今月のウクライナ-72

およそ紀元後 4 世紀半ばころに
アラン人の故地であるカスピ海東北岸からヴォルガ川に至ったフンですが、
これを渡って、
まずはヴォルガ川西岸のアラン人に対して暴虐無人の振舞に及びます。
さらに西進し、西暦 370 年ころにはドニエプル川に至り、
その地の東ゴートを草木も生えぬまでに荒らしまわります。

実際、考古学的にも、当時の町の遺跡は徹底的に焼き尽くされており、
生き残った者はフンと共に戦うか、あるいはむごたらしい死か、
の二択となったようです。

で、さらに西進してドニエストル川を渡って西ゴートを駆逐すると、
西ゴートの連中は大挙してドナウ川を渡ってローマ帝国まで逃げ、
時のローマ皇帝に庇護を求めます。
ここに、世界史の教科書でもおなじみの、
ゲルマン民族の大移動の幕が切って落とされることとなりました。

当時のウクライナ周辺ですが、ゴートと共にスラブやサルマタイも混在し、
比較的穏やかな生活をしていたようですが、
フンの侵入によって一気に情勢が一変!
ゴート族だけでなく、ヴァンダル族、フランク族、チュートン族、アングロ族、
その他その他その他その他・・・欧州一帯は蜂の巣をつついたような大騒ぎ!
皆さん、我も我もとローマ帝国に入ってくるもんだから、
ローマの皇帝困ってしまい、考えに考えた末に出した結論がこれだ!

「ゲルマンを雇ってフンに当たらせ、
フンを雇ってゲルマンに当たらせばいいんじゃね?
オレって、頭いい~~~~!」

で、実際、ローマ軍団にはゲルマンの隊長やらフン族の隊長やらが居たし、
あるいはたぶん、アランやらブルガールの傭兵なんかも居たはず。
「お金さえもらえればなんでもやりますよ」ということでした。

で、フン族は、フンだけでなく、途中で制圧したアランやらブルガールやら
ゴートやらの連中を、強制的にであれ自発的にであれ、仲間に加え、
欧州一帯を荒らしまわります。
このパターンは、後の時代のモンゴルと全く同じです。

で、西暦 433 年、
現在のハンガリーに当たるパンノニア平原を獲得したフンは、
ほどなくアッチラ王を頂き、隆盛を迎えることになります。
パンノニア平原は、基本、森林地帯であるカルパチア以西の欧州において
唯一と言ってよいくらいの遊牧可能な平原地帯、ということでしたので、
本来的な遊牧民であるフンとしては、ここを拠点として暴れ放題!
いつのまにやら遊牧なんぞすっかり忘れ
戦争と略奪と貢納金の徴収に勤しむこととなりました。

パンノニア.jpg広大なパンノニア平原  ウイキより


アッチラに率いられたフン族部隊は欧州全土をまたにかけ、
アッチラコッチラ転戦に継ぐ転戦を繰り広げ、
一時はアナトリアからシリア方面にまで進出しましたが、
どっかの王女をかっさらって結婚しようとしたアッチラ王、
結婚式の真っ最中に脳卒中で死んでしまいます(各種の説あり〼)。

アッチラ王.jpg16 世紀に作られたアッチラ王のレリーフ  ウイキより
後世に作られたせいか、アジア系には見えませんが、
東ローマ時代の見聞によれば、アッチラ王は、
「背は低いが筋肉質で、頭が大きく、顔色はくすんだ黄色。
両目とも斜視で、蓄えられた顎鬚には白髪が混じっている。
髭はほとんど無い。
低い鼻と浅黒い肌は、彼の出身を表しているように思える。」
とのことです。(以上、ウイキより引用)
斜視って、たぶん、吊り上がった目のことだと思います。
典型的なモンゴロイドの特徴です。


おかげさんで、ほどなくフンは弱体化し、
少なくとも歴史の表舞台からは退場することとなってしまいます。
その後、パンノニアの地は東ゴートによって占拠されることとなりました。

けれどもその後、フンにあこがれたのかナンなのか知りませんが、
「我こそはフンを引き継ぐモノなり!」
とばかりに大暴れする連中が中央アジアに現れるのですが、
これはまた後程。

で、アッチラの死後、ローマに雇われたゲルマンの一部族、
ヘルール族の長であったオドアケルという人物によって、
西ローマ帝国は引導を渡されてしまいます。
西暦 476 年のことでした。

日本では、たくさんの埴輪クンが作られていたころにあたります。

で、フン族の侵攻によって生じたゲルマンの大移動の図を下に載せます。
特にヴァンダル族の移動が凄いです。
439 年には地中海を渡って北アフリカに侵入し、カルタゴを占領。
ヴァンダル王国とやらを打ち立てます。
この王国は、ヴァンダル族だけでなく、侵攻途中でお友達となった
アラン人やサルマタイ人も加わって作った国とのことです。

みんな仲良く略奪に勤しんでいたのですね、
さすがヴァンダル、野蛮人の代表です!

ゲルマンの大移動.jpg黄色:アングロ・サクソン
橙:フランク族
濃い赤:ゴート族
紫:西ゴート族
ピンク:東ゴート族
緑:フン族
青:ヴァンダル族
赤:ゲール族

最後のゲール族はケルトです。  ウイキより