お焦げとガンについて-3

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ガン概説:その3

色々な発ガン因子に対して、自分の言葉で分類してみました。

1. 細胞変異因子
細胞変異因子は、DNAに直接的に働きかけ、損傷~改変をもたらす結果、細胞が変異(mutation) を引き起こし、その後のガン化に繋がる効果を及ぼす因子として定義されます。
前回述べた「イニシエーター」の殆どがこれに含まれます。
具体的には、以下の様なものがあげられます。

  活性酸素
  電磁波(ガンマ線、X線、紫外線)
  その他放射線(ベータ線、アルファ線、中性子線)
  ある種の化学物質(抗ガン剤を含む)
  ある種のウイルス

  このうち「ある種の化学物質」には以下の様なものがあります。

  A:直接的に体内で変異因子として働くもの:MNNG(methylnitronitrosoguanidine)、
                             4NQO(4-Nitroquinoline 1-oxide)など
  B:体内で代謝された後に変異因子に変わるもの:HCA(heterocyclicamine)、
                                  アフラトキシン、
                                  タバコのベンツピレン、
                                  抗ガン剤のシクロホスファミドなど
  
子宮頸ガンの原因ウイルスであるヒトパピロマウイルスの様なウイルスは、ヒトのDNAに自らの遺伝子を組み込んで自分の遺伝子を発現させる結果、細胞の変異を引き起こします。

2. 体内の恒常性システムを攪乱する事でガン化を誘発する因子
細胞分裂制御システムを攪乱する事で細胞分裂の速度や程度を拡大したり、感染などによって慢性炎症を引き起こしたり、免疫系を弱体化する事によって微少ガン細胞排除システムの機能不全を起こしたり、ホルモン系を攪乱する事で当該ホルモン標的細胞の過剰増殖を引き起こしたり、物理的な長期の刺激によって慢性炎症や細胞分裂の長期化を引き起こしたり等々、生体の恒常性システムを攪乱する事でガン化を誘発するような因子も数多く見られます。従来「プロモーター」と呼ばれていたものの多くはここに含めて良いと思います。

  細胞分裂制御システムの攪乱:ピロリ菌のCagA、
                      TPA(12-O-Tetradecanoylphorbol 13-acetate)
                    長期にわたる物理的反復刺激による細胞増殖など
  免疫システムの攪乱
  A:慢性炎症:感染によるもの 肝臓ウイルスによる肝ガンなど
            感染以外のもの アスベストな
  B:細胞性免疫の弱体化 エイズウイルス感染によるヘルパーT細胞弱体化の結果                                      生じるカポジ肉腫、
                  過剰なストレス、                  
                   老齢に伴う一般的なガン発生率増加への関連など
  
  ホルモン系の攪乱:ホルモン剤の不適切な長期投与、
               ヒトの自然な成長過程への文明の介入(難しいですね!)
               牛乳や動物性脂肪の長期的過剰摂取など
  
  その他:鉄元素の過剰摂取による局所における活性酸素の発生、
       動物性脂肪の過剰摂取による全身性慢性炎症など

3. 細胞変異因子が細胞内で働きやすくするのを助ける因子
例えば粘膜面の殆どは粘液で覆われていますが、これは、体に必要なモノは取り込みたいけれど有毒なモノは排除したいと言う、体が求める二律背反のメッセージが具現化されたシステムです。従いまして、この様な粘液バリヤーを破壊する様なモノ、或いは体表面の皮膚バリヤーを犯す様なモノは、しばしば発ガンを手助けする働きをします。

アルコール:特に強いアルコールは口腔~食道の粘膜面に物理的な急性炎症を起こしますので、この部分が強い変異源に暴露されますと、そこの細胞のDNAに損傷が生じる確率が高くなります。
  
食塩:食塩の過剰摂取が胃粘膜の損傷をもたらす可能性が指摘されており、その結果、ピロリ菌の発ガン効果を促進する可能性が指摘されています。
  
熱い食品~飲み物の長期的摂取:アルコールと同様に、粘膜損傷が指摘されます。
  
細胞変異因子防御システムの欠如:白色人種の様に、体表面の皮膚のメラニン色素の欠如は紫外線による皮膚細胞DNA損傷の確率を高めますので、結果、皮膚ガンの増加に繋がります。ある種の美容品に関して、注意を喚起する必要があると思います。
また、アセトアルデヒド分解酵素(ALDH)をヘテロで有しているヒトが日本人には多いのですが、この場合、エタノールが分解されて生じるアセトアルデヒドが血中に滞留する時間が、ALDHをホモで有しているヒトに比べて長くなります。アセトアルデヒドの発ガンメカニズムは必ずしも明らかではありませんが、疫学的にはALDHと食道ガンの関係は比較的明らかと言って良いかと思いますので、これもこの項目に含めます。因みに、ALDHを持っていないヒトはそもそもお酒を全く飲めませんので、ある意味安心です。

4. ブラックボックス
ブラックボックスと言うのは、「良く分からない」事をカッコよく言っただけです。具体的には、「腸内細菌叢の役割」が挙げられます。

マウスに大腸ガン関連の遺伝子を組み込んで育てると、大腸粘膜の細胞が異常増殖して「前ガン病変=ポリプ」がたくさん出来ます。この様なマウスを生まれた時から無菌環境で育てた場合、前ガン病変は形成されますが、本格的なガンには至りません。無菌環境のマウスですから、このマウスには腸内細菌叢は存在しません。
一方で同じ様なガン遺伝子を組み込んだマウスを普通の環境で育てますと、立派な大腸ガンが形成されます。
このことから、腸内細菌が大腸ガン形成に関与しているのは確かです。
けれども、どの様な種類の菌がどの様なメカニズムで関与しているのか、未だ明確には分からないのが現状です。

また、脂肪を摂取すると、肝臓で作られた胆汁が胆嚢から消化管に放出され、脂肪をミセルと呼ばれる小さな脂肪滴にまで分解しますが、この時、胆汁に含まれる胆汁酸が大きな役割を果たします。胆嚢から分泌された胆汁酸を「一次胆汁酸」と呼びますが、一次胆汁酸の大部分は小腸下部で再吸収されて肝臓に戻り、再合成~再利用されます。この時、少量の胆汁酸は吸収されずにそのまま消化管を下り、大腸まで到達します。大腸に到達した胆汁酸は腸内細菌によって代謝を受け、毒性を持つ胆汁酸に変化します。この様な胆汁酸を「二次胆汁酸」と呼びます。

二次胆汁酸が発ガンプロモーター作用を有している事は以前より知られており、これが「脂肪の過剰接種は発ガンに繋がる」と言われて来た事の説明の一つでしたが、最近、二次胆汁酸が肝臓のある種の細胞を刺激し、その細胞が炎症性サイトカインや細胞老化関連分泌因子を放出する結果、肝ガン発症リスクを高める、と言う報告がありました。この場合は肝臓ガンですので、先の大腸ガンのお話とは関係が無いかも知れませんが、少なくとも腸内細菌叢が発ガンに関わっている事の最新の証拠の一つではあります。

とはいえ腸内細菌叢の発ガンへの関わりの解明は極めて困難で、現段階ではブラックボックスとしておくのが無難かと思います。

本日はここまで。一応この程度に前知識を保持してくだされば、今後の議論も理解出来るかと思います。 ガン遺伝子やガン抑制遺伝子、或いは伝達系やDNA修復機構などに関してお話すると煩雑過ぎる結果となるのが見え見えでしたので、省略致しました。それでも、結構しんどい作業となりましたが・・・・・・。
                         
  
                    

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2014年4月14日 20:12に書いた記事です。

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