2011年10月アーカイブ

ちょっと研究内容 その六

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続きです。

液体麹の特許に引き続き、乳酸菌培養液が高血圧低下に効果あり、と言う内容で2008年に出願した特許申請もまた、今年8月に特許確定となりました。おめでとうござりまする!!!!!!

特許証-2-2.jpg特許証:第4810483号

これまでも牛乳を原料として得られた乳酸菌の培養液中に抗高血圧機能が見いだされた例は報告されており、既に大きなメーカーから商品として発売されておりますが、テクノさかき研究室で発見した乳酸菌は、糠味噌の糠床から得られた、いわゆる「植物系乳酸菌」に属するもので、正式名称をリューコノストック・メゼンテロイデスと言うものです。舌をかみそうな名前ですね!

この菌は、ぬか床やぬか味噌漬け、その他の漬け物などから分離した百数十種類に上る乳酸菌の中からいくつかの試験を行って選ばれたものです。

どのような試験を行ったのか、ここで簡単にお知らせ致しましょう。

 

ACE試験-2.jpg

 

右の図は、百数十種類の乳酸菌の培養液の上澄みを取り、これの抗ACE活性を調べた結果です。

ACEとは、Angiotensin Converting Enzyme の略でして、話が難しくなるので簡単に申し上げますと、血圧を上昇させる酵素と考えてください。

右の図の赤い玉はリューコノストック・メゼンテロイデスとして同定された菌群から得られた大豆麹乳酸菌発酵液の上澄み液を表し、黄色のものはラクトバシラス・ファーメンタムから得られたもの、青いのはラクトコッカス・ラクチスと言う乳酸菌群から得られたものを表しています。

これらがどのぐらいACE酵素の働きを抑えるか調べたところ、図の様に、赤いものは全て良く押さえた一方で、黄色や青いものは全く押さえませんでした。従いまして、リューコノストック・メゼンテロイデスの培養液は、ACE酵素の働きを抑えて血圧上昇をブロックする可能性がある訳です。

 

図-2:ラットの血圧測定.jpg次に行った事は、それでは本当にリューコノストック・メゼンテロイデスの培養液は血圧を下げることが出来るのか、調べました。

方法は、SHRラットと言う、年を取ると自然に血圧が上昇して行くタイプのラットにこれらの培養液上澄みを飲ませ、その後にラットの血圧を測定すると言う方法で調べました。左の図がその結果です。ごらんの通り、リューコノストック・メゼンテロイデスを飲ませたラットの血圧は、統計学的にも有意な差をもって、対照(例えば蒸留水を飲ませた群;左端)に比べて低下しました。ACE活性の試験では、ラクトバシラス・ファーメンタムはACE酵素活性を阻害しませんでしたので、ここでも同様に血圧上昇を抑制しませんでした。ところが面白いことに、ACE酵素阻害試験では全く効果を示さなかったラクトコッカス・ラクチスの培養液上澄みは、リューコノストック・メゼンテロイデスと同じように、ラットの血圧上昇を阻止しました。これら乳酸菌の血圧上昇抑制の程度は、高血圧のお薬の一つであるカプトプリルよりもむしろ強いものでした。濃度が異なっているので単純比較はいけませんけど、、、。

メカニズムとしては、リューコノストック・メゼンテロイデスの場合は培養液中にジペプチド~トリペプチドと言われる物質が増加したと考えられ、これらがACE酵素に対して拮抗的に働いたと想定出来ます。一方でラクトコッカス・ラクチスの場合は他のメカニズムが考えられますが、第一候補としまして、ラクトコッカス・ラクチスがGABA(ガンマーアミノ酪酸)を産生し、これが抗高血圧に働いたのでは無かろうか、と考えています。と言うのも、ラクトコッカス・ラクチスの仲間にはGABAを産生するものが多いですし、GABAには抗高血圧機能が報告されているからです。

嬉しいことに、大豆麹乳酸菌発酵液で使われている乳酸菌の仲間には、このGABAを産生するラクトコッカス・ラクチスの仲間も含まれています。

今回のブログはなかなか内容が高度でしたね!たまには小難しいお話をしておきませんと、センセの股間に、ではなくって、沽券に拘わりますので、、、。・・・・やっぱり最後は落としてしまいました・・・・すみませぬ・・・・。

大豆麹乳酸菌発酵液に関してはもう一つ特許申請中ですので、これも確定したらご報告致しますね。乞うご期待であります。

それでは皆様、ごきげんよう!

ちょっと研究内容 その五

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みなさんおはようございます。今日は良い天気ですね!

本日は10月10日の体育の日であります。今を去ること47年前、東京オリンピックがこの日に開催されました。センセはその頃小学四年生。今日と変わらぬ雲一つ無い晴天の日でした。センセはその頃は東京都世田谷区豪徳寺に住んでおりました。豪徳寺の山門のすぐわきの家でした。どういう訳かその日は母親が不在で、お昼は豪徳寺商店街の入り口にあるおそば屋さんで五つ年上の兄と二人でおそばを食べる羽目になってしまいました。おそば屋さんにはその当時発売されたばかりのカラーテレビが置いてありまして、丁度オリンピックの入場式の最中を中継しておりました。カラーテレビと申しましても未だ性能が低いものですから、日本選手団が入場してきた時には、選手の皆さんが着ていた揃いの赤いブラザーで画面が真っ赤っかになってしまいまして、おかしさのあまり、食べかけのおそばを危うく「ブフッ!」とはき出す寸前でした。おそばを食べ終わりますと、丁度ブルーインパルスが国立競技場の真上で五輪のマークを描き出し始めました。お金を払って急いで外に出、兄と二人で渋谷方面を見上げますと、真っ青な空に見事な五輪が今将に描かれつつあるではありませんか!その後は小学生の間で「オリンピックごっこ」が大流行になったのは言うまでもありません。

さて、前置きが長くなってしまいました。本日は、重要なお知らせを致したく思います。

既に先日大井町で行われました「喜源社文化祭」でもお知らせ致しました様に、2008年に大豆麹乳酸菌発酵液に関して申請しておりました特許が2件、本年8月、確定となりました!おめでとうござりまする!!!

特許4794486号-1-2.jpg特許第4794486号

 

今回の特許第4794486号は、大豆麹乳酸菌発酵液で用いられている液体大豆麹の独自性が認められたものです。

液体大豆麹の内容に関しては、既にこのブログでも紹介しておりますが、ここで改めて簡単にご紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

 

大豆タンパクは、そのままの形では乳酸菌は利用出来ませんので、これをアミノ酸にまで分解する必要があります。そのための方法としてはいくつかあるのですが、テクノさかき研究室では始めに豆乳を作って、これに麹菌を接種し、無菌的に麹化する、と言う方法を採用しました。その結果、図-1で示しました様に、普通の固体麹に比べてアミノ酸への転換効率が非常に良くなることが分かりました。

図-1:液体大豆麹と固体大豆麹の比較  液体麹と固体麹.jpg   

また、液体大豆麹の培養に伴って、大豆タンパクがどんどん減少し、それと反比例にアミノ酸が急激に上昇してくる事も分かりました(図-2)。

アミノ酸の量が非常に増えましたので、通常の豆乳では増えない乳酸菌も、非常に良く増殖出来る様になりました。加えて、タンパクで出来ている大豆アレルゲンも、急激に分解される事も分かりました。 

 それに加えて培地の抗酸化能も急上昇する事も分かりました。抗酸化能に関しましては直近のブログ記事に比較的詳細に記載致しましたので、ご覧下さい。また、抗酸化能の続報も近日中に書く予定ですので、こちらも乞うご期待であります。

液体麹 グルタミン酸.jpg 

 図-2:大豆タンパクの減少と、アミノ酸の増加の関係。

  いずれにしましても特許が確定したと言うことは大豆麹乳酸菌発酵液の独自性が認められたと言うことですので、研究者としては誠に喜びに堪えぬ事であります。

引き続き、次の特許についてお話して行きます。

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