今月の書評-55

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さて、最後の氷河期が終了した今からおよそ1万年くらい前の頃から、中央~北東~南東アジアの全域にわたり、様々な由来を持つ色々な連中が各々の場所で独自の文化を形成しつつありました。

列島に渡ったYDNAD1b の連中が狩猟~採集~縄文農法を主体とした縄文文化を生きていた頃、満州から沿海州にかけて広がったC2 のハプロタイプを持つツングース系の連中はトナカイの飼育文化を、その西側の広大な草原地帯においては同じくC2 に由来するモンゴル系やトルコ系の連中がヒツジなどの遊牧を専らとする遊牧文化を、遼東半島の西の遼河流域ではN の連中が畑作主体の遼河文明を、黄河流域ではO2 の連中が同じく畑作の黄河文明を、そして長江流域ではO1b1 が稲作文化である長江文明を形作りつつありました。

その他、中央アジアからチベット高原にかけては、縄文人と同じくDD1a) を保持するチベット系の連中もおりました。彼らもまた遊牧を専らとし、紀元前後には、チベット周辺に生息する毛深い牛の仲間、「ヤク」の家畜化にも成功していたようです。

さらに、黒海からカスピ海にわたる広大なステップ地帯においては、YDNAR1 を有する連中が勢力を拡張しつつありました。彼らは、現在の欧州人の根幹をなす、いわゆるインド・ヨーロッパ語族の先祖とみなされる人々です。当然ながら、人種的形質はコーカソイドです。

日本人の祖先を探す旅のはずなのに何ゆえに南ロシアの白人連中がしゃしゃり出てくるのか、訝しく思われた方もおられると思いますが、実は、後の時代にトルコやらモンゴルやらが勢力を伸ばす前、欧州系の連中が中央アジアで幅を利かせていた時代があったのです。加えて、その一部はさらに東進し、事によると、日本人の先祖にも(少なくとも言語学的に)影響を及ぼした可能性も指摘されています。

ツングース系.jpg
現在の、ツングース系言語を話す人々の分布 wiki より


モンゴル系.jpg
現在の、モンゴル系言語を話す人々の分布 wiki より
アフガンやカスピ海は、モンゴル帝国の置き土産です。


トルコ系.jpg
現在の、トルコ系言語を話す人々の分布 wiki より
昔はもっと東に居住していましたが、その後に西進したと考えられています。



チベット系.jpg



現在の、チベット系言語を話す人々の分布 wiki より
ビルマ語は、チベット系の言語に含まれます。


クルガン仮説.jpgクルガン仮説に基づくヨーロッパ語族の拡張 wikiより


現在の欧州人の核となる、いわゆるインド・アーリア系語族に属する人々の源郷に関しては諸説ありますが、「今月の書評-41」でもご紹介した「クルガン仮説」が多くの支持を集めているようです。
クルガン仮説によれば、今からおよそ7000 年くらい前、インド・アーリア系の人々は、図のピンク色で示した場所から矢印の方向に向かって数千年かけて拡張してきた、とのことです。

「クルガン」というのは墳墓のことで、上図のピンク域を中心に、幅広く存在が確認されています。下はクルガンの図。遺跡です。

クルガン-1.jpg
クルガンの遺構 wikiより

クルガン文化の最大の特徴としては、馬の家畜化があげられます。
当初、この地帯での馬は「食肉用」として飼われていたらしいのですが、広大な草原が広がるステップということもあり、当然ながら、荷車を引く牽引馬としても用いられたと考えられます。また、牽引馬という発想は、その後の「古代型戦車」の発明にも結びつきそうです。

因みに、騎乗馬の習慣はモンゴルで生まれました(wikiより)。

このような「クルガン文化」ですが、その後、今から5000 年くらい前には「ヤムナヤ文化」と呼ばれる文化を発達させ、そこから派生したと考えられる「アファナシェヴォ文化(舌かみそう・・・)」が、アルタイ山脈の北、バルハシ湖北岸からモンゴル西部にかけて発展しました。

アフォナシュヴォ-2.jpg
アファナシェヴォ文化の領域 wikiより


このアファナシェヴォ文化の遺跡からは青銅器や馬の骨と共に車も発見され、半遊牧的な生活を送っていた人々と考えられています。
DNA 分析の結果からは欧州系のR1b であることが判明し、言語としては、当時の中央アジアで話されていたインド・アーリア系言語である、いわゆる「トカラ語」を話す人々であったと考えられています。

1980 年代に発掘されて一躍有名になり、NHK などでも特集を組んで放送した、いわゆる「楼蘭の美女」のミイラですが、アファナシェヴォ文化の流れをくむ集団の欧州系のヒトであったと考えられています。


楼蘭の美女.jpg

楼蘭の美女 wikiより





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このページは、喜源テクノさかき研究室が2019年3月30日 16:57に書いた記事です。

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