今月のウクライナ-21

スキタイが登場する前の古代世界をざざっとおさらいしときます。


人類の最初期文明と見なされるメソポタミア文明ですが、
シュメール人によって
紀元前 4000~3500 年頃に打ち立てられたと考えられています。
シュメール人の起源は不明で、
近傍のセム語系の人々とも異なる系統不明の民族です。
後述しますが、近年、
インダス文明を打ち立てた人々との関連が指摘されています。

既に農業は他所で発明されていましたが、彼らは
チグリス・ユーフラテス川下流域において大規模な灌漑農業を行い、
粘土板を用いた楔形(せっけい・くさびがた)文字と呼ばれる文字を発明し、
ここに人類初の都市国家を築き上げます。

シュメールの楔形文字.jpgシュメールの楔形文字 ウイキより


その後、上流域に住んでいたセム系のアッカド人の王、サルゴンにより、
紀元前 2334 年に、一旦、滅ぼされます。
アッカド・シュメールを包含する地域が、バビロニアです。
滅ぼされたシュメール国ですが、
彼らが発明した楔形文字はその後の他民族王朝にも営々として引き継がれ、
また、シュメール語も、長らく「雅語」的な扱いをされたようです。

ほぼほぼ同時期のナイル川流域においては
ナイルの恵みを受けて多数の小王国が林立していたようですが、
その後、上流域を治める上ナイルの王と、
デルタを中心とする領域を治める下ナイルの王に収斂します。
上ナイルの王が下ナイルを支配して「王の中の王」となり、
ここにエジプト第一王朝が成立します。
紀元前 3150 年頃です。
ここにお話するまでもなく、
ヒエログリフと呼ばれる象形文字を発明し、ピラミッドを作った人々です。

ヒエログリフ.jpg文字を書くのか描くのか・・・。 ウイキより


南アジアにおいては、
およそ 6 万年前、出アフリカの第一波がインドを経て
スンダランド~オーストラリアに到達したわけですが、
一部はインド亜大陸に留まり、インド最初期の先住民を形成します。
インドでアディバシ、スリランカでヴェッダと呼ばれる人々がそうです。

その後、東アフリカあたりから西アジアを経て、
ドラヴィダ系の言葉を話す人々がインド・パキスタン地方に到来します。

ドラヴィダの少女.jpgドラヴィダの少女 Quora より 鋭いまなざしがグッときます。
https://pt.quora.com/Quem-s%C3%A3o-os-dravidianos-De-onde-eles-vieram

 
およそ紀元前 3000 年頃にはハラッパやモヘンジョダロで有名な
インダス文明が打ち立てられますが、
この文明を作った人々が誰なのか、未だ確定的ではありません。
色々説はあるようですが、有力なのがドラヴィダ人説です。

細かな点には言及しませんが、インダス文明の都市遺跡と、
先に述べたシュメール人の遺跡との類似性が指摘されています。
また、インダス文明で用いられた印章がメソポタミア各地で発見され、
人種学的にもシュメール人との類似性が指摘されています。
タミール人に代表される現在の南インド人は、
ドラヴィダ人とインド先住民との交流の結果生じた、と考えられています。
さらに、現在のパキスタン、バロチスタン州には、
ドラヴィダ語に属するブラーフーイ語を話す人々が、
少数ですが、飛び地のように存在しています。

すなわち、シュメール、インダス共に、
東アフリカに発して西アジアにかけて広がった、
「広い意味での」ドラヴィダ系の人々によって
打ち立てられた可能性
が考えられます。確定的ではありませんが・・・。

※ シュメール語は結構解読されているし、
ドラヴィダ語は現在進行形で話されているわけですから、
それを考えると、仮に両者が同源であるとすれば、
もっと多くの証拠が言語学から指摘されるはず!
一方で、シュメールと同時代、
シュメールの東にあったエラム王国で話されていたエラム語と
ドラヴィダ語との関連が指摘されている。
加えて、エラム語とシュメール語とは姉妹語であるとの主張も見られる。
時代~メソポタミア下流域~アラビア湾~インダスの地域的つながりなど、
これらを総合的に考えると、
同源であるかどうかは別として、
これら三者のあいだに何らかの関連があってもおかしくはない。

エラム帝国.jpgシュメールなどと同時代に存在したエラム王国 ウイキより


この先、アーリア人の拡散についてお話していきますが、
彼らの拡散に引き続くインダス文明の崩壊の時期を考えても、
インダス文明ドラヴィダ人説に理がある、と個人的には考えてます。

ドラヴィダ系言語.jpg赤い色がドラヴィダ系言語を話す人々の地域 ウイキより改変


今回は、川出書房新社の「世界の歴史シリーズ」より、
岸本通夫氏の「古代オリエント」並びに
佐藤圭四郎氏の「古代インド」を参考と致しました。
いつもながらに古い本で恐縮です。