喜源テクノさかき研究室: 2014年4月アーカイブ
ガン概論:その2
ここでは発ガン誘発因子(イニシエーター)と発ガン促進因子(プロモーター)のお話を致します。
ガンは細胞の遺伝子が変異を起こすことによって生じる病ですが、この遺伝子の変異を直接的にもたらすものを発ガン誘発因子と呼びます。前回の例で挙げたカビ毒のアフラトキシンや、体内で発生する活性酸素などが誘発因子の代表です。発ガン促進因子とは、これらの誘発因子によって変異を起こした細胞がその後に増殖を繰り返して最終的にガン細胞となる過程を促進したり、或いは誘発因子が細胞遺伝子に働きかける過程を手助けする様な因子の事です。細胞がガン化するためには、多くの場合、この両者が必要となります。
アフラトキシンや活性酸素、或いは放射線や紫外線などは比較的分かりやすい発ガン誘発因子ですが、アスベストやピロリ菌などの発ガンメカニズムは複雑で、これらを上記二分類に組み込むのは困難です。アスベストは免疫系を誘導する事によって局部の炎症を引き起こし、これが長期化する事でガン化につながる訳ですが、この場合、アスベストそのものは遺伝子変異とは無関係ですので、これをイニシエーターと呼ぶことは出来ません。同じようにピロリ菌も直接的に胃粘膜細胞の遺伝子に損傷を与える訳ではありませんので、これもイニシエーターではありません。前者は、免疫細胞が局所で放出する活性酸素や、或いはアスベストに付随した鉄元素による触媒機構によって生じた活性酸素によって局所細胞がガン化すると考えられておりますし、後者はピロリ菌が産生するCagA タンパクによって細胞内伝達系が攪乱(かくらん)され、細胞の異常増殖をもたらす結果、ガン化につながると考えられています。従って両者ともに、厳密には先に定義したプロモーターに分類されるべきものであると思われますが、CagA タンパクをプロモーターと呼ぶのは自然である一方で、ピロリ菌そのものやアスベストそのものをプロモーターと呼ぶのには相当な違和感があります。
即ち、前回で紹介した様に、ガン化の内部要因において、細胞増殖メカニズムや免疫系の様に、生体恒常性維持のために働いているシステムそのものがガン化に対して大きな役割を果たしている可能性が指摘されますので、この先、単純に「イニシエーターとプロモーター」の様な言葉を用いてメカニズムをお話していく事は、これはナカナカ困難な仕事である様に思われます。
要するに、発ガン過程って、もんのすごく複雑ナンです。
従いまして、この先のお話を続けていくために、センセはこの様な「言葉遊び」を一旦やめ、今一度、センセの言葉で分かりやすく「発ガン要因」を分類して見ようと考えております。
ナンか、前回「なるべく分かりやすくお話していきます」などと申し上げましたが、結構難しくなってしまいました。おまけに、いつもと違って推敲に推敲を重ねて書いておりますので、平日の夜に書ける量はせいぜいこの程度。申し訳ないです・・・。
では、続きはまた近々!Good Night Baby !
皆様こんばんは!ご機嫌いかがでしょうか。長野県坂城町も日一日と暖かくなりつつある日々ですが、桜は未だつぼみのまま・・・。たぶん、今週末には開き始めるかな?と言うカンジの今日この頃です。
さて、近頃はお医者さんなどが何名か揃って、バラエティー形式で、居並ぶタレントを相手に、病気や健康について語る番組が増えております。余りTV は見ないセンセですが、先日は「ガン予防」のテーマでこの手の番組が紹介されておりましたので、これはセンセの研究テーマの一つでもあり、とりあえず覗いてみました。ま、大方は無難な事を述べておりましたし、「大豆」であるべき絵が「小豆」であったのは単なるご愛敬なのかも知れませぬが、ただ一点、「お焦げを毎日茶碗一杯食べてもガンにならない!」などとトンデモハップンな事を言っておりましたので、これは捨ててはおけぬとばかりに、平日の夜にもかかわらず、このテーマについて書いてみようと思い立った訳であります。
気になってネットでちょいとばかり検索して見ましたが、TV番組と同じようにお焦げはガンと無関係であると主張するサイトが結構ありますので、これは一つ、ここで相当に突っ込んで議論してみたいと思います。
今回のシリーズは、先に述べたようにセンセの研究テーマの一つでもありますので、ちょいとばかりまじめに議論を積み重ねて行きたいと思います。なので、いつものブログの雰囲気とは少し異なるものとなるかも知れません。また、シリーズも比較的長くなるかと思いますし、一旦投稿したものをさらに推敲し、何度も書き直す事もあるかと思います。即ち、今回のTV番組は一種のチャンスでもあり、センセ自らの考えをまとめる機会でもありますので、ちょいとばかし気合いを入れて、このテーマに関して普段にも増して勉強しつつ、情報発信を行っていこうと考えています。
でも、難しい話を難しく語る事は最大限避けていくつもりです。勉強した事やテクノさかき研究室で得られた実験結果などを出来うる限り自分の頭の中で咀嚼し、十分に消化した後にお話していこうと考えて居ます。即ち、いくつかのブログで見られる様な、単なる情報の羅列は避けたいと思います。
科学は日進月歩の世界ですし、科学の先端の世界は、何が本当であるのか多くの研究者が激しい論争を行っている混沌たる場ですので、いくらセンセが勉強して此処で語ったとしても、それは所詮科学の先端に於ける「最大公約数」を羅列する結果に終わるのかも知れません。けれども、少なくともこのテーマに関しては、この様な試みが他の場で行われている所を殆ど見たことはありませんので、今回の試みがもたらす結論は十分に考慮に値するものであろうと、少なくとも現段階において、唯我独尊ではありますが、考えております。事によると、最後まで読んで納得された方々には、cancer free!のすんばらしい未来が待っている かも 知れませぬ!!!
ガン概論:その1
いきなり手強そうな事を言い出しましたが、やはり基本的概念を認識~共有しておかないと先々の議論が可笑しくなりますので、ここでは「分かっているヒトは分かっているけど分かっていないヒトは全く分かっていない」類の、ガンに対する基本的なお話を致します。難しい話を難しく語るのを避けるために、繰り返しになりますが、細かな専門的事柄をクドクド説明するのは避け、最大限自分の言葉で説明して行きたいと思います。物足りない方々は、どうぞガンの教科書をお読みになってください。
ガンは、何らかの原因によって体の細胞の遺伝子が変異を起こし、暴走する結果、生じる病です。この「何らかの原因」は、「内部要因」と「外部要因」の二つに大別する事が出来ます。
内部要因によるガンの代表としては、生まれながらに遺伝子にミスがあり、成長に従ってガンが顕在化するような例が挙げられます。しかしながら、遺伝子におけるミスが生まれながらにあったとしても、その後の人生での外部要因によってガン化が加速される場合も多いと思われますので、外部要因の重要性は、この場合に於いても無視出来ません。
このような極端な例でなく、普通のヒトにおいても内部要因は働きます。すなわち、細胞は分裂しますので、その際には遺伝子の複製ミスが生じる可能性があります。ヒトの体を構成する細胞の数はおよそ60兆個と言われています。その全てが分裂する訳ではありませんが、これだけの数の細胞が分裂を繰り返すとなりますと、結果として生じる複製ミスの可能性は決してゼロではありません。また、この様な細胞の複製に関与するメカニズムそのものがガン化に影響を及ぼす事となります。その意味で、「ガンは宿命の病」と言う言い方も、あながち間違いではありません。
さらに、感染症などに対応する免疫反応そのものが慢性炎症や細胞複製過程に大きな影響を及ぼしますので、この様な「免疫系」も内部要因の一つと言う事が出来ます。
外部要因によるガンとは、外部の環境因子が原因となって発生するガンの事です。これは三つに分類出来ます。一つは、「原因と結果の因果関係が明らかなもの」、二つは「因果関係が不透明なもの」、三つは「その中間」です。
因果関係が明らかな外部要因によるガンには次のようなものがあります。アスベストによる中皮腫、紫外線による皮膚ガン、カビ毒であるアフラトキシンによる肝臓ガン、ピロリ菌感染による胃ガン、放射線ヨウ素の摂取による甲状腺ガンなどです。最近、印刷工場で働いていた従業員に高率で胆管ガンが発生した事件がありましたが、印刷時に使用していたジクロロプロパンやジクロロメタンの影響が強く疑われています。これも、因果関係が比較的はっきりとした事例に含めて良いと思います。
「因果関係が明らか」と言う意味は、その原因によって限りなく100% に近い確率でガンになる、と言う意味ではありません。飽くまで「そのガンに先立つ原因として認められるものに、それがガン化に影響する確率が他の何物にも増して高い」と言う意味です。
難しいかも知れませんが、分かりやすく説明します。
今、30歳の男性が海で泳いでいて死亡したとします。この場合、車にはねられて死亡したとか、老衰で死亡したとか、産後の肥立ちが悪くて死亡したとか、と言う可能性は、相当と言おうかゼロと言おうか、排除されると思います。でも、心臓発作で死亡したのか溺れた結果水を飲んで死亡したのかを特定するのは、この段階ではナカナカ難しいかと思います。加えてこの時、「30歳の男性が海で泳いだ場合、そのヒトが溺れる確率は極めて高い」と言う事を意味する訳ではありません。「因果関係が明らか」と言うのは、その様な意味です。
因果関係が「より不透明ではあるがおおむね認められているもの」の代表例としてはタバコや飲酒が挙げられるかと思います。特に、口腔~咽頭喉頭~食道~肺にかけて発生するガンとタバコとの因果関係は、相当程度にはっきりとしていると断定して良いかと思います。
最後に「因果関係が不透明ではあるが、恐らく~たぶん、外部要因が関係していると思われる」ガンとして、普通に我々が日常的に食べている食物に由来するガンがあります。本シリーズのテーマである「お焦げ」は、ここに含まれます。
ハイ、今晩はここまで。続きは次回と言う事で・・・。