ちょっと研究内容: 2014年2月アーカイブ

学会報告-5

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みなさんコンバンワ!

漸く厳しい寒さもゆるみ始めましたね!先週末に大雪に見舞われた坂城は、その後も厳寒の日々が続き、たくさんの雪が残ってホトホト困っているのをご報告したばかりですが、昨日から少し春めいてきまして徐々に溶け始めております。本当にホッとしますね!

さて、このところお話のネタに尽きないので平日でもブログの更新をしておりますが(珍しいですね!)、本日は緊急に短信のご報告を致します。

既に日本全国で大々的に報道され、このブログでも先々回に話題にあげた「かっぽう着」のお姉さんのSTAP細胞の件ですが、ここに来て大きな疑惑が持ち上がっています。

まだSTAP細胞自体が捏造であるのかどうか、本質論としての結論は出ていないのですが、少なくとも、彼女が提出したNature の論文中に、いくつか「プロである限りは絶対にやってはいけないこと」が存在する事が発覚してしまいました。論文の「材料と方法」の一部分に、他の研究者の論文からの直接的引用と言おうかあからさまな「コピーあんどペースト」と言おうかOCR ソフトを利用したパクリと言おうか、が存在し、また、電気泳動の図の一部に、これも明らかな「コラージュ=糊付け」がある事が分かりました。たぶん、近々、週刊誌などが騒ぎ出すようなカンジです。

 

このことをもって「STAP細胞はインチキだ!」と言う事は出来ないのですが、プロの研究者として、これらは「絶対に!!!」やってはいけない事なのです!!!!!

 

科学論文を審査すると言うのは実はとても難しいことでして、特にその内容が「世界初」のものであれば、理論的に、それを審査できるヒトは、実は居ないはずです。従って「世界初で、未だかつて誰も夢想だにしなかった発見」に対して審査員がかろうじて取り得る態度は、その結論に至った実験過程を「頭の中で」追って、「ま、ありえるのかな?」と言う程度のものです。従って執筆者は、当たり前なのですけど、その「実験過程と結果」を全て正直に書かなくては、審査員も判断を下すすべが無いわけです。

先のOCR やコラージュは、本当にSTAP細胞が出来るかどうかと言う本質論とは無関係の末梢的な問題であるとも言えますが、論文を書き、これを専門雑誌に投稿する全ての科学者が、時に堪え忍ばなくてはならない審査員からのチョー厳しい「愛の鞭」と言おうか「くだらないイチャモン」と言おうか「単なる嫌がらせ」と言おうか、をクリアーするために、気持ちはモンノすごく分かるのですけど、やってはいけないことをやってしまうのは、これは御法度なので御座います。「それをやっちゃあおしめえよ!」と言う事ナンです!

さて、とはいうものの、ともかくもSTAP細胞が否定されたと言う訳ではありませんので、ここは当面しばらくは、腕を組んで、様子見を決め込むしかありませぬ。個人的意見としては、先々週のお話でも述べましたように、マスコミが報道しないので世間的には余り知られていないけれども、STAP細胞に匹敵する様な、比較的単純な刺激などによって多能性細胞が作り出されている事例が結構報告されてきて居ますので、STAP細胞そのものはいざ知らず、単純な外部刺激による細胞のデフォルト現象というものは、今後も発表されてくるのでは無かろうか、と考えています。人ごとだけど、ナンか、ドキドキするよな話題が多い近頃です、、、。

学会報告-4

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みなさまこんにちは!

本日は、先週に関東甲信越地方を襲った大雪のご報告を致します。タイトルの「学会報告」とはナンの関係もないのですけど、「流れ」ですので、とりあえずこのままにします。

いつもこのブログで述べているのですが、ここ坂城が位置する長野の東信地方は、冬が寒いのはもちろんですが、思いの外に降雪が少ないところです。丁度日本海と太平洋の勢力がぶつかる所に位置しますので、北からの雪雲が坂城に到着するまでには新潟と長野の県境でその大部分を下ろしてしまいますし、南からの雪雲が来る時には群馬と長野の県境の軽井沢周辺で下ろしてしまいます。四方を高い山々で囲まれた盆地ですので、年間降雨量は1,000ml にも満ちません。

因みに「日本海」は飽くまで「日本海」ですので、そこのところは呉々もヨロシクです!!!

ところがそんな坂城でも、先週の金曜から日曜に掛けて、しんしんと雪が降り続きました。金曜の午前中はそれほど大したことは無かったのですが、天気予報によれば、一両日降り続く可能性があるとのこと。そうなりますと、気温の低いこの地域で生じる結果が大体想像出来ますので、研究室員も午後一番に全員帰宅させ、早々と研究室を閉める事にしました。仮に翌日雪が止んだ場合にも車が出られる様に、とりあえず一旦、駐車場の雪かきを致しました。この時でさえも、積雪は20cm 程度にはなっておりました。

雪はその間にもしんしんと降り積もり、道路も一面雪に覆われ、早速に車が渋滞し始めました。研究室の前の道路は長野高速道路の坂城インターに直結する道で、坂道になっており、加えて週末ですので、帰宅を急ぐビジネス関連の車でごったがえして居りました。恐らく、県外から来た車の中に、無謀にも、雪支度ナシで走っていた車がいたのだと思います。夕方から深夜に掛けて、これらスタックした車が脱出を試みて車輪を空回りさせながら右往左往しますので、しんしんと静かなはずの雪の夜が、キュインキュインとうるさいことこの上なし!指をくわえて見てるわけにも行きませんので、センセもしばしば救出の手助けをしておりました。ナントカ寝るまでにはスタック車が無くなったのは不幸中の幸いでしたが、駐車場の雪かきに加えてスタック車の救出ですので、体もしんどく、やれやれとか言って眠りにつきました、、、。ところがこれは、まだ本番前の前夜祭だったのです***

翌日は一面の銀世界、等と言う表現は陳腐極まりますね!研究室全体が雪に埋まってしまったかの様子にびっくり仰天!← これも陳腐な表現***

以下、写真を掲載して行きますね!昨日まで車が通っていた車道も、ご覧の通り雪で埋まりました。

通り 140216.jpg

車道と歩道の区別がつかない、、、。

歩道 140216.jpg

車が*****!!!!

 車 140216.jpg

 ナントカ車を救出すべく、、、、。

救出作戦 140216.jpg

雪だるま***

雪だるま車 140216.jpg

救出成功!!!

救出成功 140216.jpg

 積雪70cm !!!! 

積雪 140216.jpg

ナントカ駐車場から出られるまでに!!!開通 140216.jpg

夕闇迫る、テクノさかき研究室、、、。

夕暮れ 140216.jpg

 雪の重みで潰れてしまったお隣の倉庫。ナムナム****

倉庫 140216.jpg

見事なつらら。 これは現在進行形で、今ではもっと進化しています!

軒先のつらら 140216.jpg

この後センセは三日三晩へばっておりました*****。ではっ!!!

学会報告-3

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続きです。

そういうわけで、直接に細胞内部の遺伝子を改変する事も無く、何らかの外部による簡単な刺激によって、ヒトを含む哺乳類の、既に分化が終わった細胞をデフォルトして、未分化の状態に巻き戻す事が出来る可能性が出て参りました。STAP細胞の場合、未だヒトの細胞には手を付けて居ない様ですが、たぶんですけど、時間の問題かと思います。収穫率とかガン化の問題とか、解決すべき課題には色々ありますが、とにもかくにも「何故そうなるのか?」と言う初期化のメカニズムを解明する事が最大の課題です。これを決定的に解明したヒトが次のノーベル賞候補となることは、これは間違いありません。

で、漸く今回のテーマに入りますが、「乳酸菌を用いて多機能性細胞を作り出した!」と言う講演が昨年11月の日本乳酸菌学会秋期セミナーで有りましたので、これについてお話しをしたいと思います。

お話されたのは熊本大学の先生で、もともとは乳酸菌学者では有りません。「バクテロイデスと言う名前の細菌をマウスに口から与えたとき、胃の上皮細胞の遺伝子発現に大きな変化が生じる」という他の研究者の報告を受け、細菌と細胞との関係性に興味を持ち、「それなら腸内細菌が腸管粘膜細胞の遺伝子発現にも影響を与えている可能性があるのではなかろうか?」と考えて実験を始めたそうです。ヒトの皮膚繊維芽細胞に色々手を加え、その後に乳酸菌を与えたところ、繊維芽細胞が乳酸菌を取り込む事が分かりました。この乳酸菌を取り込んだ繊維芽細胞を調べたところ、将にiPS細胞やSTAP細胞と同じように、細胞が初期化されている事が分かりました。初期化された細胞に各種の分化を誘導する処置を施したところ、様々な細胞に分化することも分かりました。さらにこの細胞をマウスの精巣に移植すると、ガン化する事もなく、精巣を形成する各種組織の細胞に分化する事も証明出来ました。

以上の結果から、将に「乳酸菌によって多能性細胞が作製できる」事が分かった訳です!因みに、細胞に取り込ませる乳酸菌は生きている必要は無く、乳酸菌菌体に存在するある種の物質が細胞質内に入る事によって初期化が生じるそうです。但し、その物質は熱には弱いとの事でした。より詳しい内容を知りたい方はOhta K. et al. (2012) PLOS ONE 7: e51866 を読まれると良いかと思います。但し、専門家でないとチンプンカンプンの世界ですので、そこの所はヨロシクです。

ともかくも、今後急速に似たような報告が世界中から出てくる事が期待されます。先のSTAP細胞の場合、そもそもがキャピラリーと言う極細のガラス管に細胞を通す事によって初期化された細胞が生じる現象を観察した事がその後の研究の切っ掛けなのですから、銀ブナの卵子のお話からも連想される様に、深遠な生命現象の底の底には、実は誠にあっけない仕組みが横たわっている可能性すら、ナンか、感じられてしまいます。

学会報告-2

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皆様おはよう御座います。寒い朝ですね。「北風吹き抜く~寒い~朝も~」って、思わず口ずさんでしまいそうです。

えっ?この歌知らない???ウッソ~~~!!!

センセの場合、この時期の極寒の日々に、フト、口の端に上る歌としては、上記吉永小百合の「寒い朝」の他に、「いぢわ~る~木枯ら~し~ふ~き~つける~白い~セーターボロシューズ~」とか、「雪が降ってきた~ほんの少しだけ~れど~」とかが出てきます。ナンか、年末の「昭和三十年代の思い出」を未だに引きずっている様ですね。

さて、先週末に日本列島を襲った大寒波は、ここ坂城にも大雪をもたらしました。センセの膝小僧まで積もりましたので、大体40cm ぐらいかな?天気予報によれば「南から流れ込んだ湿った空気による大雪」との事でしたので、春先の湿って重い雪を考えておりましたが、長野は気温が低いモノですから、幸か不幸か、雪質はきれいなパウダースノー。「幸か不幸か」と言うのは、雪質が軽くてふかふかですので雪かきは比較的楽である一方、すぐ溶けないので、根雪となって残る確率が高くなるためです。

日曜~月曜は一日中雪かき。研究所に加えて工場の駐車場も雪かきしなくてはなりませんので、足腰立たなくなって、夜はひっくり返ってそのままバタンQ~。ここぞとばかりにお酒をちびりちびりやりながらソチオリンピックを見物してましたが、ここまで日本選手はバタバタと全員討ち死に!元気が出ないこと限りナシ、、、。

「ソチらはソチで何をしておるのじゃ?」

と言いたくなりますが、選手の皆さんも全力を出しておりますので、「それは言わない約束でショ?(ザ・ピーナッツの声で)」と言うカンジかな?  まだ引きずってる、、、。

さて、大雪とオリンピックは良いとして、年明け一番にビッグニュースが飛び込んで参りましたね!もちろん小保方さんのSTAP細胞のお話です!前回お話した様に、今回は「肥満とガンの関係」についてのご報告をする予定でしたが、急遽内容を変更しまして、STAP細胞に因んで、「乳酸菌と多能性細胞」のお話を致します。

皆様も既にご存じの様に、「多能性細胞」とか「多能性幹細胞」とか呼ばれる細胞とは、条件次第で、基本的に「どのような組織にも変化しうる」細胞の事です。初めはES細胞と呼ばれる細胞が脚光を浴びておりましたが、これは受精卵からしか作製することが出来ませんので、倫理的にも大いに問題がありました。それがために某国のウソツク教授が退任となったのも、記憶に新しい所です。その後に山中先生がヒトの皮膚の繊維芽細胞(せんいがさいぼう)にわずか4種類の遺伝子を導入することによってiPS細胞を作りだし、これがためにノーベル賞を受賞したのもつい先頃の事でしたね!

ところが今度は30歳のイマドキの女性がトンデモナイ発表をしたもんだから、世の中上へ下への大騒ぎ!とにかく今回は「遺伝子導入」とか言う「それっぽい」方法じゃなく、pH5 程度の溶液に細胞を漬ければ細胞がデフォルトされるってんですから、これには世界中が驚いてしまいました。

皆様もご承知の通り、多くの草木は接ぎ木で簡単に増やすことが出来ますし、プラナリアやヒトデなどは体を半分にされても再生して体は二つになってしまいますし、イモリなどの手足をちょんぎってもそこから新しい手足が再生しますし、人間ですら多少の傷は修復~再生されますし、或いは、ヒトの肝臓などは非常に再生力が強い臓器として有名です。

さらに言えば、お魚のフナ、関東の池や沼で普通に見られるのは銀ブナという種類ですが、これは殆どの個体が雌で、雄は居ない。じゃ、どうやって増えるのかというと、雌が生んだ卵が「何らかの刺激」を受けて発生が開始されるとの事です。実験室内では、金ブナやゲンゴロウブナなど、他の種類のフナやドジョウ(どぜう)の精子による刺激によって発生が開始する事が分かっていますが、この場合、他の種類の精子と合体して受精卵を作るのでは無く、これらの精子は、単に発生開始のために、銀ブナの卵子に「何らかの物理化学的な刺激」を与えるだけだそうです。従いまして、こうなりますと、理論的には大多数の銀ブナは親の遺伝子をそのまま受け継ぐクローンであるはずですが、実際に調べてみますと、将にその通りなのだそうです。また一方で、実験室内ではそのように他の魚の精子で発生を開始させる事が出来ますが、実際に野外でこの様な形で発生が開始されるかどうかは不明、との事です。

いずれにしましても、先頃、東京の井の頭公園の池の水をさらった所、8~9割の魚がブルーギルやブラックバスなどの外来魚で占められていたとの事ですので、あんなにありふれた魚であった「フナ」ですら、日本の池や沼から駆逐されてしまいつつある様です。あの「メダカ」は既に絶滅危惧種となっておりますし、クサガメやイシガメも殆どがミドリガメに置き換わりつつある現状ですから、「こぶな釣りし彼の川~」も「ブルーギル釣りし彼の川~」と歌詞を変えなくてはならない時代がやってくるのでしょう。情けないですね、最近の日本は!

 

 

・・・・またもや脱線しました・・・・ この続きはお昼を食べた後で・・・・

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