学会報告-13

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続きです。

順天堂大学の先生が、「多発性硬化症」と腸内細菌並びに腸管免疫との関係についてお話されていました。
多発性硬化症は自己免疫疾患の一つで、脳や脊髄など、神経が集族する部位のあちこちに「しこり」のような硬い部位が生じ、視力の低下、四肢のしびれ感、運動麻痺、などを引き起こす病気です。病理的には、神経細胞の軸索を覆っている「ミエリン」とよばれる「絶縁カバー」に損傷が発生して生じると考えられています。
ミエリン鞘(ミエリンしょう=ミエリンカバー)に損傷が生じるメカニズムとしては、リンパ球による自己破壊が考えられています。自分のリンパ球が自分の組織を破壊するので、自己免疫疾患に分類される病気です。

多発性硬化症の原因はよく分かっていません。ウイルスや遺伝子の関与も指摘されていますが、北米やオーストラリアに患者が多く、これらの国からの帰国子女などにもしばしば発生が見られるので、食生活を含む西欧型の生活習慣に何らかの原因があるのでは?との見方も強くあります。

発表では、無菌マウスと通常マウスを用いて腸内細菌との関連を調べていました。両マウスを比較した結果、無菌マウスの方が病態が軽く、通常マウスでは重くなる事が分かりました。また、通常マウスに抗生剤を投与して腸内細菌叢を排除すると病態が軽くなる事が分かりました。以上から、多発性硬化症発生の病態に腸内細菌が関与する事が分かりました。
多発性硬化症患者の糞便を調べたところ、クロストリジウム属やバクテロイデス属の菌が減っている事が分かりました。これらの菌は大腸で食物繊維を分解~資化して短鎖脂肪酸を産生するので、患者に食物繊維を多く含む食事や短鎖脂肪酸そのものを与えたところ、病態の改善が見られた、という事でした。
病態改善のメカニズムとしては、酪酸などの短鎖脂肪酸によって制御性T細胞(Treg)が誘導され、自分のミエリン鞘を攻撃するリンパ球を抑制した結果、病態の改善に繋がったのでは?との考えでした。
今回の結果からは多発性硬化症の原因と腸内細菌との関係については情報が得られませんでしたが、少なくとも病態に関与している可能性が示唆されました。


次は、森永乳業の演題をご紹介します。
彼らは母乳とビフィズス菌の「親和性」について、お話されていました。

ヒトの腸管から検出されるビフィズス菌の種類はおよそ10種類程度ですが、個人的な差もさる事ながら、乳児と大人の間でも種類の差が見られます。
乳児由来のビフィズス菌と大人由来の菌とを母乳中で培養したところ、乳児由来のビフィズス菌は母乳中で良く生育した一方で、大人由来の菌は生育できなかった、という事でした。また、動物由来のビフィズス菌もまた、ヒト母乳中では生育できませんでした。
原因の一つとして、乳児由来ビフィズス菌の「リゾチウム耐性」をあげていました。

リゾチウムは細菌の細胞壁を溶解する酵素で、特にヒトの母乳中に多く含まれています。動物由来のビフィズス菌にはヒトのリゾチウムに対する抵抗性がほとんどなく、その結果、これらの菌は母乳中では生育できないと考えられました。
一方で、ヒトの大人由来のビフィズス菌は、ヒトリゾチウムに対する抵抗性を有しておりました。にもかかわらずヒト大人由来ビフィズス菌が母乳中で生育できない理由として、細胞壁溶解作用以外のリゾチウムの抗菌作用が関与しているのでは?との考えでした。

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2016年6月22日 09:26に書いた記事です。

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