喜源テクノさかき研究室: 2014年4月アーカイブ

お焦げとガンについて-17

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その他の気になる因子-3

「お焦げとガンについて-11」で北欧四カ国を比較検討した時、フィンランドの特異性もさることながら、ノルウエーの意外性も明らかとなりました。フィンランドの場合は良い意味での驚きでしたが、ノルウエーの場合は逆の意味での驚きでした。すなわち、他の3 ヶ国と比べて特に目立った点は無いのに、どういう訳か大腸ガンの罹患率が最も高かった、と言うことです。

ノルウエーは、お隣のスエーデンや一軒先のフィンランド、海を隔てたお向かいのデンマークなどと比べ、耕地が乏しく、農業牧畜の類は盛んではありません。その代わり、海岸に連なるフィヨルドには多くの良港があり、漁獲量も多く、世界でも有数の海産国として有名です。と同時に、国内にはトナカイなどの野生動物も多いので、これらの野生動物の肉も食肉として幅広く利用されているとのことです。いわゆるジビエですね!
また、1960 年代に北海油田が発見~開発されて以来の欧州でも数少ない「資源国」であるため、国家財政も潤沢であり、豊かな自然や森林資源に恵まれた、ある意味「うらまやしい!」国の一つでしょう。

ただ一点、ガン罹患率が高い点を除いては!

燻製が怪しい?

ノルウエー料理を特徴付けるものが燻製です。ノルウエーは海産資源と野生動物、さらに森林資源が豊かですので、獲ってきた魚やトナカイを干し、さらに木材のチップで燻製にして、暗く、長く、厳しい北欧の冬の保存食としてきた長い歴史があります。従いまして、冷蔵庫が普及した現代であっても、燻製料理は将に、ノルウエーの「国民食」と言う程に思い入れが強い料理なのかも知れません。単なる想像でモノを言ってますので、ホントのトコロはノルウエー人に聞いてみないと分かりませんが、、、。

けれども燻製の怪しさには訳があります。

「お焦げとガンについて-13」で、複雑な組成の有機物を高熱処理した場合には、微量ではあるが、細胞変異を引き起こす様な物質が生じる可能性を指摘し、その様な例としてヘテロサイクリックアミン(HCA)やPM2.5 、ベンゾピレンなどを挙げました。燻製を作る際には木くずを燃やし、煙を発生させて、この煙で肉や魚を燻す(いぶす)訳ですが、この際に、煙の中にこの様な物質が生じる可能性がある訳です。

で、実際に、様々な物質が検出されておりますが、代表的なのが、これまで何度も出てきたベンゾピレンと言う物質です。ベンゾピレン、或いはベンツピレンとも日本語では呼びますが、同じ物質です。下の図の様な構造です。多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbons;PAH) と呼ばれる一群の物質の一つです。
ベンゾピレン.jpg
この物質はこのシリーズでも何度も言及している様に、大変強力な変異原物質です。HCA と同じように、生体内に取り込まれた後にCYP 酵素によって発ガン物質に転換され、発ガン性を発揮します。
HCA との違いは、HCA がアミノ酸を多く含む有機化合物の加熱によって生じるのに対し、ベンゾピレン に代表されるPAH はアミノ酸などの窒素化合物が無くても生じる点です。構造式もHCA などと異なり炭素と水素だけで構成され、単純です。構造の細かな違いによって幾つかの種類がありますが、多かれ少なかれ変異原性を有しています。

燻製の場合、肉や魚肉は燻されるのであって直火で調理される訳ではありませんので、HCA 類は原理的に発生しないと思います。その代わり、乾燥を兼ねて煙でじっくりと処理される訳ですので、煙中に発生したPAH が肉や魚肉の表面から内部に進入し、滞留することになります。さらに、元々燻製は肉や魚の長期保存が目的で作られて来たと考えられますので、 多くの場合、肉や魚は燻煙処理前に塩水などによって前処理されます。その結果、塩蔵品よりは低濃度ですが、燻煙肉はある程度の塩分も含む場合が多いです。

ベンゾピレンの動物実験は数多く行われており、その発ガン性に疑いはありません。
燻製肉そのものの発ガン性に関するデータは殆どが疫学からのものですが、疫学の常として、可能性があるとするものと否定するものが混在します。

ここでは、北欧四カ国の国民一人当たりが一日に暴露するであろう量のベンゾピレンを推計したデータを示したいと思います。下の図がそれです(2008年のデータ)。

北欧ベンゾピレン暴露量.jpg
この4 ヶ国の中ではノルウエーが最も暴露量が多く、フィンランドが一番低いと推定されています。ここで言うベンゾピレンの全てが燻製肉から得られるベンゾピレンの量、と言う訳ではありませんが、燻製肉に関する似たような世界的規模のデータが見あたらないので、上の図は貴重です。しかも「お焦げとガンについて-11」で示された矛盾や疑問点が、この図によって大部分説明されます。

やはり、似たもの同士の間で比較する、と言う戦略に誤りはありませんでした。定性的ではありますが、「有機物を高熱処理する事によって発生する物質」とヒトの発ガンとの間には、相当に強い因果関係が認められると結論づけても、大きな間違いは無いかと思います。


お焦げとガンについて-16

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その他の気になる因子-2

牛乳の次は、トウガラシについて考えて見ます。
何故トウガラシ?と言うことですが、これにはもちろんキムチが関係しています。

日本と韓国との大腸ガン罹患率の比較において、食肉の量と並んで料理法が大いに疑われるとの結論に達しましたが、キムチに代表されるトウガラシを用いた料理法も韓国料理の特徴です。加えてトウガラシの刺激性は大いに知られているところではありますので、これが、例えば大腸粘膜を刺激し、その結果、大腸ガンの補助的な因子として働いている可能性も、理屈としては考えられる訳です。

カプサイシンは発ガン促進因子?抑制因子?それとも無関係???

トウガラシを特徴付ける刺激性成分の正体は、カプサイシンと呼ばれる物質です。ヒトにはカプサイシンに対する受容体が存在し、ヒトによって感受性に違いがありますが、僅かな量のカプサイシンでも発汗や発熱などの反応を引き起こします。
センセの場合は敏感で、たぬきソバに七味を加えて食べると、あっという間に額から汗が滝のように流れ落ちてきます。まるで「汗ボタン」のスイッチを押したかの様です。何でこの様な仕組みがヒトに備わっているのか、謎であると同時に興味深いところです。

トウガラシは日本の戦国時代に南蛮人によって伝えられ、その後の秀吉の朝鮮征伐の時に半島に伝えられたと言われています。
皆さん既にご承知の様に、料理にたくさんの量のトウガラシを用いるのは韓国だけでは無く、タイを中心とする東南アジアの国々~中国の四川料理~メキシコなどなど、それぞれの国や地域の料理文化を特色づける食材となっています。トウガラシの多食を原因とする病気がこれらの国や地域には多い、などと言う報告を見聞きしたことも特にありませんので、これまで気に止めたことも無かったのですが、今回のお焦げとガンの関連を調べてきた結果、疑念が生じてきましたので、少し調べてみました。

PubMed (パブメド)と言うバイオ系の論文データベースでチェックしたところ、「カプサイシンは発ガン促進因子である!」と言う論文と、「イヤ!発ガン抑制因子である!」と言う論文と、見事に半々に分かれて大げんかの真っ最中でありました!

A の論文は「カプサイシンはNK 細胞を弱体化する!」と言う一方で、B の論文は「カプサイシンはガン細胞にアポトーシスを引き起こす!」と主張します。他にも色々なメカニズムへの影響~効果をあげて、白旗黒旗を揚げたり下げたりしているのが現状です。
Reviewer は、「少量のカプサイシンは発ガン抑制に働き、大量のカプサイシンは発ガン促進に働く」と、無難な地点に軟着陸しているのが多いです。

結局、良く分かりません!一つはっきりしているのは、カプサイシンは発ガン誘発因子~細胞変異因子では無い!と言う事です。

ここはReviewer (当該トピックに関するたくさんの論文をまとめ、紹介~評価するヒト)と同じく、「普通に食べてればいいんじゃない?」ってトコロでしょうか。



お焦げとガンについて-15

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その他の気になる因子-1

北欧4カ国間並びに日本と韓国の二カ国間での比較から、肉の消費量とは別に、大腸ガン罹患率に影響している可能性があるいくつかの要因が浮かび上がりました。以降、これらについて考えてみたいと思います。始めに、牛乳について議論します。

牛乳は悪者なのか?良い者なのか?

暫く前、牛乳悪玉論が流行った事がありました。アメリカ帰りの医師が唱え始めた説で、内視鏡でアメリカ人の大腸を何万例(だったかな?)も観察した結果、凄く荒れてるとの事。その原因は「牛乳だっ!」と断定したのが始まりだったと思います。

このブログで以前にも書きましたが、これがホントかどうかは分からないです。ホントかも知れません。でも、アメリカ人って、いまさらここに書くまでも無く、皆さん十分にご存じだと思いますけど、何でもかんでも「摂りすぎ」でしょ?牛乳もそれこそ「毎日バケツで何杯も飲む」ぐらいでしょ?大袈裟だけど。だからじゃないの?それをそのまま日本に持ち込んではいけないんじゃ無いの?簡単な理屈じゃん、、、。

とか思ってましたが、いざ実際に調べてみると、アメリカ人の牛乳消費量なんて可愛いものでしたwwwww (下図)!!!

牛乳消費量 1994.jpg
調べた限りに於いては、フィンランド人一人当たりの牛乳消費量は世界一です。アメリカの2 倍近くもあります。押し並べて、欧州諸国の非常に高い消費量が目に付きます。仮に牛乳消費量と「大腸粘膜の荒れ」が相関するのであれば、フィンランド人の大腸粘膜はボロボロで、そこから発ガン物質も進入して大腸ガンももっと多く発生しているはずですけど、もちろん事実は逆です。

それでは牛乳は「飲めば飲むほど健康に良い」と言って良いのでしょうか?

下の図は、牛乳消費量と心筋梗塞との関連を示した有名な図です。

牛乳消費量と心筋梗塞.jpg
これは統計的にも綺麗な相関が出ていますね!牛乳消費量と心筋梗塞との間には何らかの比例関係がある様です。このシリーズでは大腸ガンのお話をしておりますので、心筋梗塞に関して突っ込んだ議論はしませんが、牛乳と心筋梗塞との関連においては、牛乳中のコレステロールに疑いの眼差しが注がれています。

但しこれは、先に述べた様に、「飲めば飲むほど健康になる」と言う仮説が崩れただけであり、「適量を飲む限りに於いては、牛乳は健康に大きく役立つ」と言う命題が否定される訳ではありません。
この様な話が出ると必ず「黒か白か、マルかバツか」と言うお話になってしまいがちですので、この点大変に注意すべき所です。

牛乳は心筋梗塞の他にも、乳ガンや子宮ガン、或いは前立腺ガン等の、性ホルモン依存性発ガンの発生に関与していると言われていますが、本当でしょうか?これも世界各国との相関を調べた報告があります(下図)。

乳がん発生率-2.jpg
こ、これって、牛乳との相関じゃ無いです!牛乳ではなく、牛肉との相関がめっちゃくちゃ綺麗に出てるじゃ無いですか!!!牛乳の消費量は中間位なのに、牛肉の消費量が世界一のウルグアイがトップです!イスラエルもデンマークも強いです。一方のフィンランド~スエーデン等、牛乳消費量に比べて乳ガン発生率は低めじゃ無いですか!!!

上の図からは、乳ガンと牛乳の消費量との関係ははっきりしません。この手の統計は、既に以前にも指摘しましたが、人口10 万人当たりの罹患率ですので、色々な要因が雑音となります。上の図も、下位の国々にウガンダ、マリ、ジンバブエ等、「比較以前」の国々をたくさん載せていますので、r (アール;相関係数)が高くなるのも当たり前です。これらの国々を除いて、ある程度の「先進国」を集めて比較してみると、個人的には、これは「牛肉との相関」を表している図に見えてしまいます。但し日本と韓国との関係が逆転していますので、確かに乳ガンは「牛肉」だけで語る事は出来ない様です。

次に、牛乳に含まれているカルシウムの存在と大腸ガンとの関係について考えてみたいと思います。カルシウムとビタミンD と日照時間の関係については、述べるまでも無いですよね?・・・ね?・・・・

日光の照射量が少ないと大腸ガンに罹りやすくなる?

まず始めに、「お焦げとガンについて-8」の世界マップを見てください。ザッと見て、西欧から北米にかけての地域に大腸ガンが多く、東南アジア~アフリカ~南米には少ないと言う印象が生じます。ここから、「寒い地域、特に日照が少ない地域に大腸ガンって多いのでは?」と言う疑いが生じます。
でも、一般的に言って、日照が多くて暑い地域は一人当たりのGDP が少ない地域が多いですし、また、GDP が高くて大腸ガンも多い豪州や東アジア地域は日照に事欠くことは無い地域ですから、この事実だけを理由にこの仮説は却下しても良いと思うのですけど、もう少し細かく見ていくと、「イヤイヤ、ナンか微妙に関係しているカンジがするゾ?」と言う雰囲気になってきますので、皆様どうぞ今暫くお付き合いをお願い致します。

これまで世界各国との比較の中で、議論を行ってきました。今度は一国内ではどうなのか?で見ていきます。始めに、日本国内県別のガン罹患率を見てみます。下の図は、県別のガン罹患率マップです(2008年)。大腸ガン限定の罹患率マップを見つけることが出来ませんでしたので、「男女合わせた全てのガン」の結果となります。秋田、山形、青森、鳥取、大分が多いのが分かります。沖縄、少ないです。

県別ガン患者数 2008.jpg
次に、男女の大腸ガン死亡率マップです(2008年)。大腸ガン罹患率マップが見つからなかったので、死亡率で見てみます。まずは男から。秋田、青森、新潟、島根と言うカンジです。

県別大腸ガン死亡者数 男性 2006.jpg
次は女性。島根、秋田、青森、岩手、佐賀というカンジです。やはり東北~山陰が目立ちます。

県別大腸ガン死亡者数 女性 2007.jpg

次に牛肉消費量の県別マップです。

県別牛肉消費量 2008.jpg
西日本が多いです。ガン患者統計とは全く相関しないカンジです。因みに豚肉マップは東日本が優勢でしたが、これもガン分布とは無関係でした。

次に、日照時間のマップを出してみます。

県別日照時間 2011.jpg
おおっと!秋田、青森、山形、島根、鳥取の日照時間が見事に少ないですね!
うう~~ん、静岡、日差しが宜しいですねえ、、、。ミカンと黒はんぺんと、♪ 茶のか~お~り~、ですね!なんか関係するのでしょうか?

では、と言うので、アメリカ国内ではどうでしょうか?始めに日照時間から見てみます。

アメリカ日照時間マップ.jpg
メキシコ国境~アリゾナ~ニューメキシコ州辺りの砂漠地帯が最も日照時間が長く、北に行くにつれ減ってきますね。特に五大湖周辺と北西部のワシントン州が顕著に少ないです。次に男女の大腸ガン罹患率マップを載せます(2010年)。

アメリカ 大腸ガン罹患率マップ 2010.jpg
これは微妙ですね!もっとマッチするかと期待していたのですが、、、。アメリカは巨大な国なので、州別では無く、もう少し細かく区切った地図が欲しい所ではあります。

では、と言うので、アメリカの肉の消費量マップを見てみましょう(2010年)。

アメリカ食肉消費量マップ 2010.jpg
これは一人当たりの食肉量ですので「アリゾナやネバダ州の人口は少ないから無意味だ!」と言う事にはならないです。ユタ州とかも少ないですけど、宗教のせいですかね?アイダホの連中は、芋ばっかり食ってんでしょうね。北東部の州の食肉消費量が少ないのが特徴的だと思います。カリフォルニア~テキサスの一部~南部の一部~ワシントンDC 辺りが多いですね。やはり細かな大腸ガン罹患率マップが欲しい所です。

最後に、アメリカの牛乳消費量の分布図を見てみます(2002年)。
US milkconsumption 2002.jpg
これを見ると、五大湖周辺~北東部の牛乳消費量が多いですが、特に大腸ガンとは関係が無さそうです。

牛乳中のカルシウム、ビタミンD、日照時間、そして大腸ガンの間に関連があるのか無いのか見て参りましたが、日本国内で見る限り、日照時間と大腸ガンの間には大いに関連がある様な気がしますが、アメリカでは余り関係が無い様な気もします。また、始めに指摘した様に、オーストラリアやニュージーランドの例もあり、国別と言う大きな視野から見ると、これとは別の絵模様が描けます。

この理由ですが、日本国内の県別結果では母集団の数が少なすぎるので、雑音の影響が大きく出てしまうのでは無かろうか?と考えます。早い話が、過疎地域の老齢人口の割合が大きいので、こんな結果になっている可能性があります。


では、と言うので、都道府県別老齢者人口の割合を見てみますと、

都道府県別老齢者人口.jpg

・・・・・・・・・・なんだよ、オイっ! って、カンジです・・・・・・・・・。

結局、牛乳、カルシウム、ビタミンD、大腸ガンの間の関係は良く分からない、と言うのが本当のところです。

アメリカは変化しつつある!

最後に、アメリカ人の大腸ガン死亡率がジリジリと減少傾向にあるデータを、食肉消費量の推移と共に示して見たいと思います。

Age-Adjusted Colon Cancer Mortality Rates for White Females by US 1950.jpg
これは、アメリカ白人女性の大腸ガン死亡率の変化を州ごとに表したものです。罹患率マップが見つからなかったので、死亡率で代表させます。昔は五大湖周辺~北東部の大腸ガンによる死亡が非常に多かった様ですが、徐々に減少しつつあるのが分かります。死亡率ですから医療技術の向上による結果である可能性も排除は出来ないのですが、たぶん、罹患率も似たような動向を示していると思います。綺麗なデータです。

次に、アメリカの食肉消費量の時系列的変化を見てみます。

アメリカ 食肉消費量の推移.jpg
豚肉と鶏肉の消費量が伸びる一方で、牛肉の消費量はジリジリ減少しつつある事が分かります。また、魚に関しては、野生の魚(漁師が海や川で捕る魚)の量は減る一方で、養殖魚の伸びが急激です。これらの変化は、食肉の質が病気に影響する、と言う認識が、アメリカ人の間に広まりつつある事の明らかな証拠であると思われます。恐らく、昨今のCool Japan の影響もあるかと思います。このデータは、「お焦げとガンについて-8」で述べた、「アメリカの食肉消費量は昔も今も余り変わらないのに、大腸ガンの罹患率が大きく低下したのは不思議だ」と言う疑問を良く説明しています。

でもちょっと意外なのは、野生の魚の消費量が多い事です、、、。何でしょうね?ミシシッピーでナマズでも捕って食べてるのでしょうかね?トムソーヤでしたらいざ知らず、あんまし現代の普通のアメリカ人のイメージとはかけ離れたデータです、、、。

いずれにしましても、要するに、牛肉消費量の低下がアメリカ人の大腸ガンの罹患率低下に大きく寄与している可能性を示すデータである、と言えると思います。





お焦げとガンについて-14

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主犯?共犯?それとも無実???

細胞変異因子として位置づけられるヘテロサイクリックアミン(HCA) が主犯格と思われますが、主犯の座を巡って現在紛争中の連中も、肉の中には存在します。

油?

「ガン概説:その3」の中でお話致しましたが、肝臓で作られる胆汁の主成分は胆汁酸と言う物質です。胆汁酸は肝臓で作られた後に腸管に分泌され、脂肪の消化を助けます。その後は大部分が再吸収されますが、一部は再吸収されずに大腸に達し、腸内細菌の働きで二次胆汁酸に転換されます。この二次胆汁酸の中に発ガンを促進する働きを持つものがありますので、油の摂りすぎには注意が必要です。

一方、世界の油消費量マップを見る限り、大腸ガン罹患率マップとの比較において、何となく関連している様な、していない様な、と言うカンジで、はっきりとしません(下図)。

daily fat consumption.jpg
特に日本と韓国には当てはまりませんし、北欧よりも南欧の方が摂取量が顕著に高いです。さらにはウルグアイの消費量も多くありません。これは、この図は植物油も動物性脂肪も区別していないので、例えば南欧などのオリーブ油の消費量が反映された結果かと思います。

胆汁は、植物油であろうが動物性脂肪であろうが、油であれば区別無く分泌されますので、仮に油が大腸ガン発ガンの「主犯」であるとするならば、地中海地域の国々の大腸ガン罹患率はもっとアップして良いかと思います。けれども、事実は異なります。
従いまして、食肉中に含まれる脂肪は、共犯者ではあっても、主犯とするには証拠不足であると思います。

次に疑われるのは、肉の中に含まれる鉄分です。

肉の中の鉄分はどう?

「ガン概説:その1~3」の中でお話した様に、アスベストによる発ガンメカニズムの一つとして、鉄元素の触媒作用による活性酸素の産生が疑われています。食肉、特に牛肉、豚肉、羊肉等の「赤身肉」と呼ばれている肉には鉄分が多く含まれていますので、これの過剰摂取による鉄元素の取り込みが、その後に体内で活性酸素産生に結びつき、発ガンに至る、と言う説があります。これは動物実験などでも報告されていますので比較的説得力もあるのですが、HCA との比較において、主犯か副犯かで意見が分かれます。

そもそも鉄元素は野菜中にも多く含まれています。ほうれん草や小松菜などが有名ですが、パセリやひじきの方が圧倒してます。大豆も多いです。一方で、肉に多く含まれる鉄は肝臓などの臓器に局在しますので、レバーなどが特に好きなヒトは別として、「筋肉部分」を主体に食べる普通のヒトにとっては、「鉄元素そのもの」の絶対的な摂取量はそんなに多くはありません。
しかしながら、肉中に含まれる鉄元素は「ヘム鉄」と呼ばれる形で存在し、このヘム鉄は野菜等に含まれる普通の鉄よりも消化管からの吸収が5~6 倍高いので、おろそかには出来ません。因みにヘム鉄と言うのは、脊椎動物の赤血球ヘモグロビンタンパク中の鉄を中心とした特殊な構造をした化合物の事で、植物の葉緑素と似たような構造をしています。

一方で、そもそもヘム鉄は我々の体内に既に相当量存在し、赤血球が寿命を迎えた時には鉄分は再利用されるメカニズムも存在します。過剰に摂取された鉄は排除されるメカニズムも存在しますし、鉄欠乏性貧血の症例には事欠かないのが寧ろ一般的ですので、レバー好きのヒトは別として、普通に赤身肉を食べるヒトが摂取する様な分量の鉄分が本当に発ガンにつながるものなのだろうか?と言う素朴な疑問も生じます。

ヘム鉄の主たる吸収部位は十二指腸~小腸上部ですが、ヒトの腸管の吸収上皮細胞にはそもそも「ヘム鉄分解酵素」と呼ばれる酵素が存在し、ヘム鉄の過剰摂取を抑制するメカニズムが備わっています。また、吸収上皮細胞におけるヘム鉄の吸収量が飽和状態に達すると、細胞は粘膜から消化管管腔内に脱落し、死んでしまいます。
今回のシリーズは大腸ガンのお話ですから、大腸粘膜で何らかの仕事が成される必要があります。そうしますと、消化管上部で吸収されたヘム鉄は何らかのメカニズムで大腸粘膜に選択的に移行し、そこに蓄積する必要がありますが、それを裏付ける報告はあるのでしょうか?
そうでは無く、十二指腸~小腸上部で吸収されずに残ったヘム鉄が大腸まで到達し、大腸粘膜で吸収されるのでしょうか?
或いは鉄分を飽和して脱落した吸収上皮細胞が大腸に到達後にヘム鉄を放出し、何らかの影響を及ぼす、と言うシナリオでしょうか?

そもそも鉄分は吸収しづらい物質ですので、野菜や海草などから摂取された鉄分の大部分は吸収されずにそのまま大腸に移行し、その後に排泄されると思われます。そう考えますと、吸収されずに大腸まで容易く到達する普通の鉄分の方が、大腸粘膜に直接影響を及ぼす可能性の方が強い様な気がしますが、、、。

或いは例によってブラックボックスである腸内細菌叢が関与しているのでしょうか?

良く分かりません、、、。

こうなりますと、食肉の種類で比較検討する必要がありそうです。

食肉の種類と鉄分量の比較

と言う訳で、牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉の、等重量中の鉄分量を比較してみました。

食肉中の鉄分量.jpg
脂肪が付くとその分赤身が少なくなりますので、鉄分量も減ります。羊の赤身肉のデータが無かったので、山羊の赤身肉のデータで代用しました。「そんなことして良いのか?羊に対して失礼ではないのか?!」とお叱りを受けるかも知れませんが、羊の脂肪付き肉に含まれる鉄分の量が相当に多いので、他の肉と比較しても、この程度で遜色無かろうと思います。本当は、たぶんもっと多いだろうと思ってます。少なめにしときました、、、。

食肉の種類で鉄分含有量が結構異なりますが、これはたぶん、餌のせいかと思います。

食肉牛には牧草も与えますが、「肥育」と言ってトウモロコシ等の高カロリー食も与えますので、牧草100% で育てる訳ではありません。豚は雑食です。鶏も鶏専用の餌で育てます。

一方、羊や山羊は殆ど草地で草だけを食べて育ちますので、放牧地の土壌に由来する鉄分がそのまま羊肉に移行します。従いまして、含まれる鉄分も多くなります。白山羊さんや黒山羊さんはお手紙を読まずに食べますので、インクの成分も含まれているかも知れません。つまらん冗談ですので気にせんといて下さい。

となりますと、次に行う事は、羊肉の消費量と大腸ガン罹患率を比較する事です。特徴的な国があります。

羊肉の消費量と大腸ガン罹患率の比較

その国は、モンゴルです。「お焦げとガンについて-8」の図を再びご覧になって下さい。国別一人当たり年間羊肉消費量が圧倒しています!

また一方で、2 位と3 位にはニュージーランドとオーストラリアが顔を出していますが、この両国は、牛も鶏も羊も、肉であれば何でも食べる国である事が分かりますね!オーストラリアはカンガルーも射殺してドッグフードにして販売する国ですが、それでもどうしても鯨肉だけは許せない、との事らしいですwwwww
自分の国だけでしたら別にいいんですけどね、、、、。
アングロサクソンって、、、、。
 

さて、モンゴル人の大腸ガン罹患率は、ずいぶん低いです。従いまして、羊肉消費量から見積もられるヘム鉄の摂取量との間に乖離(かいり)が見られますので、「ヘム鉄と大腸ガンとは無関係!」との結論に達するかと思いきや、そうは問屋が卸しません。
モンゴル人の平均寿命は2011年の数字で68.49 歳だそうです。加えて65 歳以上の高齢者が人口に占める割合は4~5% 程度と日本の1/5 以下ですので、この結果をそのまま評価する事は出来ません。
結局、良く分からない、との結果となりました、、、。残念!

因みに、この世界にはもっとスゴイ連中も居ます。それは、マサイ族に代表される東アフリカの遊牧民です。現在紛争中で何かと大変な南スーダンですが、その地域からケニア~タンザニアにかけては、ヌエール族やディンカ族、マサイ族などと言った、牛を中心とした生活を送っているめっちゃくちゃ背が高い連中が居ります。彼らの主食は牛の乳に牛の血液を混ぜたものですので、ヘム鉄がたっぷりです。でも、当然の事ですが、大腸ガン以前の生活ではありますので、「だからどうした!」と言うお話ではありますけど、、、。

鶏肉に関しても、鶏肉消費量トップのイスラエルはその他の肉の消費量も多いので、これも決定的とはなりません。鶏肉消費量が多い国は中近東からパキスタン~アフガニスタンにかけてのイスラム国家が多いのですが(チキンピラフの国々です!)、いずれも高齢者人口が低いので、参考になりません。

日本と韓国との比較においても、そもそも両者の羊肉消費量が絶対的に少ないですので、比較出来ません。かろうじて鶏肉消費量において日本が韓国を上回り、同時に大腸ガン罹患率が低いので、ここから「鶏肉=鉄分少ない=やはり鉄分は悪者」と言う結論を導きたいと言う誘惑が生じますが、これだけでは証拠が少なすぎます。

結局、食肉中の鉄分の役割は「共犯者」程度に止めておくのが、現段階では無難かと思われます。

お焦げとガンについて-13

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主犯は?

これまで述べてきた肉と調理法と発ガン物質との関係に加え、現場に於ける状況証拠の積み重ねから、ほぼ犯人像は絞られてきたと思います。アメリカにおけるバーベキューやステーキ、デンマークやウルグアイの牛のスペアリブのグリル、そして韓国の朝鮮式焼き肉など、これらは全て「直火焼き」調理によるものです。従いまして、直火焼きによる焼き肉、特に牛肉や豚肉のそれに、疑いの眼差しが注がれます。

様々な種類の有機物の固まりであるこれらの肉を直火で加熱する事によって、肉を構成する有機物は化学反応を起こし、色々な種類の化合物を生成します。有機合成化学の実験室では色々な物質を試験管に入れてバーナーで加熱し、様々な化合物を合成する実験を行いますが、加熱する理由は、それによって合成速度を高めるためです。極端な事を言えば、肉を高熱で調理すると言う事は、将に有機合成化学の実験室で行っている様な実験を家庭の台所で再現する事、とも言えます。

高熱調理した肉中に新たに発生する有機化合物の大半は無害ですが、中には「細胞変異」を起こす様な物質も生じます。これらの高熱調理によって生じた物質の中には、これまで述べてきたヘテロサイクリックアミン(HCA) の他にも、量は少ないですが、タバコなどに検出される有名な変異原物質であるベンゾピレン なども含まれます。
試験管的実験や動物実験などでは、結果の因果関係を明らかにするために、例えばPhIP やMeIQx 、或いはベンゾピレンなど、それぞれ単独の物質に関して実験を行うのが普通ですが、実際に高熱処理した食肉を食べる場合には、これらの物質を全て混合した形のものを一緒に体内に摂取する事となります。そうしますと、これらの物質の体内における相互作用なども考慮に入れる必要が出てきます。その意味でも、実験室での実験結果をそのままヒトに適用する事は出来ません。
最近では色々な種類のHCA を混ぜて動物に与える実験も行われておりますが、これらが相乗的に働いている可能性を示唆する報告も存在します。


化学発ガンの歴史

そもそも、環境因子がヒトの発ガンに深く関わっている事が強く疑われる様になった切っ掛けは、18 世紀のロンドンの煙突掃除人の間で高頻度に見られた陰嚢ガンの事例によるものです。これは、「石炭」と言う有機物の固まりを燃やした後に発生する煤(スス)中に発ガン因子が存在し、これに煙突掃除人が高頻度に暴露した結果生じたガンです。

これが切っ掛けとなり、発ガン物質の探索が始まりました。そして大正時代、日本の山際勝三郎博士と市川厚一博士によるウサギの耳へのタールの塗布によるガンの発生成功を嚆矢とし、爾来、ナンかいきなり文語調となりましたが、多くの発ガン物質が発見されて参りました。

そして現在、石炭の煤煙中に含まれるPM2.5 やジーゼルエンジンから排出される排気ガス、植物の葉っぱを燃やしてわざわざ肺の中に入れると言う神をも恐れぬ所行である喫煙など、「複雑な組成の有機物を高熱処理する事によって発ガン性物質が生じる」事には、殆ど疑いが無いと言って良いかと思います。


素朴な疑問として、次の様な質問を想定して見たいと思います。
 
Q-1:人類は昔から火を用いて肉を料理し、食べてきた。特に直火の料理は最も原始的で、ある意味自然に近いと思う。それなのに何故、それが発ガンと結びつくのか?何かの間違いでは無いのか?

以下にその答えを羅列してみます。

A-1-1: 火を使うのは人間だけ
地球上には何万の種類の生物種があるのか知りませんが、間違い無く、火を日常生活の中で使用し、食物を加熱調理して摂取するのは、人間だけです。その意味で、火を使うこと自体が既に「自然」とは程遠い行為です。

A-1-2:発ガンは高齢化と強く結びついた現象
ガンがこれほど問題化する様になったのは、文明が発達してヒトが長寿になったからです。それ以前は、ガンになる前に死亡してしまうのが殆どでした。そう言う意味から言っても、先の18世紀のロンドンの煙突掃除人のお話は希有な例と言えますし、石炭から発生するススの発ガン性の強さを物語るものかと思います。

Q-2:エスキモーは生肉100% の生活を送っていると聞く。彼等にはガンは無いのか?」

A-2:これは分かりません。現在のエスキモーが昔と同じ様に生肉100% の食生活を送っているとは思えませんので、現在の彼等のデータは参考にはならないと思います。
少し調べてみましたが、20世紀初頭あたりのエスキモーの病気に関するデータがあるとの事でした。それによると、エスキモーにはガンは殆ど見あたらないとの事らしいです。しかしながら、そもそも基本的に「発ガンは高齢化と結びついた現象」ですので、過酷な環境下で生活し、当然短命であったはずの昔のエスキモーを対象とした発ガン率の調査結果には意味が無い、と思います。
加えて、以前にも指摘しましたが、特徴的であるとは言え、人口的に少数の集団のデータを他の集団と比較検討するのは不適当だと思いますので、仮に発ガン率が低かったとしても、「参考意見」程度にしかならないと思います。逆に発症率が顕著に高かったとしたら、これは発ガンに関する有益な情報をもたらす切っ掛けとなる可能性があります。この場合でも飽くまで「切っ掛け」であって、決定的ではありません。

Q-3:生肉を食べるべきか?

A-3:再三再四申し上げますが、ガンは高齢化と強く結びついた現象です。高齢になる前に、寄生虫でお陀仏になるのは如何なものかと思います。

Q-4:じゃ、どうすりゃエエネン!

A-4:質問者はフィンランドの方ですか?(やはりシツコイwwww)その答えは、このシリーズ最後で申し上げたいと思います。本日はこれまで!



お焦げとガンについて-12

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日本と韓国の食の比較

前々回ではworldwide に大腸ガンと食肉消費量との大雑把な比較を行い、前回は北欧四カ国間の比較を行いました。
今回は引き続きまして、日本と韓国の比較検討を行ってみます。

前回~前々回にも申し上げましたが、この主題に関して人種や文化、経済状況が大きく異なる国々の間で比較を行う場合には主題に影響する要因が多すぎますので、例え明白な差が見られても、それを decisive であると結論するには強いためらいが生じます。従いまして、なるべく近い国や民族間で比較する方が意義深いだろうとの思惑から様々な関係を探りましたところ、日本と韓国との比較は非常に有意義であるとの結論に至りました。以下、その理由を述べてみます。

1. 人種的に極めて近縁
もちろん100% 同じではありませんが、他のどこの国にもまして、好むと好まざるとに関わらずwwww 、両者が遺伝子的に最も近い間柄であるのは間違いありません。

2. 文化的にも共通項が多い
これも多くの違いがあるにも関わらず、他のどこの国にもまして、好むと好まざるとに関わらずwwww (しつこい)、両者が文化的にも最も近い間柄であるのは間違いありません。

3. 経済的にも韓国は先進国の仲間 (取りあえずwwww ← ホントしつこい
国家としてのGDP の差は未だ極めて大きいものの、一人当たりのGDP で見れば、近年の韓国の追い上げには目を見張るものがあります。一人当たりのGDP と大腸ガン罹患率の間には、worldwide な視野をもって俯瞰的に見れば、非常に強い相関がありますので、一人当たりのGDP が比較的近い国家間でこの問題に関して比較検討を行う事は、大変有意義だと思います。

4. 国の規模~人口が一定の範囲に収まっている
具体的にどれだけの規模範囲であれば比較出来るのか、ホントの事は分かりませんが、前々回の世界マップで取り上げた国々の中には、「一応国家ではあるが、小さすぎ」て比較の対象から外した国々もあります。また、国では無いけど、特徴的な食生活を送っている少数の集団、例えばエスキモーやマサイ族、ニューギニア高地人などの人々も、考察の対象から外しました。彼らに関しては、このシリーズの最後に登場してもらうかも知れませんが、、、。
以前にも指摘しましたが、大腸ガン罹患率と言うイベントは、1,000 人のヒトが70~80 歳ぐらいまで生きて初めて5 人ぐらいのヒトが罹るか罹らないか、と言う類のものです。従いまして、この問題に対してしっかりとした根拠を得るために必要な母集団の規模を考えると、あまりにも小さな国のデータを大国のデータと比較する事は危険であると思います。
逆に、余りにも規模の大きな国家、例えばアメリカや中国、インドなどの場合は、前にも指摘しました様にバラツキが非常に大きく、少数の集団の数値が平均値に大きく影響する可能性があります。そもそもインドなどにおいては統計値そのものの信頼性に疑問がありますし、中国なども、未だに政府の介入による統計値の操作がしばしば指摘されるのが現状です。また、これらの大国においては、他国と比較した場合、少数者集団自体の規模が大きく、下手をすれば小国の規模に相当~凌駕する場合すらありますので、その意味から言っても、「国」として比較するには不適当な場合も考えられます。
これらの点を考慮に入れますと、日本と韓国は規模的にも程よく、それぞれの国の内部においてもバラツキは比較的少ないと思われますので、両者比較するのに適した集団であると考えます。


このように共通項が多いにも関わらず、両者間には特徴的な違いがいくつか見られます。今度のシリーズは大腸ガンと食との関連についてお話しておりますが、「似たもの同士の間に見られる違い」に焦点を当てて比較検討して行くと、相当決定的な水準にまで到達出来るかも知れません。



まず、両国の大腸ガン罹患率を比較します。例によって、女性の比較です。

日本と韓国 大腸ガン罹患率 2012年.jpg
韓国の方が顕著に高いのが分かります。と言うか、韓国はアジアで最も大腸ガン罹患率の高い国です。因みに、男性の結果も同じです。

次に、両国間の一人当たりのGDP を比較します。

日本と韓国の一人当たりGDP 2012年.jpg
韓国の近年の追い上げにも関わらず、未だ両者には2 倍程度の差があるようです。一人当たりのGDP について言及する理由は、所得の向上は食事の内容に直結するためです。
宗教的な問題は横に置いて、一般的に、懐が豊かになると肉を食い出す傾向がありますが、これが日本と韓国にも当てはまるのであれば、日本の方が韓国より食肉の消費量が多いはずですが、さて、、、。

と言う訳で、食肉消費量を比較してみます。

日本と韓国 年間食肉消費量 2007年.jpg
おっと!意外にも韓国の方が総合の食肉量も牛肉の消費量も多いです。両方同じグラフにまとめましたので、縦軸の数値の関係上、牛肉消費量の差が小さく見えますが、単独でグラフ化するとよりはっきりします。

さらに分析を進めてみます。食肉の内訳です。まずは日本から(2007年のデータ)。

日本の消費肉内訳.jpg
豚肉と鶏肉の割合が高いです。お次は韓国。

韓国の消費肉 内訳.jpg
鶏肉の消費量が少なく、豚肉の割合が半分以上です。牛肉の割合は日本と韓国で余り変わらない様ですが、韓国の場合は全体の消費量が多いので、牛肉消費量も当然増えます。

次に、統計結果に大きな影響を与える高齢者人口の割合を見てみます。65 歳以上の割合です(2010 年)。

日本と韓国 老齢人口の割合 2010年.jpg
日本の方が2 倍以上割合が高いです。従いまして、本来的には、日本の方が罹患率が高い方が自然です。


以下、その他の特徴を箇条書きして行きます(2007年のデータ)。

1. 韓国の方が肥満者の割合が高い
これは男女ともにそうです。特に女性の場合、20 ~30 歳台の肥満者の割合は日本人の2 倍近くにも上ります。いずれにせよ、韓国の肥満者の割合は男女ともに全ての年齢層で日本人より顕著に多いです。
結局、「韓流」って・・・・・。

2. 油の消費量は日本の方が多い
肥満者の割合は韓国の方が断然高い一方で、不思議なことに油の消費量は日本の方が多いです。てんぷらとか影響しているのでしょうかね?分かりませぬ。
さらに続けていきます。

3. 炭水化物の消費量は韓国が圧倒
と言う事は、韓国人は肉もご飯も日本人よりもよく食べる、と言う事です。

4. 乳製品の消費量は日本が圧倒
牛乳やヨーグルトなどの消費量は日本が圧倒しています。と言う事は、日本人の油の高い消費量の幾分かは牛乳由来なのでしょうか?よく分かりません。
でも面白いことに、カルシウム摂取総量は韓国の方が高めです。これはたぶん、乳製品以外のもの(海産物など)からの摂取が多いのでは?と思います。

5. 日本人は大豆製品が大好き!
食品の嗜好性(好み)で調べると、日本人は韓国人に比べて枝豆や豆腐、納豆類への好みがずいぶん強いことが分かりました。

6. 韓国人は牛肉が大好き!
これは当然予想される事ではありましたが、統計学的にも有意差をもって「牛肉好き!」だそうです。

7. トウガラシの消費量は韓国圧勝!!!
コメントするまでもありません、、、。



さて、相当に面白い結果だと思いませんか?
何かが見えてきたような気がしますが・・・・。どうでしょうか?

最後になりましたが、韓国沖の海難事故の被災者並びにご遺族の方々に心よりのお悔やみを申し上げます。




お焦げとガンについて-11

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北欧におけるフィンランドの特異性

色々な影響因子を排除するために、前回は日本人に限定して時系列的な分析を試みました。
今回は、人種的~文化的に比較的似ている国々の大腸ガン罹患率と食の傾向を比較検討してみたいと思います。まず初めに、北欧諸国を比較してみます。

北欧四カ国と呼ばれるデンマーク、ノルウエー、スエーデン、フィンランドは日本人にとってはナカナカ区別しがたいカンジですが、そんなこと言ったら現地のヒトには怒られると思います。でも、国旗もみんな同じようなカンジですから仕方ない気もします、、、。

人種的~文化的に比較的似ていると言いましたが、もちろん実際は異なります。特にフィンランド人は元々はアジア由来の民族ですので、言葉なども他の三国とは系統的に全く異なります。ヒトの名前などもケッコネンとかピッコネンとかナンヤネン?とか言うのが特徴的ですね!冬のオリンピックでおなじみです。事によると人種的~遺伝的にも他の三国の国民とは幾分異なる面があるのかも知れませんが、現代では相当に混血も進んでいると思いますし、地理的~文化的~歴史的にも北欧四カ国は他のヨーロッパの地域とは別途にくくることが出来ると思いますので、これらの四カ国中での相互比較もあながち不当と言う訳では無かろう、と考えてます。

下の図は、北欧四カ国の女性の大腸ガン罹患率を比較したものです。

北欧女性の大腸ガン罹患率 2012.jpg
フィンランドが顕著に低い事が分かります。日本人よりも少ないです。この事実を頭の片隅に入れておいて下さい。

次の図は、北欧四カ国の食肉消費量の比較です。

北欧の食肉消費量の比較 2007.jpg
ノルウエーが一番少ない!ナンか理由がありそうですね!一方でフィンランドの食肉消費量もデンマークやスエーデンに比べれば少ないですけど、顕著に低いと言うカンジではありません。

次の図は、牛乳の消費量を比較したものです。

北欧の牛乳消費量の比較 2007.jpg
おおっと!これははっきりしていますね!!!牛乳って、最近は悪く言われがちですが、結局、良いのか悪いのか分からんですね!少なくともこの結果は、何かを強く訴えている様に思われます。

最後に動物性脂肪の摂取量を比較してみます。

北欧の動物性脂肪摂取量比較 2007.jpg
こ、これも顕著な傾向が出てますね!
こうなると寧ろ、「何故ノルウエーは大腸ガンが多いの?」と言う方に興味が湧いてきますね!
また一方で、フィンランドの動物性脂肪の摂取量が四カ国の中で最も少ないと言う事実も、なんだか不思議です。


さて、色々な考察が出来ると思います。

まず、「牛乳って動物性脂肪が豊富に含まれているはずなのに、何故牛乳消費量が多いフィンランドで動物性脂肪の摂取量が少ないの?」という疑問が挙げられます。これは、「牛乳は液体なので、同じ重量で比較した場合、肉よりも脂肪の量は圧倒的に少ないからさ!」と言う答えでOK です。

次に、「結局牛乳は良いのか悪いのか?」と言う事ですけど、少なくとも大腸ガンに限って言えば、フィンランドのデータは積極的に摂るべき事を示唆していると思われます。牛乳の何がよい?と言う事ですが、これはカルシウムの存在が指摘されます。カルシウムの摂取に加え、ここは北欧という要因を加味すると、日光の恵みに乏しい点も指摘されなくてはなりません。即ち、ビタミンD と大腸ガンとの関係についても考える必要が出てくる訳です。カルシウム~日光~ビタミンD ~大腸ガンの問題に関しては、このシリーズの最後で少し議論する予定です。

次は、「デンマークの異常な動物性脂肪の摂取量って、どういう事?」と言う疑問です。先のフィンランドの牛乳摂取量とデンマークの動物性脂肪摂取量に関する疑問は、恐らく、この両者の料理を比較する事で解決されるかも知れません。

で、デンマーク料理とフィンランド料理をネットでググってみましたら、なるほど!と言う結論となりました。画像をお見せしたいのですが、このブログのテーマの流れの中でデンマーク料理のレストランからパクッた写真を載せたら「営業妨害だ!」とか言われて袋だたきにされそうですので、どうぞご自分でググッてみて下さい。

でも、「どちらを食べたい?」と聞かれたら、「デンマーク・・・。」と答えてしまうであろう自分が情けないです・・・・・。

さて、「ノルウエーはどうした?」と言う件ですが、これは確定的では無いのですけど、ノルウエー料理には魚の天日干しや燻製が多いとのことです。また、トナカイなどの野生動物の肉を燻製にした料理も多いそうです。そうなると、燻製が怪しい、と言う事になります。燻製肉に関しては、このシリーズの最後に議論してみる予定です。

最後にスエーデン。
「ノルウエーとデンマークとフィンランドを足して3 で割った様なトコロです。」 はい、オシマイ!

こうやって比べてみますと、北欧四カ国と言えどもそれぞれ個性に富んでいる事が分かって来ました。北欧の皆さん、どうもすいませんでした。フィンランドのDQN のあんちゃん、どうぞ「ナンヤネン?」などと言って絡まんといてください・・・。

次回は日本と韓国を比較します。結構面白くなるかもよ!!!



お焦げとガンについて-10

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日本人の大腸ガンと食肉消費の推移

世界マップを俯瞰した場合、GDP や人種差など、色々な要因が絡んでややこしくなりますので、今度は日本人に限って見ていきます。

初めに、ハワイの日系移民と発ガンを調べた非常に有名なデータを示します。

胃ガン死亡者数.jpg
上のデータは1970年のものですので古いのですが、古いが故にコントラストがはっきりと出ている分かりやすいデータです。胃ガンの死亡者数で見ています。この図では、移民の一世においてすら、環境の変化によって発ガン傾向が大きく変化する事が見て取れます。

大腸ガン死亡率.jpg
上の図は、大腸ガンの死亡率で見ています。胃ガンとは正反対の傾向となっている事が分かります。このデータから、食の変化が発ガンに大きく影響する事が世間的にも認知される様になりました。


この後、日系二世~三世ともなると殆ど白人と変わらなくなる、或いはより酷くなる、と言う様な調査結果も報告される様になりました。
この様な結果から、欧米食が大腸ガンの発生に大きな影響を及ぼす可能性が指摘される様になりましたので、では、具体的に欧米のどの様な食材が影響するのか、と言う疑問が生じて来ました。常識的にも欧米食と日本食との違いは食肉量にあると考えられましたので、程なくして食肉中の発ガン物質の研究が開始され、ヘテロサイクリックアミンが注目される様になった、と言う訳です。



と言う事で、日本人の食肉と大腸ガンの関係のお話を致します。
下の図は、年代別に分けた日本人男女の大腸ガン罹患率の推移を表したグラフです。
日本 大腸ガン罹患率の時間的推移 男女.jpg
時代が下るにつれて、男女ともに患者数が増えているのが分かります。また、年齢別に分けられていますので、高齢人口の割合が増えた事による影響は排除されるデータです。
1975年から1995年までは急激な増加が見られますが、1995年から2000年の増加速度は低下しています。

次に、日本人の食肉消費量の推移を表したグラフを見てみます。

日本人の食肉消費量の推移.jpg
1980年から1995年頃までは、日本人の食肉の消費量は右肩上がりです。けれどもそれ以降は横ばい傾向が続いています。特に牛肉で顕著で、むしろ2000年から2005年にかけては落ち込みすら見られます。一方で、より安価な鶏肉の消費はコンスタントにジリジリと伸びています。恐らくたぶん、バブルの破裂以降の日本経済の低迷を反映する結果かと思われます。

ホントはもっと古い時代からのデータが欲しかったのですけど、見つけることが出来ませんでしたので、これでガマンして下さい。

発ガンは高齢と結びついていますので、上のグラフの推移がそのまま横軸の時代における大腸ガンの罹患率に反映される訳ではありません。
但し、先の罹患率のデータでは、1995年から2000年の増加率に頭打ちの傾向が見られていますので、仮に食肉と大腸発ガンとの間に関連があるとするならば、今後暫くはバブルの破裂の影響が大腸ガン罹患率の横ばい結果として継続的に見られるかも知れません。

安倍政権となってからアベノミクスによってインフレ誘導策が取られていますが、もしもこれが上手く行って日本がデフレから脱却し、再び繁栄を謳歌する様になれば、再び牛肉の消費量も増加する可能性は大いにあります。そうなりますと、その後の大腸ガンの罹患率がどの様な変化を見せるか、不謹慎かも知れませぬが、興味しんしんではあります。

ま、アベノミクスが成功したら、のお話ではありますが、、、。
がんばってね、アベチャン!応援してるからネ!


お焦げとガンについて-9

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さて、どうでしょうか?
分かったような、分からないような、と言うカンジではないでしょうか?
ありそでなさそで、、、。

もう少し議論を詰めてみたいと思います。

食肉と大腸ガン罹患率との関係に影響を及ぼす因子

大雑把に見ると、食肉の消費量と大腸ガンの間には何らかの相関がありそうな雰囲気は濃厚なのですが、素直にデータを読むと、おかしな点がいくつも見つかります。
例えば、1970年代のデータではアメリカの食肉消費量と大腸ガンの相関は明白ですが、2012年の統計では、食肉消費量は相変わらず1位であるにも関わらず、大腸ガン罹患率は日本よりも低いなど、実に意外な点が目に付きます。

肉の種類で見ると、ウルグアイは牛肉の消費量が世界でもトップクラスを毎年維持してますし、南米諸国の間では大腸ガン罹患率も最大ですので、その点よく相関している様に思えます。ところが、隣国のアルゼンチンやブラジルもまた、ウルグアイと牛肉消費量の世界1~2 位を毎年争うほどに牛肉を良く食べる国です。けれども両国とも、欧州や豪州の国々に比べ、大腸ガン罹患率はそれほど高くありません。

アジアに目を向ければ、日本や韓国の食肉消費量は欧州~北米~豪州諸国のそれと比べて顕著に少ないですが、大腸ガン罹患率は遜色ありません。モンゴルは食肉消費量は日本や韓国よりも多いのですが、大腸ガン罹患率は圧倒的に低いです。

どう見ても食肉消費量だけでは説明出来ないのは明らかですので、個人的に考えた「大腸ガン罹患率に影響を及ぼす因子」を以下に列挙し、考察を加えてみたいと思います。

1. 人種の差?
日本人は糖尿病に罹りやすい、と言う事実があります。アメリカ人にはトンデモタイプの太ったヒトが多いですが、日本人でしたらああなる前に糖尿病の診断が下されてしまうかと思われます。ホントの事は分かっていないのですが、説得力のある説として、「数万年にわたって低栄養の環境下で暮らしてきた日本人は、その様な環境で生き抜くために遺伝的適応を遂げた結果、欧米人と比べて相対的に少量のエネルギー摂取でも、糖尿病を引き起こす様な体質となっている可能性がある」と言うのがあります。この説が正しいとするならば、少なくとも仏教伝来以降、1,000年以上の長きにわたって肉食に乏しかった日本人ですので、戦後のわずか数十年間の急激な食生活の変化が発ガンに及ぼす影響が欧米人よりも高い可能性は、十分にあると思います。

2. 高齢人口の差?
ガンは基本的に高齢者の病気ですので、高齢人口が全人口に占める割合が高くなれば、必然的にガン罹患率は高まります。先の大腸ガン罹患率マップに基づくデータは人口10万人当たりの大腸ガン罹患率に過ぎず、高齢者限定のデータではありませんので、日本などの高齢化が進んだ国の数値が高めになる可能性は十分にあります。但し、モンゴルやエジプトは別として、グラフ上位の国々のどれもがいわゆる先進国で、お互いそれほど高齢人口の割合に大きな差があるとも思えませんので、大した補正は期待されない気もします。

3. 大国のデータは、あまりあてには出来ない?
アメリカや中国、ロシアやブラジルなど、人口が多く、様々な階層が混じり合っている様な国は、一般的に貧富の差がもの凄く、ごく一部の人々の数値が他の大多数の人々の数値に大きな影響を与えている可能性があります。
例えば日本などでも、「ええ~~っ!日本人の平均収入って、こんなに高いの???」とか思った事のあるヒトもいるかと思います。このからくりは、一部の大金持ちの数値が平均値を押し上げるためです。従って、中央値というのですが、「一番人数が多い収入」で見たときには「ううむ、納得、、、」となる訳です。
ウルグアイなどは比較的小さな国ですが、お隣のアルゼンチンやブラジルは大国ですので、この点が牛肉消費量と大腸ガン罹患率の間に何らかのギャップをもたらしている可能性は大いにあるかも知れません。
また、アメリカの様に、移民の流入が多く、文化的変化が比較的急激に生じる様な国では、これらの要因が罹患率の変化に大きく影響する可能性があります。具体的に言えば、アメリカ中西部においてはメキシコからの移民が多く、ヒスパニック系住民が過半を占める地域も数多い訳ですが、マップを見れば分かるように、メキシコの大腸ガン罹患率は小さいので、これらの移民の流入が近年のアメリカの大腸ガン罹患率の低下に影響を及ぼしている可能性は、決してゼロではありません。この先議論する予定ですが、移民の第一世代と二世~三世の間においては様々な指標に違いが出てくる例が多いので、将来においては、アメリカの様な移民数が多い国のデータが大きく変化する可能性は、十分にある様な気がします。

4. 調理法の差?
HCA は焦げ目が付くほど高熱で調理した場合に発生する事を指摘しました。従いまして、仮に食肉消費量が高くとも、例えばシチュー、例えば煮込み、例えばシャブシャブ、例えばタタキ、で食べれば、大腸ガンは少なくなるかも知れません。けれども、上記の国々の中でシチューや煮込み、シャブシャブやタタキがメインディッシュの国って、、、たぶん無いと思います。従いまして、このセンは薄いかと思います。
その他にエスキモーの例があります。エスキモーに関しては、このシリーズの最後の方で少し議論する予定です。

5. その他の食材による影響?
これは大いにあるのでは?と考えています。一応データは女性のみを抽出してグラフ化しましたが、それでもタバコや飲酒、動物性脂肪、乳製品、香辛料などの影響は否定出来ません。また、大腸ガンに対して抑制的な効果を及ぼす食材の摂取や生活習慣なども、大いに影響している可能性があります。この点に関しては、特にフィンランドやモンゴル、或いは韓国の例をとり、より詳しく突っ込んで見たいと思います。

6. 医療技術の差?
データはわざわざ罹患率で示しました。死亡率で示さなかった理由は、死亡率の場合は医療技術の差が大きく影響する可能性があるためです。しかしながら、罹患率の場合は、検査技術の差が生じる可能性は大いにあると思います。検査技術や、或いは健康保険制度などの制度上の仕組みにより、A 国よりもB 国のヒト達の方が多くガンが検出されがち、と言うバイアスは否定出来ません。

7. 予防法の啓蒙が浸透?
これも可能性無しとは言えません。特にアメリカでの大腸ガン罹患率の減少には、これが大きく関わっている可能性があります。この点に関しては、後々より詳しく考察してみたいと思います。

では、本日はこんなカンジで、、、。 


お焦げとガンについて-8

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そう言う訳で、動物実験ではdecisive = 決定的 な結果は得られません。もちろん、ヒトにヘテロサイクリックアミン(HCA) を投与して調べる訳にも行きません。そこで、疫学的なアプローチからこの問題を俯瞰(ふかん)してみたいと思います。テーマは、「食肉~HCA~大腸ガン」です。

世界の食肉消費量と大腸ガンの罹患率

初めの図は、横軸に肉の消費量、縦軸に大腸ガン罹患率を表して、国別の相関を調べた有名なグラフです。但し、数十年前のものですので(たぶん、1970年代だったと記憶)、現在は色々変化している所も多いです。でも、基本的趨勢は現在でも似たようなものです。

Cancer_and_diet_from_NIH.jpg
この時代は日本人の大腸ガン罹患率はずいぶんと低いものでした。同時に、食肉消費量も低かった事が見て取れると思います。

最新の世界の大腸ガン罹患率マップを見てみます(2012年)。女性のみを俯瞰します。女性のみを見る理由は、女性の方がタバコやお酒の消費量が少ないために、より鋭敏に食肉と大腸ガンの関係が見て取れるためです。


大腸ガンマップ 女性.jpg
ちょっと見づらいかも知れませんが、青色が濃いほど罹患率が高い事を表しています。北米~北欧~西欧~南欧~オセアニア~日本と韓国~南米ウルグアイなどが色が濃い事が分かります。他には、シンガポール、イスラエルなどが色の濃い国です。ザッと見て、一人当たりのGDP が高い国々、いわゆる先進諸国に多い事が分かります。

一人当たりのGDP が高くなると、日々の食肉量が顕著に増えます。人間の自然な趨勢かと思います。と同時に、大腸ガンも増えてきます。従いまして、これを持って「食肉が大腸ガンの原因だ!」と単純に決定したくもなりますが、一人当たりのGDP が増えてくる=国も豊かになってくる、と、それ以外にも様々な要因が同時に介入して来ますので、そうは問屋が卸さない、と言うカンジになってきます。
詳しくは後ほど議論しますが、そう言うわけで、ここでは先進諸国に限定して食肉と大腸ガンの関係について考えて行きたいと思います。

下の図は、上のデータから、大腸ガンの罹患率上位の国々20カ国=先進諸国、の女性の大腸ガン罹患率データを抜粋し、高いものから順番に並べた図です。これに加えて、先進国とは言えないけれど、特徴的なパターンを示す2 カ国、モンゴルとエジプト、を加えたものです。
モンゴルは典型的な遊牧民の国で、食事内容も、食肉と乳製品が多い国です。
エジプトはイスラム教徒が多い中近東の中核国家で、食肉量や飲酒量は少ない一方、肥満人口の割合が高い国です。
両者共に、大腸ガンの割合は、先進諸国と比べ、顕著に低い事が分かります。

この先は特に、日本と韓国、ウルグアイ、フィンランド、モンゴルに注目してください。

2012年 国別大腸ガン罹患率(10万人中 女)IARC.jpg
次に、世界の国別食肉消費量の図を示します。データは2007 年のものです。但し、元データのうち、ウルグアイの数値が明らかに間違っておりましたので、個人的に訂正したものを用いています。

total meat consumption.jpg
この「食肉」の内訳は、牛肉+豚肉+羊肉+鶏肉+その他肉です。また、示されている国々は、先の大腸ガン罹患率マップ上位の国々+モンゴルと言う内訳となってます。
次にそれぞれの肉の消費量を比較してみます。
常識的なセンの国々が並んでいます。多くの場合、韓国は日本よりも消費量が多いです。

国別牛肉消費量.jpg
牛肉に限った場合、ウルグアイが一躍トップに躍り出ました。やはり韓国は日本より多く消費します。

国別豚肉消費量.jpg
豚肉の場合は欧州勢が不動の地位。韓国は豚肉も良く食べる様です。

国別赤身肉消費量.jpg
牛肉と豚肉を足した結果です。いわゆる「赤身肉」を意味するグラフです。

国別鶏肉消費量.jpg
これは鶏肉の消費量の比較です。牛肉や豚肉との大きな違いが日本と韓国で見られます。日本人は焼き鳥が大好きな様です。

国別羊肉消費量.jpg
これは羊肉の消費量の比較です。モンゴルが一躍トップに躍り出ました。ニュージーランドやオーストラリアはここでも上位です。


お焦げとガンについて-7

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ヘテロサイクリックアミンと動物実験

ヘテロサイクリックアミン(HCA) の様な「体内で代謝を受けた後に発ガン性が生じる物質」の動物実験を行う場合、動物種の違いによって代謝酵素の働きが大きく異なる可能性があるので注意すべき、と言うお話を前回致しました。

この様な事情により、ここ最近、ヒトのCYP1A2 遺伝子を発現させたマウスを用いてHCA の実験を行う報告が見られる様になりました。具体的には、ヒトCYP1A2 遺伝子を組み込んだマウスにHCA を投与し、その後にさらにデキストラン硫酸(DSS) と呼ばれる、大腸に炎症を惹起(じゃっき=引き起こすこと)するような物質をマウスに与えて、大腸ガンの発生の有無を見る実験系です。

その結果、元々のマウスのCYP1A2 遺伝子を持ったマウスに比べ、ヒトCYP1A2 を発現したマウスは、より少量のHCA で、より短期間に、大腸ガンを発生する様になる事が分かりました。

ここで用いたHCA はPhIP と呼ばれるHCA で、これをラットに単独投与すると大腸ガンを作りますが、マウスに単独投与した場合には大腸ガンは出来ません。マウスの場合はDSS の様な炎症惹起物質を投与して始めて大腸ガンが生じます。この時DSS のみを単独投与した場合は大腸ガンは生じず、単に大腸に炎症が出来るだけです。つまり、HCA は典型的な細胞変異因子ですが、ラットは他の因子の介在が無くとも大腸ガンが発生する一方で、マウスの場合はDSS と言う補助因子の介在があって始めて大腸ガンが発生する、と言う事です。

同じネズミであってもラットとマウスの違いだけでこれだけHCA に対する反応が異なります。また、先のヒトCYP1A2 マウスと自らのCYP1A2 マウスの実験結果から、ヒトCYP1A2 の方がマウスCYP1A2 よりもPhIP を発ガン物質に変える働きが強い、と言う結論を導く事が出来ます。

HCA の動物種による感受性の違いを別のアプローチから調べた実験もあります。

一般的に、系統樹上において、ヒトから遠くなるほど様々な形質~性質も異なってくると考えられますので、ネズミを用いた実験よりも普通のサルを用いた実験の方がヒトに対する反応をより正しく表現すると考えられますし、普通のサルよりもチンパンジーやゴリラなどの類人猿を用いたものの方がさらに正確度が増すと考えられます。
類人猿は稀少動物ですし、加えてヒトにより近い動物を用いて実験を行うことはヒトの心に訴えるものがありますので、これはナカナカ行われません。

と言うので、普通のサルを用いてHCA とガンの関係を調べた実験報告があります。ネズミなどを用いた実験に比べて比較的現実的にヒトが日常的に摂取すると考えられる量に近い程度のHCA をサルに長期間投与して、様々な臓器に発生するガンとの因果関係を調べた実験です。
これまで述べてきたPhIP に対する明白な因果関係は見られなかったのですが、IQ と呼ばれるHCA に対して比較的強い因果関係が見られました。このIQ と呼ばれるHCA は、以前に紹介したエームズテストで調べると、PhIP に比べて非常に強い変異原性を発揮するHCA です。但し、焼き肉中の量はPhIP に比べて少ないです。
即ち、系統的に遠い存在であるネズミを用いた実験においては因果関係が必ずしも明らかではなくとも、サルの様な系統的に比較的近縁の動物を用いた場合にはHCA の発ガン性はより明白となる可能性があり、加えて、発ガンに関わるHCA の種類は必ずしも焼き肉中の量にのみ依存する訳ではなく、その変異原性の強さも大きく関与している可能性がある、と言う事を示唆する結果だと思います。

以下、再びネズミを用いた実験のお話に戻りますが、一般論として、まず基本的に、HCA を与えて目の前でガンの発生を統計学的に有意差をもって(スミマセン!すんごく難しいですネ!)、しかも短期間に、発生させる必要がありますので、投与量は相当程度に高める必要があります。
一方で実際には、日本人の男性が70 ~80 歳ぐらいで大腸ガンに罹患する割合は、最近の統計で10 万人当たり500 人ぐらいです。
極々単純化して言うと、1000 人のヒトが数十年生きながらえた後、漸く5 人 ぐらいに発生する大腸ガンと言うイベントにおいて、その食事と発ガンとの因果関係を調べるための実験系をネズミを用いて組む場合、どの様な青写真を設定すべきなのか、と言う事なのです。

上記の様な、基本的に「ぼや~っ」としたイベントを、そのまま「ぼや~っとした発生率」を反映する様な形での動物実験を仮に組んだとしても、その結果は当然「ぼや~っ」としたモノとなりますので、とても「評価出来る様なシロモノ」とは成りようもありません。

以上の結果から、従いまして、基本的に、動物実験には予め想定されるべきバイアスが存在し、その様な、個々の実験系に特有のバイアスの存在を無視した議論には、そもそも意味が無い、と言うべきかと思います。

次回から疫学的なお話をする予定です。では皆様、ราตรีสวัสดิ์ ラートリーサワっ!






お焦げとガンについて-6

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ヘテロサイクリックアミンの変異原性のメカニズム

ヘテロサイクリックアミン(HCA)は、そのままではDNA に対して悪さをする事はありません。
HCA が生体内に取り込まれた後、肝臓などの組織において代謝酵素によって代謝を受け、その結果、変異原性を有する物質に変化します。
変異原性を獲得したHCA は標的臓器の細胞のDNA に取り付き、複合体を形成します。
この様なDNA に取り付いたモノを 「DNA 付加体、DNA adducts」と呼びます。付加体はDNA に対して「共有結合」で結合しますので、その結合力は強く、振りほどく事は困難です。で、この様な邪魔者がくっついたDNA が複製する時、これが酷く邪魔になります。それでも細胞は複製しなくてはなりませんので、無理にでも複製しようとする結果、複製ミスが生じがちとなる訳です。

HCA を変異原に転換する酵素は、シトクロームP450 と呼ばれる有名な酵素です。シトクロームP450 は、通常、体の中に取り込まれた毒素を解毒する時に活躍する酵素で、別名「解毒酵素」と呼ばれます。アルコールを解毒する際にも活躍する酵素の一つです。通常、CYP と表現します。

で、CYP にはアイソザイムと呼ばれるたくさんの種類があり、それぞれの基質、すなわち代謝すべき相手が異なります。一般的に酵素は基質に対して1:1 に対応する関係がありますが、これは酵素によって異なり、比較的多くの種類の基質に対応するタイプのものもあります。「浮気者」と言う事です。
CYP はどちらかと言えば比較的に「基質特異性」が高く、そのために、アイソザイムの種類が多いと思われます。低いため、多くの基質に対応できると考えられています(以上、訂正いたしました)。

CYP は基質の種類と遺伝子の塩基配列の相同性に従っていくつかのグループに分けることが出来ます。HCA に対応するCYP は、CYP1A2 と呼ばれるタイプのCYP です。
この様にいくつかのグループに分類されたCYP 種は、基本的に基質の種類と遺伝子の相同性がある程度共通している事を手がかりとして分類されたものですので、とりあえずCYP1A2 と呼ばれる酵素は、どの生物に由来するものでも、多かれ少なかれHCA を変異原物質に代謝する事が、理論的に、出来ると思われます。

けれども実際は生物の種類によってDNA 配列は異なりますので、例えば同じマウスであっても系統が異なれば、同じCYP1A2 に分類されていても、微妙に性質が異なる可能性は十分に考えられます。

恐らく、恐らくなんですけれど、これが一つの原因となって、HCA の動物実験が混沌とした結果をもたらしているのかと思われます。

エームズテストでは、HCA を活性のあるHCA=変異原に転換するために、ラットの肝臓のCYP1A2 を用います。具体的にはCYP1A2 を有している「粗」な肝臓のホモジネート(すりつぶし)の上澄み液を用います。これでHCA は確かに変異原に転換されますので、その後にエームズテストを行うと、立派にrevertant が生じます。

しかしながら、「では」と言って、HCA をそのままネズミに投与しても、思うような結果が得られません。

まず、ラットとマウスで結果が異なってきますし、同じマウスでも系統が僅かに異なれば、全く異なった結果を返してきます。ラットで大腸ガンを形成するHCA はマウスでは全く反応しませんし、A と言うマウスの系統では全然反応しないHCA がB 系統のマウスでは肝臓ガンを作ったり、C では血管種を形成したり、とバラバラです。

この様なバラバラな反応の原因にはCYP 以外のメカニズムも当然働いているのは間違い無いと思われますが、同じネズミであってもラットとマウスで大きく異なり、また、同じマウスであってもわずかな系統の違いによってこれだけ反応に違いがありますと、ネズミの結果は当てにはならない、と言いたくもなります、、、。


ナンか、相当難しいお話になってしまいました、、、。すみませぬ***。でも、しばらくこの類のお話が続く可能性があります。もう暫くの辛抱です!


お焦げとガンについて-5

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肉や魚を焦げ目が出来るほど高熱で調理した時に出来る発ガン物質とは?

前回で述べた肉や魚を高熱で調理した時に生じる発ガン物質は、ヘテロサイクリックアミン(heterocyclic amine) と呼ばれる一群の化合物です。日本語では「複素環式アミン」と呼びます。今後は略してHCA と表記します。以下の様な種類が代表的です。
HCA 種類.jpg
構造によって幾つかのグループに分ける事が出来ますが、高熱調理した食肉中で比較的検出量が多く、かつ発ガンに関連すると目されているものに限ってお話していきます。

HCA は「焦げ目が出来るほどに高熱で調理した肉や魚の中に、極々微量に生成する」物質です。従いまして、生肉生魚は当然ですが、煮物や軽く炒める程度の調理法で処理したものからは殆ど検出されません。
食肉~魚肉の種類とHCA の種類との間には、「関連がある」と言う文献と、「あまり関連はない」、と言う文献とがあり、曖昧です。ここでは「関連がある」と言う文献を紹介します。
HCA 肉の種類.jpg
この文献では、牛肉や豚肉、いわゆる「赤身肉」と呼ばれる肉を高温調理した場合にはMeIQx と呼ばれるHCA が多く生じ、鶏肉を同様に調理した時にはPhIP と呼ばれるHCA が多く生じる、と言う結果が示されています。
また、上の図と下の図の縦軸に注意して下さい。下の図の目盛りが大体5倍ぐらいになっています。つまり、一般的に、PhIP が量的に最も多く食肉中に検出される事を示しています。 

むしろ、「焼き魚にこそ多くのHCA が生成する」言う報告もありますが、仮にそれが正しいとしても、焼き肉に比べて焼き魚の消費量は世界的に見ても明らかに少数派に属します。また、焼き肉消費による発ガンのお話は、大腸ガンに関連する報告が数多いので、話をなるべく簡単にするために、以降は「焼き肉~HCA~大腸ガン 」の三題噺に限定してお話して行きたいと思います。


加熱の程度とHCA の生成量を示した文献は数多いですが、その内の一つを紹介します。

HCA 加熱.jpg
各グラフは、使用した肉の種類と調理法ごとの結果です。縦軸にRevertants と言う言葉がありますが、これは前回お話したエームズテストの結果、寒天培地上に生じたネズミチフス菌の集落の数を意味します。横軸は加熱温度です。調理後に調理肉からHCA を抽出し、エームズテストで実験した、と言う事です。ここから、「加熱温度が高くなるのに比例して、変異を起こしたネズミチフス菌が増えた」と言うことが分かると思います。

高熱調理した食肉中から最も多く検出されるHCA がPhIP である事から、PhIP こそが食肉による発ガンの原因物質だ、と断定したくなりますが、話はそんな簡単なものではありません。
エームズテストで調べると、PhIP の変異原としての能力はMeIQx などに比べて圧倒的に弱く、大体1,000 倍くらい違います。二番目の図では、牛肉や豚肉にはMeIQx が多く、鶏肉にはPhIP が多いと示されています。これがホントに正しいとするならば、エームズテストの結果に基づいて述べる限りにおいて、鶏肉をたくさん食べるよりも牛肉を少量食べる方がHCA による発ガン効果が高くなる、と言う事を意味することになります。

ま、これもまた「仮定に仮定を重ねた上でのお話」ではありますので、本当の所はもちろん分かりません。少なくともそのような議論は出来る、とでも考えておいて下さい。

次回はHCA がどの様なメカニズムで変異原として働くのか、と言うお話を致します。

お焦げとガンについて-4

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「お焦げを食べてはいけない」の意味

いよいよここから本論に入ります。
まず、「お焦げを食べてはいけない!」と言う言葉の意味を、多くの人が字句通りにとらえてしまっているのではないのか?と言う疑問を挙げます。

普通お焦げと言ったら、昔、お釜でご飯を炊いていた頃、お釜の底に出来てきた、あの美味しい部分を思い浮かべますよね?あれでしたらいくらでも食べてください。ガンになんか成りませんから。と言うか、現代のご家庭の殆どは電子炊飯器でご飯を炊くと思いますので(センセなんぞはパックのご飯をパックパック食べてます)、食べたいと思ってもナカナカお焦げを食べられないのが現状かと思います。

ここで言うお焦げと言うのは、肉や魚のお焦げのことです。それも「お焦げ」そのものと言うよりも寧ろ、「焦げ目がつく程の高熱で調理した肉や魚の長期的な過剰摂取は発ガンに繋がる可能性が高いので、注意が必要です!」と言う事を言っているのです!!!

これは昔、日本の国立癌研のグループが、エームズテスト(Ames test) と呼ばれる実験系を用いて食品や化学薬品の変異原性(細胞遺伝子の複製ミスを誘発する性質)を調べた結果、肉や魚の焦げの部分に強力な変異原性を有する物質を見つけた事から、一躍世界的な注目を浴びるようになりました。

エームズテストと言うのはネズミチフス菌(Salmonella typhimurium) の遺伝子を改変し、ある種のアミノ酸(ヒスチジン)合成能を失わせた菌株を用いて行う実験系で、この系を用いて現在でも多くの実験が行われています。以下に簡単にメカニズムを説明致します。


遺伝子を改変したネズミチフス菌の培養液に変異原物質を加え、短時間培養します。
すると、変異原物質は菌に取り込まれた後、菌のDNAに変化をもたらします。
その結果、菌は変異を起こし、色々な形質的変化が生じます。
そのうちの一つに、ヒスチジン合成能力を取り戻す、と言う変化も生じます。
この様なネズミチフス菌を、ヒスチジンが殆ど含まれていない(わずかには含まれている)寒天培地に
接種します。
すると、ヒスチジン合成能力を取り戻したネズミチフス菌は、寒天培地上に集落を形成します。
そうでない菌は、集落を形成しません。
集落の数は変異原物質の変異原性の程度に比例しますので、これを数え、
当該物質の変異原性の指標とします。


先の「ガン概論:その3」で、「ある種の化学物質には、直接的に変異物質として働くものと、代謝を受けて変異物質に変わるもの」の二種類があると書きましたが、体内で代謝を受けて変異原物質に変わる化合物をエームズテストで試験する場合は、化合物に代謝酵素を反応させて変異原物質に変化させる必要があります。
肉や魚の焦げの部分に含まれる物質は、体内で代謝を受けて始めて変異原物質に変化するタイプの物質です。この「代謝酵素によって代謝を受けた結果、発ガン性を有する様になる」と言う点は非常に重要な点で、ネズミを用いた実験結果を単純にヒトに当てはめてはいけない事を強く示唆する点です。

次回は、この物質についてお話致します。それでは皆様、Buenas Noches! 

お焦げとガンについて-3

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ガン概説:その3

色々な発ガン因子に対して、自分の言葉で分類してみました。

1. 細胞変異因子
細胞変異因子は、DNAに直接的に働きかけ、損傷~改変をもたらす結果、細胞が変異(mutation) を引き起こし、その後のガン化に繋がる効果を及ぼす因子として定義されます。
前回述べた「イニシエーター」の殆どがこれに含まれます。
具体的には、以下の様なものがあげられます。

  活性酸素
  電磁波(ガンマ線、X線、紫外線)
  その他放射線(ベータ線、アルファ線、中性子線)
  ある種の化学物質(抗ガン剤を含む)
  ある種のウイルス

  このうち「ある種の化学物質」には以下の様なものがあります。

  A:直接的に体内で変異因子として働くもの:MNNG(methylnitronitrosoguanidine)、
                             4NQO(4-Nitroquinoline 1-oxide)など
  B:体内で代謝された後に変異因子に変わるもの:HCA(heterocyclicamine)、
                                  アフラトキシン、
                                  タバコのベンツピレン、
                                  抗ガン剤のシクロホスファミドなど
  
子宮頸ガンの原因ウイルスであるヒトパピロマウイルスの様なウイルスは、ヒトのDNAに自らの遺伝子を組み込んで自分の遺伝子を発現させる結果、細胞の変異を引き起こします。

2. 体内の恒常性システムを攪乱する事でガン化を誘発する因子
細胞分裂制御システムを攪乱する事で細胞分裂の速度や程度を拡大したり、感染などによって慢性炎症を引き起こしたり、免疫系を弱体化する事によって微少ガン細胞排除システムの機能不全を起こしたり、ホルモン系を攪乱する事で当該ホルモン標的細胞の過剰増殖を引き起こしたり、物理的な長期の刺激によって慢性炎症や細胞分裂の長期化を引き起こしたり等々、生体の恒常性システムを攪乱する事でガン化を誘発するような因子も数多く見られます。従来「プロモーター」と呼ばれていたものの多くはここに含めて良いと思います。

  細胞分裂制御システムの攪乱:ピロリ菌のCagA、
                      TPA(12-O-Tetradecanoylphorbol 13-acetate)
                    長期にわたる物理的反復刺激による細胞増殖など
  免疫システムの攪乱
  A:慢性炎症:感染によるもの 肝臓ウイルスによる肝ガンなど
            感染以外のもの アスベストな
  B:細胞性免疫の弱体化 エイズウイルス感染によるヘルパーT細胞弱体化の結果                                      生じるカポジ肉腫、
                  過剰なストレス、                  
                   老齢に伴う一般的なガン発生率増加への関連など
  
  ホルモン系の攪乱:ホルモン剤の不適切な長期投与、
               ヒトの自然な成長過程への文明の介入(難しいですね!)
               牛乳や動物性脂肪の長期的過剰摂取など
  
  その他:鉄元素の過剰摂取による局所における活性酸素の発生、
       動物性脂肪の過剰摂取による全身性慢性炎症など

3. 細胞変異因子が細胞内で働きやすくするのを助ける因子
例えば粘膜面の殆どは粘液で覆われていますが、これは、体に必要なモノは取り込みたいけれど有毒なモノは排除したいと言う、体が求める二律背反のメッセージが具現化されたシステムです。従いまして、この様な粘液バリヤーを破壊する様なモノ、或いは体表面の皮膚バリヤーを犯す様なモノは、しばしば発ガンを手助けする働きをします。

アルコール:特に強いアルコールは口腔~食道の粘膜面に物理的な急性炎症を起こしますので、この部分が強い変異源に暴露されますと、そこの細胞のDNAに損傷が生じる確率が高くなります。
  
食塩:食塩の過剰摂取が胃粘膜の損傷をもたらす可能性が指摘されており、その結果、ピロリ菌の発ガン効果を促進する可能性が指摘されています。
  
熱い食品~飲み物の長期的摂取:アルコールと同様に、粘膜損傷が指摘されます。
  
細胞変異因子防御システムの欠如:白色人種の様に、体表面の皮膚のメラニン色素の欠如は紫外線による皮膚細胞DNA損傷の確率を高めますので、結果、皮膚ガンの増加に繋がります。ある種の美容品に関して、注意を喚起する必要があると思います。
また、アセトアルデヒド分解酵素(ALDH)をヘテロで有しているヒトが日本人には多いのですが、この場合、エタノールが分解されて生じるアセトアルデヒドが血中に滞留する時間が、ALDHをホモで有しているヒトに比べて長くなります。アセトアルデヒドの発ガンメカニズムは必ずしも明らかではありませんが、疫学的にはALDHと食道ガンの関係は比較的明らかと言って良いかと思いますので、これもこの項目に含めます。因みに、ALDHを持っていないヒトはそもそもお酒を全く飲めませんので、ある意味安心です。

4. ブラックボックス
ブラックボックスと言うのは、「良く分からない」事をカッコよく言っただけです。具体的には、「腸内細菌叢の役割」が挙げられます。

マウスに大腸ガン関連の遺伝子を組み込んで育てると、大腸粘膜の細胞が異常増殖して「前ガン病変=ポリプ」がたくさん出来ます。この様なマウスを生まれた時から無菌環境で育てた場合、前ガン病変は形成されますが、本格的なガンには至りません。無菌環境のマウスですから、このマウスには腸内細菌叢は存在しません。
一方で同じ様なガン遺伝子を組み込んだマウスを普通の環境で育てますと、立派な大腸ガンが形成されます。
このことから、腸内細菌が大腸ガン形成に関与しているのは確かです。
けれども、どの様な種類の菌がどの様なメカニズムで関与しているのか、未だ明確には分からないのが現状です。

また、脂肪を摂取すると、肝臓で作られた胆汁が胆嚢から消化管に放出され、脂肪をミセルと呼ばれる小さな脂肪滴にまで分解しますが、この時、胆汁に含まれる胆汁酸が大きな役割を果たします。胆嚢から分泌された胆汁酸を「一次胆汁酸」と呼びますが、一次胆汁酸の大部分は小腸下部で再吸収されて肝臓に戻り、再合成~再利用されます。この時、少量の胆汁酸は吸収されずにそのまま消化管を下り、大腸まで到達します。大腸に到達した胆汁酸は腸内細菌によって代謝を受け、毒性を持つ胆汁酸に変化します。この様な胆汁酸を「二次胆汁酸」と呼びます。

二次胆汁酸が発ガンプロモーター作用を有している事は以前より知られており、これが「脂肪の過剰接種は発ガンに繋がる」と言われて来た事の説明の一つでしたが、最近、二次胆汁酸が肝臓のある種の細胞を刺激し、その細胞が炎症性サイトカインや細胞老化関連分泌因子を放出する結果、肝ガン発症リスクを高める、と言う報告がありました。この場合は肝臓ガンですので、先の大腸ガンのお話とは関係が無いかも知れませんが、少なくとも腸内細菌叢が発ガンに関わっている事の最新の証拠の一つではあります。

とはいえ腸内細菌叢の発ガンへの関わりの解明は極めて困難で、現段階ではブラックボックスとしておくのが無難かと思います。

本日はここまで。一応この程度に前知識を保持してくだされば、今後の議論も理解出来るかと思います。 ガン遺伝子やガン抑制遺伝子、或いは伝達系やDNA修復機構などに関してお話すると煩雑過ぎる結果となるのが見え見えでしたので、省略致しました。それでも、結構しんどい作業となりましたが・・・・・・。
                         
  
                    

お焦げとガンについて-2

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ガン概論:その2

ここでは発ガン誘発因子(イニシエーター)と発ガン促進因子(プロモーター)のお話を致します。

ガンは細胞の遺伝子が変異を起こすことによって生じる病ですが、この遺伝子の変異を直接的にもたらすものを発ガン誘発因子と呼びます。前回の例で挙げたカビ毒のアフラトキシンや、体内で発生する活性酸素などが誘発因子の代表です。発ガン促進因子とは、これらの誘発因子によって変異を起こした細胞がその後に増殖を繰り返して最終的にガン細胞となる過程を促進したり、或いは誘発因子が細胞遺伝子に働きかける過程を手助けする様な因子の事です。細胞がガン化するためには、多くの場合、この両者が必要となります。

アフラトキシンや活性酸素、或いは放射線や紫外線などは比較的分かりやすい発ガン誘発因子ですが、アスベストやピロリ菌などの発ガンメカニズムは複雑で、これらを上記二分類に組み込むのは困難です。アスベストは免疫系を誘導する事によって局部の炎症を引き起こし、これが長期化する事でガン化につながる訳ですが、この場合、アスベストそのものは遺伝子変異とは無関係ですので、これをイニシエーターと呼ぶことは出来ません。同じようにピロリ菌も直接的に胃粘膜細胞の遺伝子に損傷を与える訳ではありませんので、これもイニシエーターではありません。前者は、免疫細胞が局所で放出する活性酸素や、或いはアスベストに付随した鉄元素による触媒機構によって生じた活性酸素によって局所細胞がガン化すると考えられておりますし、後者はピロリ菌が産生するCagA タンパクによって細胞内伝達系が攪乱(かくらん)され、細胞の異常増殖をもたらす結果、ガン化につながると考えられています。従って両者ともに、厳密には先に定義したプロモーターに分類されるべきものであると思われますが、CagA タンパクをプロモーターと呼ぶのは自然である一方で、ピロリ菌そのものやアスベストそのものをプロモーターと呼ぶのには相当な違和感があります。

即ち、前回で紹介した様に、ガン化の内部要因において、細胞増殖メカニズムや免疫系の様に、生体恒常性維持のために働いているシステムそのものがガン化に対して大きな役割を果たしている可能性が指摘されますので、この先、単純に「イニシエーターとプロモーター」の様な言葉を用いてメカニズムをお話していく事は、これはナカナカ困難な仕事である様に思われます。

要するに、発ガン過程って、もんのすごく複雑ナンです。

従いまして、この先のお話を続けていくために、センセはこの様な「言葉遊び」を一旦やめ、今一度、センセの言葉で分かりやすく「発ガン要因」を分類して見ようと考えております。

ナンか、前回「なるべく分かりやすくお話していきます」などと申し上げましたが、結構難しくなってしまいました。おまけに、いつもと違って推敲に推敲を重ねて書いておりますので、平日の夜に書ける量はせいぜいこの程度。申し訳ないです・・・。

では、続きはまた近々!Good Night Baby !

 

お焦げとガンについて-1

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皆様こんばんは!ご機嫌いかがでしょうか。長野県坂城町も日一日と暖かくなりつつある日々ですが、桜は未だつぼみのまま・・・。たぶん、今週末には開き始めるかな?と言うカンジの今日この頃です。

さて、近頃はお医者さんなどが何名か揃って、バラエティー形式で、居並ぶタレントを相手に、病気や健康について語る番組が増えております。余りTV は見ないセンセですが、先日は「ガン予防」のテーマでこの手の番組が紹介されておりましたので、これはセンセの研究テーマの一つでもあり、とりあえず覗いてみました。ま、大方は無難な事を述べておりましたし、「大豆」であるべき絵が「小豆」であったのは単なるご愛敬なのかも知れませぬが、ただ一点、「お焦げを毎日茶碗一杯食べてもガンにならない!」などとトンデモハップンな事を言っておりましたので、これは捨ててはおけぬとばかりに、平日の夜にもかかわらず、このテーマについて書いてみようと思い立った訳であります。

気になってネットでちょいとばかり検索して見ましたが、TV番組と同じようにお焦げはガンと無関係であると主張するサイトが結構ありますので、これは一つ、ここで相当に突っ込んで議論してみたいと思います。

今回のシリーズは、先に述べたようにセンセの研究テーマの一つでもありますので、ちょいとばかりまじめに議論を積み重ねて行きたいと思います。なので、いつものブログの雰囲気とは少し異なるものとなるかも知れません。また、シリーズも比較的長くなるかと思いますし、一旦投稿したものをさらに推敲し、何度も書き直す事もあるかと思います。即ち、今回のTV番組は一種のチャンスでもあり、センセ自らの考えをまとめる機会でもありますので、ちょいとばかし気合いを入れて、このテーマに関して普段にも増して勉強しつつ、情報発信を行っていこうと考えています。

でも、難しい話を難しく語る事は最大限避けていくつもりです。勉強した事やテクノさかき研究室で得られた実験結果などを出来うる限り自分の頭の中で咀嚼し、十分に消化した後にお話していこうと考えて居ます。即ち、いくつかのブログで見られる様な、単なる情報の羅列は避けたいと思います。

科学は日進月歩の世界ですし、科学の先端の世界は、何が本当であるのか多くの研究者が激しい論争を行っている混沌たる場ですので、いくらセンセが勉強して此処で語ったとしても、それは所詮科学の先端に於ける「最大公約数」を羅列する結果に終わるのかも知れません。けれども、少なくともこのテーマに関しては、この様な試みが他の場で行われている所を殆ど見たことはありませんので、今回の試みがもたらす結論は十分に考慮に値するものであろうと、少なくとも現段階において、唯我独尊ではありますが、考えております。事によると、最後まで読んで納得された方々には、cancer freeのすんばらしい未来が待っている かも 知れませぬ!!!

 

ガン概論:その1

いきなり手強そうな事を言い出しましたが、やはり基本的概念を認識~共有しておかないと先々の議論が可笑しくなりますので、ここでは「分かっているヒトは分かっているけど分かっていないヒトは全く分かっていない」類の、ガンに対する基本的なお話を致します。難しい話を難しく語るのを避けるために、繰り返しになりますが、細かな専門的事柄をクドクド説明するのは避け、最大限自分の言葉で説明して行きたいと思います。物足りない方々は、どうぞガンの教科書をお読みになってください。

ガンは、何らかの原因によって体の細胞の遺伝子が変異を起こし、暴走する結果、生じる病です。この「何らかの原因」は、「内部要因」と「外部要因」の二つに大別する事が出来ます。

内部要因によるガンの代表としては、生まれながらに遺伝子にミスがあり、成長に従ってガンが顕在化するような例が挙げられます。しかしながら、遺伝子におけるミスが生まれながらにあったとしても、その後の人生での外部要因によってガン化が加速される場合も多いと思われますので、外部要因の重要性は、この場合に於いても無視出来ません。

このような極端な例でなく、普通のヒトにおいても内部要因は働きます。すなわち、細胞は分裂しますので、その際には遺伝子の複製ミスが生じる可能性があります。ヒトの体を構成する細胞の数はおよそ60兆個と言われています。その全てが分裂する訳ではありませんが、これだけの数の細胞が分裂を繰り返すとなりますと、結果として生じる複製ミスの可能性は決してゼロではありません。また、この様な細胞の複製に関与するメカニズムそのものがガン化に影響を及ぼす事となります。その意味で、「ガンは宿命の病」と言う言い方も、あながち間違いではありません。

さらに、感染症などに対応する免疫反応そのものが慢性炎症や細胞複製過程に大きな影響を及ぼしますので、この様な「免疫系」も内部要因の一つと言う事が出来ます。

外部要因によるガンとは、外部の環境因子が原因となって発生するガンの事です。これは三つに分類出来ます。一つは、「原因と結果の因果関係が明らかなもの」、二つは「因果関係が不透明なもの」、三つは「その中間」です。

因果関係が明らかな外部要因によるガンには次のようなものがあります。アスベストによる中皮腫、紫外線による皮膚ガン、カビ毒であるアフラトキシンによる肝臓ガン、ピロリ菌感染による胃ガン、放射線ヨウ素の摂取による甲状腺ガンなどです。最近、印刷工場で働いていた従業員に高率で胆管ガンが発生した事件がありましたが、印刷時に使用していたジクロロプロパンやジクロロメタンの影響が強く疑われています。これも、因果関係が比較的はっきりとした事例に含めて良いと思います。

「因果関係が明らか」と言う意味は、その原因によって限りなく100% に近い確率でガンになる、と言う意味ではありません。飽くまで「そのガンに先立つ原因として認められるものに、それがガン化に影響する確率が他の何物にも増して高い」と言う意味です。

難しいかも知れませんが、分かりやすく説明します。

今、30歳の男性が海で泳いでいて死亡したとします。この場合、車にはねられて死亡したとか、老衰で死亡したとか、産後の肥立ちが悪くて死亡したとか、と言う可能性は、相当と言おうかゼロと言おうか、排除されると思います。でも、心臓発作で死亡したのか溺れた結果水を飲んで死亡したのかを特定するのは、この段階ではナカナカ難しいかと思います。加えてこの時、「30歳の男性が海で泳いだ場合、そのヒトが溺れる確率は極めて高い」と言う事を意味する訳ではありません。「因果関係が明らか」と言うのは、その様な意味です。

因果関係が「より不透明ではあるがおおむね認められているもの」の代表例としてはタバコや飲酒が挙げられるかと思います。特に、口腔~咽頭喉頭~食道~肺にかけて発生するガンとタバコとの因果関係は、相当程度にはっきりとしていると断定して良いかと思います。

最後に「因果関係が不透明ではあるが、恐らく~たぶん、外部要因が関係していると思われる」ガンとして、普通に我々が日常的に食べている食物に由来するガンがあります。本シリーズのテーマである「お焦げ」は、ここに含まれます。

ハイ、今晩はここまで。続きは次回と言う事で・・・。

この過去記事について

このページには、喜源テクノさかき研究室2014年4月に書いた記事が含まれています。

前のアーカイブは喜源テクノさかき研究室: 2014年3月です。

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