学会報告-3

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続きです。

そういうわけで、直接に細胞内部の遺伝子を改変する事も無く、何らかの外部による簡単な刺激によって、ヒトを含む哺乳類の、既に分化が終わった細胞をデフォルトして、未分化の状態に巻き戻す事が出来る可能性が出て参りました。STAP細胞の場合、未だヒトの細胞には手を付けて居ない様ですが、たぶんですけど、時間の問題かと思います。収穫率とかガン化の問題とか、解決すべき課題には色々ありますが、とにもかくにも「何故そうなるのか?」と言う初期化のメカニズムを解明する事が最大の課題です。これを決定的に解明したヒトが次のノーベル賞候補となることは、これは間違いありません。

で、漸く今回のテーマに入りますが、「乳酸菌を用いて多機能性細胞を作り出した!」と言う講演が昨年11月の日本乳酸菌学会秋期セミナーで有りましたので、これについてお話しをしたいと思います。

お話されたのは熊本大学の先生で、もともとは乳酸菌学者では有りません。「バクテロイデスと言う名前の細菌をマウスに口から与えたとき、胃の上皮細胞の遺伝子発現に大きな変化が生じる」という他の研究者の報告を受け、細菌と細胞との関係性に興味を持ち、「それなら腸内細菌が腸管粘膜細胞の遺伝子発現にも影響を与えている可能性があるのではなかろうか?」と考えて実験を始めたそうです。ヒトの皮膚繊維芽細胞に色々手を加え、その後に乳酸菌を与えたところ、繊維芽細胞が乳酸菌を取り込む事が分かりました。この乳酸菌を取り込んだ繊維芽細胞を調べたところ、将にiPS細胞やSTAP細胞と同じように、細胞が初期化されている事が分かりました。初期化された細胞に各種の分化を誘導する処置を施したところ、様々な細胞に分化することも分かりました。さらにこの細胞をマウスの精巣に移植すると、ガン化する事もなく、精巣を形成する各種組織の細胞に分化する事も証明出来ました。

以上の結果から、将に「乳酸菌によって多能性細胞が作製できる」事が分かった訳です!因みに、細胞に取り込ませる乳酸菌は生きている必要は無く、乳酸菌菌体に存在するある種の物質が細胞質内に入る事によって初期化が生じるそうです。但し、その物質は熱には弱いとの事でした。より詳しい内容を知りたい方はOhta K. et al. (2012) PLOS ONE 7: e51866 を読まれると良いかと思います。但し、専門家でないとチンプンカンプンの世界ですので、そこの所はヨロシクです。

ともかくも、今後急速に似たような報告が世界中から出てくる事が期待されます。先のSTAP細胞の場合、そもそもがキャピラリーと言う極細のガラス管に細胞を通す事によって初期化された細胞が生じる現象を観察した事がその後の研究の切っ掛けなのですから、銀ブナの卵子のお話からも連想される様に、深遠な生命現象の底の底には、実は誠にあっけない仕組みが横たわっている可能性すら、ナンか、感じられてしまいます。

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2014年2月11日 16:12に書いた記事です。

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