食用微生物のお話: 2008年5月アーカイブ

食用微生物のお話 その一

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食用微生物のお話をいたします。
食用微生物とは、読んで字の如く、食べられる微生物のことです。

まず、料理法をご説明します。

あらかじめさっと湯通しした乳酸菌を、カップ一杯のだし汁に漬けます。

これに塩こしょうして、先に炒めた酵母菌を小さじ一杯加え、
ねばりがでるまでこねます。

これに千切りにした麹菌を加え、油で炒めます。
この時、炒めすぎないことがこつです。

炒め終わったら、お皿に盛って完成です。

季節のお野菜などを添えても彩りが良く、お客様にも喜ばれます。

と、言うのが「食用微生物」ではありませんのでご注意下さい!

食用微生物のお話 その二

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まじめなお話を致します。

食用微生物のお話です。

食用微生物とは、味噌や醤油、お酒や漬け物、ヨーグルトなどを
作るときに欠かせない役割を果たす微生物のことです。
常識ですよね!

喜源テクノさかき研究室で扱っている食用微生物は、
大きく分けて麹菌酵母菌乳酸菌の3種類です。
それぞれ分かりやすく言うと、麹菌はカビの仲間、
酵母菌はパン作りでおなじみのイースト菌のこと、
乳酸菌は、ヨーグルトでおなじみの菌です。

ここではまず、麹菌のお話を致しましょう。

麹菌はカビの仲間です。さっき言ったばかりですよね。
でももっと言わせて下さい。

麹菌はカビなんだあなんだあ~なんだあ~~~~


、、、、、、、、だからどうしたって?

だって皆さんは、カビ、嫌いでしょう?

じゃ、なんでカビが食用になるのか、疑問に思いませんか?

そうです!細菌にも善玉菌と悪玉菌が居るように、
カビにも善玉カビ悪玉カビが居るのです。

悪玉カビの代表には、アフラトキシンと言う猛毒を生産するヤツが居ます。
アフラトキシンは非常に強力な発ガン物質で、特に肝臓ガンの原因となります。
そしてこの毒を生産する悪玉カビは、南京豆、、、、おっとっと、
落花生、すなわちピーナッツなどに生えたりします。

南京豆という言葉、死語でしょうかね?
因みにこの前、薬局に行って、
「天花粉ください。」
と言ったら、
「はあ?」
と言われましただ、、、。
死語、気をつけます。、、、プっ!

でも普通の落花生、特に日本の農家が作る落花生は大丈夫!
けれども外国製の落花生やコーン、ナツメグなどには今でも
ときどき検出されることがあるので、ご注意を!

善玉カビの一方の雄には、抗生物質を作ってくれる
ペニシリンカビなどが居ります。
そして食品分野での代表選手が、麹菌です。

麹菌の最大の特徴は、その強力な酵素の力にあります。

例えば、蒸したお米に麹菌を接種すると、お米のデンプンを
消化してくれる酵素を大量に生産します。
蒸したお芋に加えるとお芋のデンプンを消化し、
蒸した麦に加えると麦のデンプンを消化し、
蒸したそばに加えると、そばのデンプンを消化し、
これらのデンプンを糖に分解します。

麹菌が繁殖したお米や麦やお芋などのことを、
と言いますが、これらの麹に水を加え、酵母菌を接種して培養します。
一晩ぐらいすると、ぼこぼこぼこぼこと、大量の泡ぼこが発生し始めます。
これは、酵母菌が二酸化炭素を放出するためです。
その後には、なにやら甘~い香りが、、、。

そうです。酵母菌が、糖からアルコール(エタノール)を
作ってくれたのです。ごっくん。

先ほどからどういう訳か、お米だのお芋だの麦だのそばだのを
例に取ってきましたが、こういう風にして
麹によってでんぷんを糖に分解し、生じた糖を酵母がアルコールに変換し、
そしてこれを蒸留すれば、
皆さんも好き、私も大好きな、焼酎の出来上がりです。

因みに、沖縄の代表的な焼酎である泡盛。
これを名前から連想して粟(あわ)から作られると
考えているヒトがときどきおられますが、もちろん間違いです。
泡盛の原料はお米ですので、お間違えの無いよう。

麹菌を蒸した大豆に接種すると、麹菌は、大豆タンパクを
分解する酵素を大量に生産するようになります。

この、麹菌による大豆タンパクの分解作用を利用して、
味噌と醤油が作られます。

味噌の場合、麹菌が大豆タンパクを分解する過程で、
味噌の抗酸化能が非常に強くなっていきます。

抗酸化能とは、身体に悪い影響を与える活性酸素に対抗する力のことで、
味噌の中でも殆ど100%大豆だけで作られる名古屋の赤味噌系の
お味噌などは、この抗酸化能が非常に強いと言われています。

強い放射線を浴びたときなどにも身体の中に大量の活性酸素が生じ、
さまざまな疾病を引き起こします。

昔、広島長崎に原爆が投下されたとき、日頃から味噌汁を飲んでいる家族では
被爆の後遺症が少ない、と言ううわさがたったことがあるそうで、
これを元にして、広島大学の先生達が味噌と放射線被害との関係の研究を始め、
その結果、味噌の機能性がだんだん分かってきました。

以前にチェルノブイリ原発の爆発事故がありましたが、
その時に、当時のソ連政府のお役人たちが、事件現場周辺の住民たちに
味噌をくばって歩いたそうだ、と言う話を聞いたことがあります。

本当に味噌がヒトの放射線被害に効果があるかどうかは
人体実験をする訳にはいきませんから分かりませんが、
試験管レベル、あるいは実験動物のレベルでは、すでに明白な結果が出ています。

また同時に、チェルノブイリでのソ連の行動は、広島長崎での出来事に関して、
うわさのレベルにおいてまでも、当時彼らが徹底して原爆に関する情報を集めていた
と言う事実を裏付けるものとしても、とても興味深いお話です。

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