今月の書評-25

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今回は沖縄特集。
DNA 関係の三誌に加え、八重山を学ぶ刊行委員会編の「八重山を学ぶ」と高宮廣衛氏の「先史古代の沖縄」、山里純一氏の「古代の琉球弧と東アジア」の三誌を参考にしました。

現在では沖縄と言いますと沖縄県のことを指しますので、石垣島や西表島などを含む八重山諸島(先島諸島とも言います)と沖縄本島を一緒くたにしてイメージしがちですが、考古学~人類学的には、両者の間には明白な区別があるようです。
むしろ、南九州~種子島~屋久島が一つの文化圏、奄美大島から沖縄本島に至る島々がまた一つの文化圏であり、宮古島~石垣、西表、竹富島~与那国島からなる先島諸島はさらにもう一つの文化圏として捉えた方がよいようです(縄文期の先島諸島に文化と呼べるものがあれば、の話ですが)
奄美~沖縄本島と先島諸島が一つの文化圏として統合されるのは、いわゆる「グスク時代」以降に首里政権が誕生して以降のことだと思われます。


これまで、沖縄本島と先島諸島の両者からは旧石器時代の人骨が比較的多く出土していますが、これは日本列島の他の地域では見られない現象です。沖縄~先島諸島と言えばまさにエメラルドグリーンに輝く海とサンゴ礁、ということですが、サンゴ礁の隆起によって生まれた鍾乳洞が多いことでも有名です。そのため石灰岩質の場所も多く、そのような場所に埋まった古代人の人骨は石灰化し、残る確率が高くなります。

全身骨格が残っていることでも有名な港川人は沖縄本島の港川遺跡から出土したもので、今からおよそ1万8000 年前のものと考えられています。また近年、石垣島の白保竿根田原(しらほさおねたばる)遺跡から出土した人骨は、2万7000 ~1万5000 年前のものだと推定されています。

篠田謙一氏の本によれば、白保から出土した十体ほどの人骨のうち、2015 年時点において、三体からmtDNA  分析の結果が得られたそうです。うち二体が旧石器時代の古い個体で、残りの一体は4000 年前のものでした。
で、その結果はといえば、旧石器時代人からはそれぞれB4R というハプロタイプが検出されました。B4 は台湾の太平洋岸に居住する先住民の間に多く見られるもので、東南アジア由来のタイプだと考えられています。日本列島の現代人からも検出されますので、旧石器時代における列島への流入経路の一つとして、南方経路の存在を示すものかと思われます。R もまた、古い由来を持つハプロタイプだそうです。
残りの4000 年前の人骨からは、おなじみのM7a が検出されました。


一方で、これらの旧石器時代人がそのまま縄文時代の人々に連なるのか、話は簡単ではないようです。特に先島諸島においてはそうです。

白保の結果から2万7000 ~1万5000 年前に石垣島にヒトが住んでいたことは明らかとなりましたが、その後ヒトの気配がなくなります。
再びヒトの気配が現れるのは、今からおよそ4000年前。下田原(しもたばる)式土器と呼ばれる土器が出現する時代になってからです。それまでは空白の時代。
この空白の時代ですが、本当にヒトが居なかったのか、あるいは単に未だ当時の遺跡が見つからないだけなのか、本当のところは分かりませんが、縄文時代の昔に、大陸~本島から遠く隔つ先島諸島のような小さな空間に居住することの困難さを考えますと、何らかのきっかけで部落~部族全体が絶滅~消滅してしまう状況を想像するには、さほど困難さを伴わないと思います。
先の本、「八重山を学ぶ」では津波の被害を考えておられますが、その他にもマラリアに代表される病気の蔓延なども可能性の一つにあげられるでしょう。

このような「島に住むことの危うさ」に関しては、今一つの例をあげることができます。それは、「今月の書評-17」でもお話したように、先島諸島の男性軍のYDNA が本島~列島~アイヌ人と大きく異なるという事実です。

縄文人の男性を特徴づけるYDNA が、D2 です。
現代アイヌ人男性の実に9 割、東日本と沖縄本島の男性が未だ4 割を有している「縄文オトコの痕跡」ですが、先島諸島の現代男性軍はわずかに4%と極端に少なくなっています。それに加えて朝鮮半島由来であると考えられるO2b がナント67%!!!この数字は現代朝鮮男性の割合よりも多いのです!どういうことなのでしょうか?

「マラリア感染には性差があり、男性は女性よりも脆弱。男性の数が減少したところに朝鮮半島から漂着してきたオトコが住み着き、たまたまイケメンだったそいつのYDNA が広がった」という仮説を個人的に考えてみましたが、マラリアに性差があるという証拠はなく、たちまち轟沈しました。
となりますと、ちょいとオソロチイ仮説を建てなくてはなりませんが、それはそのうちお話します。


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このページは、喜源テクノさかき研究室が2018年6月30日 12:17に書いた記事です。

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