お焦げとガンについて-6

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ヘテロサイクリックアミンの変異原性のメカニズム

ヘテロサイクリックアミン(HCA)は、そのままではDNA に対して悪さをする事はありません。
HCA が生体内に取り込まれた後、肝臓などの組織において代謝酵素によって代謝を受け、その結果、変異原性を有する物質に変化します。
変異原性を獲得したHCA は標的臓器の細胞のDNA に取り付き、複合体を形成します。
この様なDNA に取り付いたモノを 「DNA 付加体、DNA adducts」と呼びます。付加体はDNA に対して「共有結合」で結合しますので、その結合力は強く、振りほどく事は困難です。で、この様な邪魔者がくっついたDNA が複製する時、これが酷く邪魔になります。それでも細胞は複製しなくてはなりませんので、無理にでも複製しようとする結果、複製ミスが生じがちとなる訳です。

HCA を変異原に転換する酵素は、シトクロームP450 と呼ばれる有名な酵素です。シトクロームP450 は、通常、体の中に取り込まれた毒素を解毒する時に活躍する酵素で、別名「解毒酵素」と呼ばれます。アルコールを解毒する際にも活躍する酵素の一つです。通常、CYP と表現します。

で、CYP にはアイソザイムと呼ばれるたくさんの種類があり、それぞれの基質、すなわち代謝すべき相手が異なります。一般的に酵素は基質に対して1:1 に対応する関係がありますが、これは酵素によって異なり、比較的多くの種類の基質に対応するタイプのものもあります。「浮気者」と言う事です。
CYP はどちらかと言えば比較的に「基質特異性」が高く、そのために、アイソザイムの種類が多いと思われます。低いため、多くの基質に対応できると考えられています(以上、訂正いたしました)。

CYP は基質の種類と遺伝子の塩基配列の相同性に従っていくつかのグループに分けることが出来ます。HCA に対応するCYP は、CYP1A2 と呼ばれるタイプのCYP です。
この様にいくつかのグループに分類されたCYP 種は、基本的に基質の種類と遺伝子の相同性がある程度共通している事を手がかりとして分類されたものですので、とりあえずCYP1A2 と呼ばれる酵素は、どの生物に由来するものでも、多かれ少なかれHCA を変異原物質に代謝する事が、理論的に、出来ると思われます。

けれども実際は生物の種類によってDNA 配列は異なりますので、例えば同じマウスであっても系統が異なれば、同じCYP1A2 に分類されていても、微妙に性質が異なる可能性は十分に考えられます。

恐らく、恐らくなんですけれど、これが一つの原因となって、HCA の動物実験が混沌とした結果をもたらしているのかと思われます。

エームズテストでは、HCA を活性のあるHCA=変異原に転換するために、ラットの肝臓のCYP1A2 を用います。具体的にはCYP1A2 を有している「粗」な肝臓のホモジネート(すりつぶし)の上澄み液を用います。これでHCA は確かに変異原に転換されますので、その後にエームズテストを行うと、立派にrevertant が生じます。

しかしながら、「では」と言って、HCA をそのままネズミに投与しても、思うような結果が得られません。

まず、ラットとマウスで結果が異なってきますし、同じマウスでも系統が僅かに異なれば、全く異なった結果を返してきます。ラットで大腸ガンを形成するHCA はマウスでは全く反応しませんし、A と言うマウスの系統では全然反応しないHCA がB 系統のマウスでは肝臓ガンを作ったり、C では血管種を形成したり、とバラバラです。

この様なバラバラな反応の原因にはCYP 以外のメカニズムも当然働いているのは間違い無いと思われますが、同じネズミであってもラットとマウスで大きく異なり、また、同じマウスであってもわずかな系統の違いによってこれだけ反応に違いがありますと、ネズミの結果は当てにはならない、と言いたくもなります、、、。


ナンか、相当難しいお話になってしまいました、、、。すみませぬ***。でも、しばらくこの類のお話が続く可能性があります。もう暫くの辛抱です!


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このページは、喜源テクノさかき研究室が2014年4月16日 19:40に書いた記事です。

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