2010年8月アーカイブ

坂城散歩道-4

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今年の夏は、本当に暑いですね!皆さん体調崩さずに元気で過ごしていますか?それとも熱射病でひっくり返っていますか?

本日は坂城町に残る、北国街道(ほっこくかいどう)を散策して参りましたので、ご報告致します。今回から文体を変えました。「坂城散歩道」のこれまでの文体は、何か、肩こるもんで、、、。

北国街道は、昔、江戸と北陸を結ぶ街道として重要な役割を果たしておりました。日本海と内陸信濃を結ぶ物流の要(かなめ)としての役割を果たすと同時に、加賀の大大名、前田藩のお殿様が参勤交代で江戸に来る時も、この街道を利用して居りました。坂城の宿は街道沿いの宿場町の一つとして、往事はなかなかの賑わいを見せていたそうです。その当時の宿場町の雰囲気は、現在でも町中で垣間見ることが出来ますので、そのうちご紹介したいと思います。今回は、その要である北国街道をご案内致します。

現在では国道18号線に加えて高速道路、さらには新幹線まで出来て流通に不足は無いこの界隈ですが、山だらけの坂城町、当時は北国街道が唯一の外界への窓口だった訳です。基本的には国道18号線に沿って走っていますが、多くの部分が国道に吸収されて居りますので、昔ながらの街道は様々に分断され、本来の姿は途切れ途切れ、部分部分にしか見ることが出来ません。
坂城町では、中之条から南条(みなみじょう)まで、当時の面影を偲ばせる姿が残っています。それでは中之条口から歩いてみましょう。

 

文化の館 正門

文化の館 正門.jpg国道18号の中之条口の近くには、その名も「文化の館」と呼ばれる建物があります。この館は本来は個人所有のお屋敷だったそうですが、その後町に寄贈され、一般にも公開されております。とても「文化的」なお屋敷です。

「文化」の定義は、各個人で決めてくださって結構です。

 

  

中之条口の角には写真屋さんがあります。親父さんは、昔、東京の中野区で修行を積み、戻ってきてここに開店。けれどもデジカメの普及のお陰でなかなか商売も厳しい、との事でした。皆さん、時にはこのお店で写真撮影しては如何でしょうか?(ボランティア広告)

西念寺の山門

西念寺山門.jpg写真屋さんの直ぐ裏手には、なかなか立派なお寺さんがあります。名前は西念寺。境内には大きな杉の木が一本、すっと立っています。訪れたのは晩夏。山門の前の真っ赤な百日紅の花が印象的でした。

 

 

中之条口から北国街道を上田方向に向かって進みます。高速インター行きの大きな道路を横切って進んでゆくと、漸く昔ながらの街道の雰囲気が漂ってきます。所々に昔作りの家々があり、また、これらの旧家には必ずと言って良いほどお蔵が建っています。


倉のある家-1.jpg明治維新後、日本が世界と貿易を開始した頃は、生糸等の絹製品が輸出品目の筆頭でした。その絹糸産業を支えた地方の一つが長野県です。特にこの地方は地味に恵まれず、大きな平野も無いのですが、山から千曲川に向けて水捌けの良いなだらかな傾斜地を利用して桑を植え、養蚕が盛んであったと聞いています。上田には信州大学の繊維学部がありますが、これも往事盛んであった養蚕業を受け継ぐものです。何と言っても、上田紬が有名ですね!

 

倉のある家-2.jpgと言う事は、これらの蔵持ちの旧家は、恐らく、当時繁栄した養蚕業でシコタマ儲けたんじゃ無いんでしょうか?と、つい下世話な勘ぐりが出てしまうほど、雰囲気があって綺麗な旧宅が多い界隈です。
所々には、道祖神や庚申塚の類が残っています。長野はこれら道祖神が数多く残存している地方としても有名で、ここ坂城でも多く見られます。また、暴れ川として有名だった千曲川の水流調節や田畑の灌漑水路建設など、江戸時代には多くの土地改良事業がなされた様ですが、それらを記念した石塚なども随所に残っておりまして、昔の人達の苦労を忍ぶ縁(よすが)となっております。

道祖神.jpg道祖神

 終点の南条口から戻って右に折れますと、南条小学校があります。正門には立派な松の木が。松と言えばこの地方は日本有数の松茸の産地。これから秋に掛けて、松茸狩りの季節となります。

 

 

 

 

 南条小学校正門

南条小学校正門.jpg小学校の直ぐ裏手には、宇佐八幡のお社。至る所に村の鎮守様がありますね。そしてどれも大きな杉の木が、すっと一本立っています。これを見ると、ついつい口に出るのが、

♪泣けた、泣けた~、こらえ~きいれえずうにい~、泣けたっけ~、、、、ですが、、、、。私の場合は、、、、。

 

 

 産業道路を研究所に向かって帰る途中にある農家。界隈の農家には、柿の木と栗の木を植えてあるところが多く、また、これらの木の立派なこと!クルミの木も多いですね。手入れの行き届いたこぎれいな旧家が多いのですが、近年は大手不動産がアパートやらマンションやらを建てまくり、それらの悉くがナントカレジデンスやらのカタカナ言葉とそれらしい雰囲気とで折角の里山の雰囲気と伝統的町並みが台無し!何を考えているのでしょうかね?でも、当研究所もその一棟なので、あんまり文句も言えないけど、、、。

栗の木と柿の木と百日紅のある農家 農家.jpg

 

 

下左 坂城の北国街道

下右 宇佐八幡のお社                

 

北国街道-2.jpg 宇佐八幡宮の杜.jpg 

 

 

             

                        

                 

 

 

 

 

食用微生物のお話 その三

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今回は、普段中山センセが考えている食用微生物に関する「思想哲学」を開陳したいと思います。思想哲学と申し上げる所以は、この考え方が特に市民権を得ているわけでもなく、いわんや科学的に証明されているわけでもないからです。単に「独り言」と言っても良いのですが、それではセンセの股間、じゃなくって、沽券に関わりますので、敢えて「思想哲学」と書いてみました。なかなか重くて良い感じです。

さて、本筋に戻ります。

お題は、「一体何故、食用微生物の摂取は身体に良いのか?」と言う事です。

だって皆さん不思議に思いませんか?実に様々な種類の乳酸菌関連商品、酵母や麹を用いた健康食品や医薬品、さらには味噌や納豆などなど、どれもこれも身体に良いと謳われているものばかりです。そして実際にこれらは様々な疾病に効果があります。少なくとも動物実験では明らかに効果が出てきます。健康な人々がこれらを日常的に摂っていると、そうでない人々よりも様々な疾病に対して抵抗力が生じる、と言う報告も数多くあります。但し人間を用いたいわゆる疫学調査などでは、必ずしも明確な因果関係が常に証明される訳ではありません。この様な疫学調査では、その度に結果が逆転することが珍しくありませんので、個人的にはあまり重要視しておりませんけど、、、。こう言うと、疫学の先生達から怒られるから言いたくないけど、、、。でも言っちゃったけど、、、。

「衛生仮説」という説があります。

これは、牛や馬などを飼っている農家などで生まれ育った子供達はアトピーにかかりづらい、と言う経験則から生まれた仮説で、説得力があると思います。詳しく述べると、牛馬のフン中の細菌、特にグラム陰性菌、に小さなうちに暴露されることによって免疫系が刺激され、発達する結果、その後は多少の外来物質に対して過敏に反応しなくなり、その結果アトピーなどにかかりづらくなる、というものです。

センセの「思想哲学」はこれのさらに上を行く代物で、センセは自説を「人間は自分が動物であることをすっかり忘れてしまったのでは無いのか?仮説」と名付けました。ちょっと長いのが難ですけど、、。

さて、センセの「人間は自分が動物であることをすっかり忘れてしまったのでは無いのか?仮説」とは、本来あるべき姿の人間は、食物その他から、もっともっとたくさんの微生物を摂取しているはずである、と言うのがその骨子です。ペットの犬猫を除く自然界の哺乳類、例えばアフリカサバンナのシマウマは草原の草を食べていますが、その時彼らはこれらの草を流しで洗って食べるわけではありませんし、そのシマウマを追っかけて倒して食らいつくライオンは、倒したシマウマをバーベキューにしてちゃんと焼いてから食べるわけではありません。みんな自然界にあるモノを、そのまま生で食べるわけです。ライオンなどは、シマウマの内臓から食べると言われています。少し考えると分かりますが、彼らは相当量の微生物を自然に摂取しているはずです。そしてそのような生活を、数万年、数十万年、いやいやもっともっと長い期間送っているわけで、その結果彼らの身体はそのような生活に適合した作りに遺伝的になっている訳です。別の言葉で言えば、そのような彼らを動物園の様な人工的な場所に閉じ込め、人間が食べるような衛生的な食物を与えていると、何らかの変調が生じても不思議では無いと思われます。実際問題としては、そのような食物問題よりも先に、狭い場所に閉じ込められる事から来る精神的な変調が顕著に現れます。一方で当然のことではありますが、外敵や仲間からの攻撃からは保護される結果、寿命は顕著に増加する場合も多い様です。

さて、少し脱線致しましたが、現代人の場合でも、相当ライオンに近い様な食生活を送っていた人々がおります。代表的な例を一つだけあげますが、それはいわゆるイヌイット、昔言うところのエスキモーの人々です。今から数十年前の本田勝一の三部作の中にイヌイットの生活を記述した有名な本がありますが、それによれば、彼らがアザラシを狩る時などは倒した獲物をその場で解体し、脂身や内臓などをその場で食べるそうです。もちろん生でです。持ち帰った肉などは煮て食べる様ですが、恐らくさらに古い時代ともなれば、これらの肉も生で食していたのでは無いのでしょうか?本来的には彼らの食生活は100%肉です。現代人から見れば不健康極まる食生活と言うのでしょうが、実際には、これらを生で食べることによりビタミンなどの栄養素はそのままの形で摂取出来ますし、バーベキューにしない分、焼き肉由来の発ガン物質なども生じませんので、寧ろ栄養学的には優れているのでは無いのでしょうか。

さて、イヌイットの例を挙げるまでもなく、我々のご先祖様は圧倒的に現代人よりも多くの微生物を食物から摂っていたのは間違いの無いところだと思います。センセが申し上げたいのは、「だから現代人もまた生で牛や豚のホルモンを食え!そしたら万事解決だ!」と言う事ではありませぬ。そうでは無く、「我々のご先祖は、過去数十万年~数百万年に亘って今よりもよっぽど多くの微生物をそうとは知らずに摂取していたはずであり、その結果、我々の身体もまた、そのように外部から大量に供給される微生物をあてにした作りになっているはずである。ところが現代になって急激に環境が良くなり、我々が食べる食物はクリーンそのものな代物と化している。このまま数万年も経てば、確かに遺伝子的に我々の身体はそのようなクリーンな状況に適応するのかも知れない。しかしながら我々は未だ原始人の遺伝子をそのまま引き継いでいるのであり、数万年先の「遺伝子レベルでの適合時代」まで待つ訳には行かない。この様な急激な食物の無微生物化が、我々の健康に対して全く影響を及ぼしてはいない、とは考えづらい。恐らく、多くの食用微生物関連の食物や健康食品、或いは医薬品などがかくも様々な疾病に対して幅広く効果を示すその理由は、現代人の食物由来微生物の摂取量が本来あるべき量に満たないからではなかろうか?すなわち食用微生物は、炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維に次ぐ、人類必須の第七の栄養素なのではなかろうか?」という事を主張したいのであります!

、、、、疲れました、、、。

ええっと、本質論は上に述べた通りですけど、このままでは未だ言葉足らずで誤解が生じるかも知れませんので、この続きはまた後日書きます。

ちょっと研究内容 その三

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前回は、マウスに発ガン物質を投与して大腸ガンを作らせる実験系の場合に大腸ガンの発生を予防するにはどれぐらいの数の乳酸菌菌体を飲ませればよいのか、と言うお話を致しました。

今回は、どれぐらいの数の乳酸菌菌体を飲めばガン細胞の転移が抑制されるのか、と言うお話を致します。

皮膚ガン細胞(メラノーマ細胞)をマウスのしっぽに注射すると肺臓に皮膚ガン細胞が転移し、結節を形成します。肺に転移した結節数を数える事によって乳酸菌の菌体を食べさせた群とそうでない群とを比較し、乳酸菌のガン細胞転移抑制効果を評価しました。なお、乳酸菌は加熱滅菌し、死菌体として与えています。図はマウスの肺に転移したメラノーマ細胞結節の写真です。左が正常な肺、右が転移した肺です。

肺転移対照のコピー1.jpg 肺転移陽性のコピー2.jpg

乳酸菌死菌体をマウスの餌に0.01%と0.1%の割合で混ぜて4週間与えました。餌を与え初めてから2週間後にメラノーマ細胞をしっぽに注射し、その2週間後に解剖して、肺に転移したガン細胞の結節数を数えました。

転移抑制実験-2.jpg グラフは、赤いカラムが乳酸菌を食べさせていない群の結節数で、一匹あたりおよそ300個ありました。真ん中のだいだい色のカラムは餌に0.01%に死菌体を混ぜた群で、結節数は約50%減っておりました。一番右の黄色の群は0.1%に混ぜた群で、結節数は70個ぐらい。何も食べさせなかった群の約25%程度の数でした。

このようなガン細胞の転移を抑制するメカニズムは、NK細胞と呼ばれる免疫細胞の機能が活性化されるためと考えられているので、同じ系を用いて、餌に混ぜた乳酸菌死菌体の量に比例してNK細胞の機能が高まるかどうか、調べてみました。

すると、NK細胞は餌に混ぜた乳酸菌の菌体量に比例して活性化し、0.01%の時に最大になる事が分かりました。実際の転移は0.1%の時の方がより抑制されるので、恐らく、ガン細胞の転移は、単純にNK細胞の活性化だけに依存しているのでは無いと思われます。

このときの乳酸菌の数を計算してみます。

このとき用いた乳酸菌は、Lactobacillus curvatus KN-40 と言う菌を用いました。マウス一匹あたりの一日の食事量を5gとしますと、0.01%は0.5mgに相当します。0.5mgというのはずいぶんと少ない量に感じますが、乳酸菌菌体を乾燥化すると重量は非常に減少してしまいますので、驚くべき数字ではありません。この菌の培養液中の数とその時の乾燥重量から計算すると、0.5mgは、およそ300μl (0.3ml) の培養液量に相当します。培養液1ml 中に10億個の乳酸菌がいるとして計算すると、およそ3億個の乳酸菌を毎日食べるとマウスはガン細胞の転移から50%ぐらい守られる計算となります。この値を人間に当てはめますと、3億個×2000として6000億個となります。

毎度毎度ヨーグルトを持ち合いに出してきて恐縮なのですが、この値をヨーグルトの量に換算しますと、ヨーグルト1cc あたり1000万個ですから、6000億÷1000万=6万cc、すなわち60リットルとなります。マウスを用いることのバイアスを考慮に入れて1/10にしても、一日あたり6リットルぐらいのヨーグルトを飲む量となります。抑制率を75%まで高めたい場合は0.1%となりますので、この場合は60リットル飲む必要があることとなります。今回の実験もまたマウスに強制的にガン細胞を注射すると言うものですからそのバイアスをも考慮に入れる必要があるかもしれません。しかし、その様な強制された系での転移を明確に抑制する量、と言う点を考えると、その必要は無いかと考え、今回はそのまま計算して見ました。

最後に、毎度毎度くどいほど繰り返しますが、今回の実験はマウスを用いた結果です。これが必ずしもそのまま人に適用される訳ではありませんので、その点ご注意ください。

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