お焦げとガンについて-15

| | トラックバック(0)
その他の気になる因子-1

北欧4カ国間並びに日本と韓国の二カ国間での比較から、肉の消費量とは別に、大腸ガン罹患率に影響している可能性があるいくつかの要因が浮かび上がりました。以降、これらについて考えてみたいと思います。始めに、牛乳について議論します。

牛乳は悪者なのか?良い者なのか?

暫く前、牛乳悪玉論が流行った事がありました。アメリカ帰りの医師が唱え始めた説で、内視鏡でアメリカ人の大腸を何万例(だったかな?)も観察した結果、凄く荒れてるとの事。その原因は「牛乳だっ!」と断定したのが始まりだったと思います。

このブログで以前にも書きましたが、これがホントかどうかは分からないです。ホントかも知れません。でも、アメリカ人って、いまさらここに書くまでも無く、皆さん十分にご存じだと思いますけど、何でもかんでも「摂りすぎ」でしょ?牛乳もそれこそ「毎日バケツで何杯も飲む」ぐらいでしょ?大袈裟だけど。だからじゃないの?それをそのまま日本に持ち込んではいけないんじゃ無いの?簡単な理屈じゃん、、、。

とか思ってましたが、いざ実際に調べてみると、アメリカ人の牛乳消費量なんて可愛いものでしたwwwww (下図)!!!

牛乳消費量 1994.jpg
調べた限りに於いては、フィンランド人一人当たりの牛乳消費量は世界一です。アメリカの2 倍近くもあります。押し並べて、欧州諸国の非常に高い消費量が目に付きます。仮に牛乳消費量と「大腸粘膜の荒れ」が相関するのであれば、フィンランド人の大腸粘膜はボロボロで、そこから発ガン物質も進入して大腸ガンももっと多く発生しているはずですけど、もちろん事実は逆です。

それでは牛乳は「飲めば飲むほど健康に良い」と言って良いのでしょうか?

下の図は、牛乳消費量と心筋梗塞との関連を示した有名な図です。

牛乳消費量と心筋梗塞.jpg
これは統計的にも綺麗な相関が出ていますね!牛乳消費量と心筋梗塞との間には何らかの比例関係がある様です。このシリーズでは大腸ガンのお話をしておりますので、心筋梗塞に関して突っ込んだ議論はしませんが、牛乳と心筋梗塞との関連においては、牛乳中のコレステロールに疑いの眼差しが注がれています。

但しこれは、先に述べた様に、「飲めば飲むほど健康になる」と言う仮説が崩れただけであり、「適量を飲む限りに於いては、牛乳は健康に大きく役立つ」と言う命題が否定される訳ではありません。
この様な話が出ると必ず「黒か白か、マルかバツか」と言うお話になってしまいがちですので、この点大変に注意すべき所です。

牛乳は心筋梗塞の他にも、乳ガンや子宮ガン、或いは前立腺ガン等の、性ホルモン依存性発ガンの発生に関与していると言われていますが、本当でしょうか?これも世界各国との相関を調べた報告があります(下図)。

乳がん発生率-2.jpg
こ、これって、牛乳との相関じゃ無いです!牛乳ではなく、牛肉との相関がめっちゃくちゃ綺麗に出てるじゃ無いですか!!!牛乳の消費量は中間位なのに、牛肉の消費量が世界一のウルグアイがトップです!イスラエルもデンマークも強いです。一方のフィンランド~スエーデン等、牛乳消費量に比べて乳ガン発生率は低めじゃ無いですか!!!

上の図からは、乳ガンと牛乳の消費量との関係ははっきりしません。この手の統計は、既に以前にも指摘しましたが、人口10 万人当たりの罹患率ですので、色々な要因が雑音となります。上の図も、下位の国々にウガンダ、マリ、ジンバブエ等、「比較以前」の国々をたくさん載せていますので、r (アール;相関係数)が高くなるのも当たり前です。これらの国々を除いて、ある程度の「先進国」を集めて比較してみると、個人的には、これは「牛肉との相関」を表している図に見えてしまいます。但し日本と韓国との関係が逆転していますので、確かに乳ガンは「牛肉」だけで語る事は出来ない様です。

次に、牛乳に含まれているカルシウムの存在と大腸ガンとの関係について考えてみたいと思います。カルシウムとビタミンD と日照時間の関係については、述べるまでも無いですよね?・・・ね?・・・・

日光の照射量が少ないと大腸ガンに罹りやすくなる?

まず始めに、「お焦げとガンについて-8」の世界マップを見てください。ザッと見て、西欧から北米にかけての地域に大腸ガンが多く、東南アジア~アフリカ~南米には少ないと言う印象が生じます。ここから、「寒い地域、特に日照が少ない地域に大腸ガンって多いのでは?」と言う疑いが生じます。
でも、一般的に言って、日照が多くて暑い地域は一人当たりのGDP が少ない地域が多いですし、また、GDP が高くて大腸ガンも多い豪州や東アジア地域は日照に事欠くことは無い地域ですから、この事実だけを理由にこの仮説は却下しても良いと思うのですけど、もう少し細かく見ていくと、「イヤイヤ、ナンか微妙に関係しているカンジがするゾ?」と言う雰囲気になってきますので、皆様どうぞ今暫くお付き合いをお願い致します。

これまで世界各国との比較の中で、議論を行ってきました。今度は一国内ではどうなのか?で見ていきます。始めに、日本国内県別のガン罹患率を見てみます。下の図は、県別のガン罹患率マップです(2008年)。大腸ガン限定の罹患率マップを見つけることが出来ませんでしたので、「男女合わせた全てのガン」の結果となります。秋田、山形、青森、鳥取、大分が多いのが分かります。沖縄、少ないです。

県別ガン患者数 2008.jpg
次に、男女の大腸ガン死亡率マップです(2008年)。大腸ガン罹患率マップが見つからなかったので、死亡率で見てみます。まずは男から。秋田、青森、新潟、島根と言うカンジです。

県別大腸ガン死亡者数 男性 2006.jpg
次は女性。島根、秋田、青森、岩手、佐賀というカンジです。やはり東北~山陰が目立ちます。

県別大腸ガン死亡者数 女性 2007.jpg

次に牛肉消費量の県別マップです。

県別牛肉消費量 2008.jpg
西日本が多いです。ガン患者統計とは全く相関しないカンジです。因みに豚肉マップは東日本が優勢でしたが、これもガン分布とは無関係でした。

次に、日照時間のマップを出してみます。

県別日照時間 2011.jpg
おおっと!秋田、青森、山形、島根、鳥取の日照時間が見事に少ないですね!
うう~~ん、静岡、日差しが宜しいですねえ、、、。ミカンと黒はんぺんと、♪ 茶のか~お~り~、ですね!なんか関係するのでしょうか?

では、と言うので、アメリカ国内ではどうでしょうか?始めに日照時間から見てみます。

アメリカ日照時間マップ.jpg
メキシコ国境~アリゾナ~ニューメキシコ州辺りの砂漠地帯が最も日照時間が長く、北に行くにつれ減ってきますね。特に五大湖周辺と北西部のワシントン州が顕著に少ないです。次に男女の大腸ガン罹患率マップを載せます(2010年)。

アメリカ 大腸ガン罹患率マップ 2010.jpg
これは微妙ですね!もっとマッチするかと期待していたのですが、、、。アメリカは巨大な国なので、州別では無く、もう少し細かく区切った地図が欲しい所ではあります。

では、と言うので、アメリカの肉の消費量マップを見てみましょう(2010年)。

アメリカ食肉消費量マップ 2010.jpg
これは一人当たりの食肉量ですので「アリゾナやネバダ州の人口は少ないから無意味だ!」と言う事にはならないです。ユタ州とかも少ないですけど、宗教のせいですかね?アイダホの連中は、芋ばっかり食ってんでしょうね。北東部の州の食肉消費量が少ないのが特徴的だと思います。カリフォルニア~テキサスの一部~南部の一部~ワシントンDC 辺りが多いですね。やはり細かな大腸ガン罹患率マップが欲しい所です。

最後に、アメリカの牛乳消費量の分布図を見てみます(2002年)。
US milkconsumption 2002.jpg
これを見ると、五大湖周辺~北東部の牛乳消費量が多いですが、特に大腸ガンとは関係が無さそうです。

牛乳中のカルシウム、ビタミンD、日照時間、そして大腸ガンの間に関連があるのか無いのか見て参りましたが、日本国内で見る限り、日照時間と大腸ガンの間には大いに関連がある様な気がしますが、アメリカでは余り関係が無い様な気もします。また、始めに指摘した様に、オーストラリアやニュージーランドの例もあり、国別と言う大きな視野から見ると、これとは別の絵模様が描けます。

この理由ですが、日本国内の県別結果では母集団の数が少なすぎるので、雑音の影響が大きく出てしまうのでは無かろうか?と考えます。早い話が、過疎地域の老齢人口の割合が大きいので、こんな結果になっている可能性があります。


では、と言うので、都道府県別老齢者人口の割合を見てみますと、

都道府県別老齢者人口.jpg

・・・・・・・・・・なんだよ、オイっ! って、カンジです・・・・・・・・・。

結局、牛乳、カルシウム、ビタミンD、大腸ガンの間の関係は良く分からない、と言うのが本当のところです。

アメリカは変化しつつある!

最後に、アメリカ人の大腸ガン死亡率がジリジリと減少傾向にあるデータを、食肉消費量の推移と共に示して見たいと思います。

Age-Adjusted Colon Cancer Mortality Rates for White Females by US 1950.jpg
これは、アメリカ白人女性の大腸ガン死亡率の変化を州ごとに表したものです。罹患率マップが見つからなかったので、死亡率で代表させます。昔は五大湖周辺~北東部の大腸ガンによる死亡が非常に多かった様ですが、徐々に減少しつつあるのが分かります。死亡率ですから医療技術の向上による結果である可能性も排除は出来ないのですが、たぶん、罹患率も似たような動向を示していると思います。綺麗なデータです。

次に、アメリカの食肉消費量の時系列的変化を見てみます。

アメリカ 食肉消費量の推移.jpg
豚肉と鶏肉の消費量が伸びる一方で、牛肉の消費量はジリジリ減少しつつある事が分かります。また、魚に関しては、野生の魚(漁師が海や川で捕る魚)の量は減る一方で、養殖魚の伸びが急激です。これらの変化は、食肉の質が病気に影響する、と言う認識が、アメリカ人の間に広まりつつある事の明らかな証拠であると思われます。恐らく、昨今のCool Japan の影響もあるかと思います。このデータは、「お焦げとガンについて-8」で述べた、「アメリカの食肉消費量は昔も今も余り変わらないのに、大腸ガンの罹患率が大きく低下したのは不思議だ」と言う疑問を良く説明しています。

でもちょっと意外なのは、野生の魚の消費量が多い事です、、、。何でしょうね?ミシシッピーでナマズでも捕って食べてるのでしょうかね?トムソーヤでしたらいざ知らず、あんまし現代の普通のアメリカ人のイメージとはかけ離れたデータです、、、。

いずれにしましても、要するに、牛肉消費量の低下がアメリカ人の大腸ガンの罹患率低下に大きく寄与している可能性を示すデータである、と言えると思います。





トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: お焦げとガンについて-15

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.kigen-technosakaki.jp/mt/mt-tb.cgi/85

この記事について

このページは、喜源テクノさかき研究室が2014年4月29日 10:11に書いた記事です。

ひとつ前の記事は「お焦げとガンについて-14」です。

次の記事は「お焦げとガンについて-16」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。