。

基本的に、YDNA は分岐の古い順に A、B、C、D・・・と並んでますので
Q は比較的近い時代に分岐したハプロタイプということになります※。
※当初はアルファベット順にきちんと並んでいたのだと思いますが、
研究が進展するに従って古いのと新しいのと順番が変わったりして
現在では結構ごちゃごちゃになってます・・・。
O、P、Q、R という順番ですので、
QRP から分岐した、ということになります。
因みに R は、主として、いわゆる欧州の白人種を構成するハプロです。
これも以前の印欧語族の拡散の時にお話しました。

で、初めに簡単に QR の祖型である P について話しますが、
ウイキに載っている P の内容が少し可笑しいです。
というか、混乱します。
フィリピンのルソン島に住むネグリトの一種、アエタ族に
P* が高頻度で見られるとのことですが、
ウイキの K で調べると、
アエタで高頻度に見られるのは K2b であり、
アエタではその他にミトコンドリア DNA (mtDNA) の P が多く見られる、
と書いてあります。
YDNA P の祖型が K2b であり、これは、
ニューギニアに多く見られる MS の祖型でもあります。
つまり、YDNA の PMS と祖型を共有する、ということです。

従いまして、ウイキの K の項目が正しいとすれば、
アエタ族は P よりも古い系統であり、
ニューギニア高地人はネグリトから分岐した可能性が示唆されます。
その方が納得できます。

アエタ族の少女.jpgアエタ族の少女  ウイキより
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4267127による

一方で、ウイキの P の項目ではアエタは P* と書いてありますので、
P から QR が派生したとすると、
QR 共に例のスンダランド辺りが起源となり、
これを図示した YDNA マップもネットでありますが、
YDNA の K を調べると、
これは祖型の IJK から誕生したと書かれており、
K → P → QR の流れは
現在のイラン~アフガニスタン辺りで生じた可能性が指摘されてますので、
ウイキの P の項目は間違いなのか、あるいはたぶん
YDNA の分類はしょっちゅう変わるので、
未だ分類が未確定であったころのアエタの結果が P* として載っている、
あるいは mtDNA と混同してしまったか、
のいずれかであると思います。
P** は分類未確定を意味しますので、
前者が正しいかと思います。
で、これを混同したヒトがそのままマップを描いてしまった、
ということかと思いますが・・・。

一応、下に、個人的には比較的正しいと考えている YDNAマップを載せますので
ご覧になって下され。
但し、この図も C2 C3 となっているなど、2013 年に発表された図なので、
細部には何かと異論があるかと思いますが・・・。
個人的には、縄文人のハプロである D2 が中央アジア経由なので、
これに異議を申し立てたいです。

YDNA haplofroups.jpgウィキメディア・コモンズより
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:World_Map_of_Y-DNA_Haplogroups.png
細かくて見えないと思いますので、
是非、リンク先を開いて拡大して見て下され。

YDNA にせよ何にせよ、
新たな発見によってこれまでの風景が一変するのが人類学、
あるいは科学と言うべきか、
の宿命ですので、
知識を常に新たにする努力が重要であるのは間違いのないところですが、
同時に、
常に本質を見極めようとする意志を持たないと、
あれやこれや、
単に流行に振り回されるだけの人間となり終わり果てるのも明らかですので、
センセのようなおふざけたブログと言えども、
逐一書き足していくのはナカナカ難しい作業ではあるなあ、
とは感じています・・・。
楽しいけど WWW。