昭和40年代:時代と音楽-22

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1962年にイギリスのリバプールで産声を上げたビートルズですが、アメリカに上陸してヒットチャートを独占するのは1964年の年。その後の展開はみなさまご存じのところです。けれども、前回も申し上げたように、アメリカ人の全てが若者ではないし、モータウンやアトランティックの音にビートルズが影響を及ぼした形跡は見られないし、その後のジョンの発言をきっかけにして南部ではビートルズ排斥運動まで生じるし、ホワイトハウスやウオール街のエスタブリッシュメント連中は全く別の世界に生きているし・・・。
ビートルズからウッドストックに至る若者文化だけに注目していると、これら「実務」の世界に生きている人々を見落とすことになって、結局60~70年代を見誤ることになってしまうかも・・・。

アイビーリーグを卒業後、金融関係に就職。早々と大都市郊外に庭付きの一戸建てを購入し、美人と評判の妻は専業主婦。ご本人は車でウオール街へ出勤し、世界を相手にマネーゲームに励む日々。週末は夫婦そろってティファニーでお買い物の後はブロードウエイでミュージカルを楽しむ、といった典型的なアメリカンドリーム(実現しようがしまいが)の中で生きている人々、あるいはそれを夢見ている連中が、ヒッピー文化に身を崩したり、ましてやジェームス・ブラウンを聴くとは思えない・・・。じゃ、それらの人々、大卒で、有名企業に就職し、中上流の所得を得、大なり小なり政治経済の中核を担っていた連中の文化って、当時、どんなだったの?どんな音楽を聴いていた?

中西部の大規模な農場や牧場で働く人々、あるいは南部やアパラチアの仕事もろくにない小さな町で因習の中に生きる人々、シカゴやデトロイトの工場で働く労働者、NYのサウスブロンクスの住人達、北東部で昔ながらのつましい生活を送る人たち、キリスト教原理主義の強い町の住人達、リベラリズムとヒスパニックのカリフォルニアなどなどなどなど、それぞれの人々がそれぞれに特有の文化と音楽を持っているのが、いまさらながらのアメリカのDiversity ということではあります。このへんの事情って、映画「The Blues Brothers」の中でも面白可笑しく描かれていますよね!ジョン・ベルーシが「いやだ!俺は絶対にウエスタンなんか歌わんぞ!」とへそを曲げながらも、ダン・アイクロイドにせかされて、仕方なく唯一知ってるウエスタン「Rawhide」 を歌うシーンでは、センセも腹を抱えて大笑いでした。

結局、伝統的な「古き良きアメリカ」的文化の中核は、その後も色々と多方面から影響を受けつつ形を変えながらも、これら白人中~上流階級のエスタブリッシュメント(ないしはその予備軍)に引き継がれ、今に至っていると思います。クラシックやジャズは別枠としても、ストリングスを多用するイージーリスニング、映画音楽、50年代後期に生まれ60年代に花開いたボサノバ、そしてバート・バカラックの数多くの名曲など、どんなに世界が変わろうともビクともしない、極めて頑健かつ「健全」な音楽ジャンルだといえるでしょう。

ブラジル生まれのボサノバ。よく考えれば半世紀以上も前に誕生した音楽ジャンルですが、今でも全く古くささを感じさせることのない、不思議な音楽です。
ボサノバの歴史に関してここでクドクド述べる愚は避けますが、アントニオ・カルロスジョビン、ルイス・ボンファ、アストラッド・ジルベルト、夫のジョアン・ジルベルト、スタン・ゲッツなど、当時のビートルズの狂騒から10億光年ぐらい離れた彼方で輝きを放つ明星の如きもの、といえるかも知れません。



ボサノバって、嫌いなヒト、居ます?

ボサノバって、無理に仕分けすればイージーリスニングのジャンルにぶち込むことができるかも知れませんが、いや、絶対にイージーリスニングではないですよね!何が違う?
一般的には「ブラジル黒人音楽のサンバとジャズが融合したもの」とかいう説明がなされます。確かにサンバ的リズムの強い曲もありますし、ジャズの要素の強いものもあります。けれども、そんな「フュージョン」的な単純な話でもないと思います。

じゃ、何?

やはりこれは、先に述べた人たちの「天才」がもたらした独特の音楽ジャンルだと思います。

日本には、能楽の謡いや茶の湯、俳句や文人画など、いわゆる「わびさび」といわれる独特の雰囲気を表現する文化があります。この「わびさび」って何?と問われれば、それは答えるのが大変難しいことでありますので、致しません。でも、みなそれを、心の中で、知ってます。

ボサノバって、トロピカルな「わびさび」です!    ・・・以上です・・・。

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2016年12月 5日 19:29に書いた記事です。

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