今月のウクライナ-134

いやいやいや驚きました。
プリタコ氏、暗殺されました。
まさに、「狡兎死して走狗烹らる」です。

今回の走狗は一度飼い主に吠えたわけですが・・・。

ネットでは、
「いつ暗殺されてもおかしくない」との意見が多数でしたが、
センセは、
「暗殺されずにもっと上手に利用されるのでは?」
と考えてました。
でも、やはり暗殺されてしまった・・・。

件のスロビキン上級大将もプリタコ氏と近い関係により
航空宇宙軍総司令から解任されたことから、
彼の将来もどうなることやら・・・不透明です。

で、プリタコに面と向かって罵倒されていた
ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長はそのまま安泰の様子。

結局プーチンは、
「能無しではあっても 100% 忠実な番犬」の方を
「働き者だが、一度飼い主に吠え付いた有能な狩猟犬」よりも重要視した、
ということになります。
ここに典型的な「独裁の弱点」が現出した、ということです。
少なくとも歴史的観点から見れば、
ほぼほぼ必然的に陥る「独裁の陥穽」にプーチン王朝も陥った、
ということでしょう。

とっくに陥ってはいるのですが・・・。

本当に 21 世紀に起きていることなのか?
と誰しもが思われたかと思います。
中世史を目の当たりにしているかのようです。
方法が、「毒殺か、搭乗機の爆破か」の違いだけです。

折しもプーチン氏、
現在南アフリカで行われている BRICS の会合に、
逮捕を避けるために、
ネットを介して参加しているはずです。
BRICS のみならず、
お友達のいないロシアは、
中国同様に、
アフリカ諸国への働きかけに大いに力を注いでいます。
そのアフリカ、特にサヘル諸国などの紛争の多い国々において、
プリゴジン率いるワグネル部隊の存在感には非常に大きいものがあります。
ワグネルの強みは、
これらの国々への傭兵の提供との引き換えとしてもたらされる
鉱物資源などの「利権」から得られる収入にあります。
このように、ロシアの世界戦略ベクトルの最先端を担っていたはずの
ワグネルのトップをこのような形で粛清したとすれば、
このベクトルはどちらの方向に向かうのか、
不透明感いや増します。

そもそも論として、
プリゴジンが率いていたのは「傭兵」です。正規兵ではありません。
一般論として、兵士は、命と引き換えに何かに対して戦うわけです。
正規兵の場合は自らが所属する国家、あるいは共同体というべきか、
への忠誠心に基づいて戦うわけですが、傭兵の場合は、まずは「お金」、
次に自分たちの「ボス」への忠誠心が重要となります。
連中は、基本的には「社会からのはぐれ者」です。
そのはぐれ者のココロをくみ取って戦場に向かわせるのがボスの使命です。

ヤクザの大将と同じです。
しばしば方法は相当に手荒くはなりますが・・・。

従って、傭兵はプリゴジンに対して忠実なのであって
ロシア、あるいはプーチンに対して忠実なのではありません。

ステンカ・ラージンのようなモンです。

現在、モスクワのみならず、ロシア国内の軍需~民需に対して、
ドローンによる攻撃が相次いでいます。
その多くが、ロシア国内から発射されているようです。
すなわち、対プーチン派がロシア国内に少なからず居る、ということです。
この対プーチン派には親西側の連中も居りますし、極右的な連中も居ます。
どちらであるにせよ、対プーチンで一致しています。
ステンカ・ラージンの残党の、少なくとも一部は、
これらの対プーチン派に移行する可能性もゼロではありません。
また、プリゴジン、血気盛んなロシアの若い衆の間では人気がありました。
結局プーチンは、これらのエネルギーを有効に利用することができず、
ひたすら「恐怖」によって支配するという
中世史的な独裁統治法のみに頼って今後を戦っていくという選択肢を選んだ、
ということでしょうか。

混沌、いや増します・・・。