今月のウクライナ-75

アメリカの中間選挙が終わりました。
現職大統領の任期途中の選挙で下院が敗北するのはいつものことらしく、
また、「ま、そういうもんだろうな」と分かりやすいです。
しかしながら、バイデン氏の老化現象も相まって
下院での共和党の圧勝が当初は予想されていたわけですが、
民主党が意外にも善戦し、アメリカ国民を驚かしています。
上院では、現時、五分五分です。

興味深い点は、共和党内の反トランプ派に勢いが見られる点です。

前回の大統領選でトランプ氏が勝利した時点では、
共和党内の保守本流の重鎮連は、当初、
本流から外れるトランプ氏に全面的にシャッポを脱いだわけですが、
その後の政権運営において次から次へと湧き出てくる不祥事に対して
ボルトンもペンスも愛想をつかし、
保守の重鎮連は次から次へと袂を分かつ始末。
唯一のお友達はシンゾー・アベくらい。
安倍ちゃん、
お友達から頼まれたら断れない八方美人の性格だったもんで、
そのせいで色々つまらない問題に巻き込まれてしまったが、
別の角度から見れば、
トランプからもプーチンからも好かれるという、
稀有な人柄ではありました・・・。合掌・・・。

で、トランプ、先の大統領選挙結果を「フェイクだ!」と断定し、
議会占拠事件を引き起こすなど、
その後の振舞は皆さまもよくよくご存じのところです。

で、よせばよいのにまたぞろ院政でも敷くつもりか、
自身の息のかかった連中を候補として送り込んだところが
次から次へと落選の嵐!
最終的には民主党の力が一定程度削がれるのは明らかですが、
一定程度躍進した共和党においても
トランプの影響力が当初考えていたよりも小さくなる見通しとなったのは、
少なくともウクライナにとって、朗報です。
大きく見れば、世界中の民主国家にとって大朗報なのです!

しばしば誤解しているヒトが居ますが、
トランプ=保守のコアじゃないです。
政治家でもないですし、実業家とも言い難いです。
実業家ではなく虚業家です。
オヤジが大金持ちだったので、成り上がりですらないです。
単なる「エゴに凝り固まった見栄っ張りのドラ息子」というのが正解です。
古典の一冊も読んだことがない、あるいは読めないオトコです。

要するに、教養がないのです。
教養が無いので、逆に「庶民的」と見られ、一定の人気があるのです。

彼が考えているのは自分だけ。
お気に入りの(金をばらまいて近くに居るだけの)連中に取り囲まれ、
一生ちやほやされて過ごせれば幸せなオトコなのです。
彼のスローガン、「アメリカ・ファースト」は、
「自分が良ければそれで良い」を国レベルに拡張しただけです。
要するに、「アメリカが良ければそれで良い」ということです。
実際に、アメリカくらいの大国ともなれば、基本、
自国だけで経済がまわります。
その気になれば、以前の「モンロー主義」に立ち返ることも可能です。
モンロー主義に関しては、ググって下され!※
※マリリン・モンロー主義ではありませぬ・・・。

第二次世界大戦前夜、戦争に乗り気でなかったアメリカ国民を説得すべく、
北西大西洋上において、チャーチルがルーズベルトを説得した話は有名です。
おかげでハルノートを日本に突きつけ、
まんまと真珠湾攻撃に導くことができました。
一気に沸騰した米国世論ですが、その後の展開はご存知のところです。

で、二つの大戦を経験した米国と世界ですが、これではいけないと考え、
国際連合の枠組みを作り、これを遵守すべく、
あらゆる努力をしてきたわけですが、
如何せん共産主義~独裁主義国家と資本主義~民主主義国家とに二分され、
いまだに世界平和には程遠いのが、ウクライナを見るまでもなく、現状です。

で、このような大戦を経験した米国ですが、
「モンロー主義ではいけない。引きこもりでは世界平和を保てない!」
ことに気づき、
積極的に対外的な問題に対応するようになりました。
で、1989 年のベルリンの壁崩壊後は、アメリカ一強、いわゆる
「パックス・アメリカーナ」の時代を迎えることとなります。

以上、簡単に見てきましたが、
戦後生まれの我々は戦後のアメリカしか見ていないので
戦後のアメリカの拡張主義こそがアメリカの本質と考えがちですが、違います。
トランプに代表されるように、
一朝事あらば、米国は引きこもり政策に陥る可能性があるのです!
米国民からすれば「自分たちの国の運営を自分たちで決めるのがなぜ悪い!」
との反論が出るのは自然ですが、
これまで米国が振ってきた民主主義の旗のもとに結集してきた国家としては
大きくはしごを外されることになります。
「欧州の安全保障は自分たちでやってくれ!」とか、
「極東はアリューシャン~ハワイ~グアム線まで後退する」とか、
これらは、「全く持って非現実的な話である!」
というわけでは決してありません!
今後中国の力がさらに増加した場合、米国との裏取引の可能性も
ゼロではありません。

教養ある保守本流の共和党重鎮連はこういう点をよくよく承知しているので、
引きこもり政策はとらないと思います。
まともな本の一冊も読まず、
壇上で踊って騒げば喜ぶ人たちを相手にしているトランプ氏ですが、
「アメリカ人も、取り合えずはちゃんと分かっているんだな・・・。」と
取り合えずは安心したセンセでした。