ちょっと研究内容: 2008年5月アーカイブ

ちょっと研究内容 その一

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ここではまじめなお話を致します。

喜源テクノさかき研究室は食用微生物の研究をしておりますが、
これまでの研究成果を商品として世に送るだけでなく、
特許をとったり、あるいは学会発表や論文報告というかたちで
世界に向けて発信してゆこう、と考えております。

今回はそのうちの一つ、大豆麹乳酸菌発酵液のお話を致します。
大豆麹乳酸菌発酵液は当研究室が開発した健康食品素材で、
平成19年3月20日に特許願を提出しました(特願2007-073113)。

それでは大豆麹乳酸菌発酵液の作り方を、順を追ってご説明いたします。

1.有機無農薬栽培で収穫された大豆を丸ごと用い、まず液体大豆麹を作ります。


大豆畑-A.jpg喜源テクノさかき研究室が所属する喜源グループは長野の山の上に自社の大豆畑を所有しており、そこで毎年大豆を収穫しております。
もちろん有機無農薬栽培ですので、ご安心を。

この大豆を皮付きのまま丸ごと粉砕して
粉にします。
これに水を加え、高圧加熱滅菌した後、麹菌(こうじきん)を接種します。

麹菌は、味噌や醤油、あるいはお酒などを
造るときに無くてはならない役割をする「カビ」の一種で、強力な酵素を出してタンパク質はアミノ酸に、デンプンはブドウ糖にまで分解してくれます。

麹菌を接種した大豆粉水溶液は、大型の振蕩(しんとう)培養装置で
2週間以上培養します。培養を終了した培養液のことを、液体大豆麹と称します。

この過程で大豆タンパクは殆どアミノ酸まで分解されます(下のグラフ)。
さらに、大豆のアレルゲン(アレルギーのもととなる物質)麹濃度実験-1.jpgも分解されて消失してしまいます(白黒写真)。

大豆アレルゲン.jpg









さらにこの過程で大量の抗酸化物質や抗変異原物質が生産され、
液体大豆麹の中に蓄積して行きます。

抗酸化物質とは、万病の元となる活性酸素を消去してくれる物質のことで、
代表的なものにはビタミンCやビタミンEがあります。
抗変異原物質とは、ガンの原因となる物質(変異原物質)に対抗してくれる
物質のことです。

2.液体大豆麹に黒糖、米糠エキス、カルシウムを加え、乳酸菌用の培地をつくります。

このように、液体大豆麹は、そのままでも非常に身体に良い素材です。
この液体大豆麹に、さらに黒糖と米糠エキス、そしてカルシウムを加えて
加熱滅菌し、乳酸菌用の培地を作ります。
この時用いる黒糖は、奄美大島で無農薬有機栽培によって育ったさとうきびから
得られるものです。
黒糖は白いお砂糖とは異なり、ビタミンやミネラルの含有量が高く、中でもカリウムが豊富です。
カリウムを豊富に含む食材として有名なのはバナナですが、
黒糖のカリウムはバナナの3倍もあります。
なぜカリウムのお話をしているかというと、カリウムが身体に良いからです。

ではなぜカリウムは身体に良いのか。

カリウムは、ナトリウムに対して拮抗的(きっこうてき)に働き、両者のバランスで細胞の働きが成り立っています。
このバランスが悪くなると、身体に悪い影響を与えます。
現在世界中で日本食が「ヘルシーな食べ物」としてもてはやされていますが、
実は日本食にはただ一つ欠点があります。
それは、食塩を多く使うため、ナトリウムの含有量が高いと言うことです。
食事から得られるナトリウム分が過剰になると高血圧を誘発し、これが動脈硬化の引き金となり、
最終的に脳や心臓に、時には致命的な結果をもたらします。

このようなナトリウムは腎臓から排出されますが、このとき同時にカリウムが必要です。

そうです!賢明なる皆さんはもうお分かりかと思いますが、食事中のカリウム量を増やすことによって、
身体の過剰なナトリウムを適度なレベルまで排泄することが可能となるのです。

現在の日本人の食事には、あまりにもナトリウムが多すぎます。
縄文時代の人々は、現在の10倍以上のカリウムを食事から摂っていたと考える学者もいます。
乳酸菌用の培地に黒糖を用いることによって、大豆麹乳酸菌発酵液のカリウム含量は高くなり、
乳酸菌の発育に優れる培地となっただけでなく、我々の健康にも良い培地組成となりました。

3.乳酸菌用の培地に乳酸菌と酵母を接種して培養し、大豆麹乳酸菌発酵液が出来上がる!

このようにして出来上がった培地に、乳酸菌と酵母を接種し、培養します。

大豆麹乳酸菌発酵液に使用する乳酸菌は、全部で5種類。
これらの乳酸菌は全て、日本全国の漬け物からテクノさかき研究室が分離、同定したものです。
テクノさかき研究室が漬け物などから分離した菌は、200株以上に昇ります。
そのうち乳酸菌であると同定できたものがおよそ120株ぐらい。
これらの中から様々な選択試験を行って、成績が優秀な株を5つ選びました。
どのような試験を行ってどのような乳酸菌を選んだのかは、次回にお話しいたします。

5株の乳酸菌のうち、それぞれ1種類ずつを酵母菌とペアで乳酸菌用の培地に接種し、
孵卵器で4日間培養します。
培養終了後、5つの培養液を混ぜ合わせ、最後の加熱滅菌を行って、
ようやく大豆麹乳酸菌発酵液が完成します。
乳酸菌と酵母菌をペアで接種する方法を、混合培養、あるいは共生培養と言います。
一般的に乳酸菌と酵母菌は相性が良く、自然界においても、この両者が相伴って
分離されるケースが多いと言われています。

最終的に皆さんのお口に入る製品の形になるにはさらなる工程が必要となりますが、
原液としての大豆麹乳酸菌発酵液は、以上のような過程を経て作られます。

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