ちょっと研究内容 その八

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みなさまこんにちわ!ご機嫌いかがですか?九月も半ばと成りましたが、今年の夏の猛烈な暑さも幾分和らぎつつあるようです。

一方、今現在、外は大荒れの天気。台風が丁度長野を通過しつつある状況で、横殴りの雨と風が結構凄いです。皆様ご承知のように、センセは沖縄県は石垣島の生まれ。これに加えて宮崎にも6年居りましたので、台風には慣れっこです。長野に来てから既に10年以上になりますが、その間ときどき台風が通過しました。けれども沖縄宮崎の台風に比べ長野の台風は、ま、はっきり言って、「そよ風」ってところですね、、、。けれどもこの時期は収穫の時期に掛かりますし、特に長野はリンゴの産地ですので、リンゴ農家の被害が心配です。温暖化の影響で比較的寒冷な気候を好むリンゴの環境が悪化しつつあるようですし、リンゴやミカンなどの果樹は安定的に果実を得るようになるまでに長い時間が掛かりますので、簡単に商売替えをする訳にもいかず、やはり農業と言うモノは、単純に市場原理だけでとやかく言うべきものでは無いのかも知れません。かといって高い関税や高齢化、非効率性などをそのままにしておいて良いモノでもありません。世の中には絶対的に正しい解答が存在しない問題も数多い訳ですから、「数を頼みのゴリ押し」などは問題外としても、やはり間断のない政治的な微調整を継続する、と言うのが、結局は現実的な大人の態度なのかも知れません。

さて、長らく続いた疲労シリーズも目出度く完結し、その間に取得した特許も増えましたので、今回と次回に亘り、久しぶりに研究のお話をしようと思います。

まずは、今年2月に取得した3つ目の特許、「植物系乳酸菌の使用方法及びその植物系乳酸菌を含む医薬品及び食品及びそれらの製造方法:特許第5204986号」のお話を致します。

特許-3.jpg   

この特許の内容は、実は以前にこのブログで紹介しております。でも皆様とっくにお忘れでしょうから、ここで改めてご紹介致しますね!

テクノさかき研究室では、日本全国の漬け物や糠床から数多くの乳酸菌を分離し、これらの機能性を調べて参りました。その結果、スイカの醤油漬けから分離された乳酸菌に、高い免疫賦活能が証明されました。

その乳酸菌の名前は、Lactobacillus curvatus KN40。ラクトバチラス・クルバータスと言います。curvatus と言う名前から分かる様に、菌体がカーブした格好をしているのが特徴で、丁度、曲がったキューリの様な形をしています。

ちょいと余談となりますし、専門家以外には全く無関係のお話なんですけど、専門誌には乳酸菌の特徴として「非運動性」、つまり「動かない」事が述べられていますが、Lactobacillus curvatus菌はある程度動きます、と言う事だけ指摘しておきます。確認済みです。

さて、本題に戻ります。既に多くの研究結果から、乳酸菌による免疫賦活能は、その多くが菌体によるものであることが分かっておりますので、まずは分離した100株以上の乳酸菌全ての培養液を加熱滅菌し、ここから死菌体を分離して、これらをマウスのマクロファージ株の培養液に接種して、マクロファージのIL12(インターロイキン12)の産生を調べました。IL12はマクロファージから分泌されるサイトカインと呼ばれる物質の一種で、NK細胞を活性化する作用を持っています。実験の結果、Lactobacillus curvatus と同定された乳酸菌がマクロファージを刺激して高いIL12を産生することが分かりましたので、これをLactobacillus curvatus KN40と名付け、その後の実験に供しました。下の図が、その結果の一部です。縦軸がIL12の産生量を表します。

IL-12.jpg

 

矢印がLactobacillus curvatus KN40です。 

 

 

 

 

 

 

次に、Lactobacillus curvatus KN40が本当にNK細胞を活性化するのか、調べました。先に述べたように、Lactobacillus curvatus KN40がIL12の産生量を高めるのであれば、その結果NK細胞が活性化するはずです。免疫細胞の一種であるNK細胞には色々な仕事がありますが、中でも重要なのが「自分とは異なる細胞を排除する」と言う役割です。我々の体を作っている細胞は全て「認識票」の様なモノを持っています。NK細胞は、この様な「認識票」を有していない細胞を発見し、これをアポトーシスと言う方法で殺してしまいますので、変化を起こして自分とは大きく異なった結果認識票を失ってしまったガン細胞などを殺してくれる可能性がある訳です。

YAC-1と言う、NK細胞に感受性のある培養細胞を用い、Lactobacillus curvatus KN40の死菌体によるNK細胞の活性化を調べました。下の図は、その結果です。

 

NK活性.jpg 縦軸がNK活性の程度(YAC-1細胞を殺した程度)、横軸がKN40の死菌体の濃度です。

KN40の死菌体をネズミの餌に混ぜ、2~3週間食べさせた後、マウスの脾臓細胞を採取してYAC-1細胞と混ぜ、YAC-1細胞の死んだ割合を測定して表示しました。赤い棒と青い棒は脾臓細胞とYAC-1細胞を混ぜる割合を示しています。赤い棒に着目してください。

図から分かる様に、KN40の死菌体濃度が高まるにつれてNK活性も高くなることが分かりました。死菌体を0.01%にマウスに与えたときにNK細胞が最も活性化しました。この時の活性化の程度は、死菌体を全く与えなかったマウス群と比べ、統計学的にも有意でした。また、死菌体を0.02%に与えるとNK活性は逆に低下しましたので、取りすぎは逆に免疫系を抑制する可能性も示唆されました。

 

先に述べたように、NK細胞の活性化はガン細胞の抑制につながる可能性が指摘されますので、Lactobacillus curvatus KN40の死菌体をマウスに食べさせ、ガン細胞に及ぼす影響を調べました。

肺転移対照のコピー1.jpg 肺転移陽性のコピー2.jpg皮膚ガン細胞であるメラノーマ細胞をマウスのしっぽに注射しますと、メラノーマ細胞はその後にマウスの肺臓に到達し、そこで黒い癌結節を形成します。

左がメラノーマ細胞を接種していない正常な肺、右がメラノーマ細胞接種後、肺に転移して癌結節を形成した肺の図です。KN40の死菌体を食べさせ、その後にメラノーマ細胞を接種し、結節を形成させた後、この黒い結節数を数えて、結果を下の図に表しました。

 

転移抑制実験-2.jpg縦軸がマウス1匹当たりの肺の結節数、横軸が KN40死菌体の濃度です。赤い棒が死菌体を与えなかった群、橙色が0.01%に与えた群、黄色が0.1%に与えた群です。

一見して分かるとおり、死菌体濃度に従って肺臓のガン転移結節数が少なくなっています。統計学的にも有意な結果でした。

以上の一連の結果から、Lactobacillus curvatus KN40の死菌体をマウスに食べさせると、メラノーマ細胞の肺への転移が有意に抑制される事が明らかとなりました。メカニズムとしては、Lactobacillus curvatus KN40の死菌体がマウスマクロファージに食べられてIL12が産生され、その結果NK細胞が活性化し、その結果NK細胞がメラノーマ皮膚ガン細胞を攻撃して、最終的に転移抑制につながった、と解釈されます。ただし、NK細胞活性化の時には0.02%の死菌体濃度では寧ろ多すぎる結果となった一方で、ガン細胞転移抑制実験では0.1%で最大の抑制効果が生じた事から、単純に「NK細胞の活性化=ガン細胞抑制」とはいかない様です。他にも色々な要因が絡んだ結果、ガン細胞転移抑制につながったかと思われます。

いずれにしましても、乳酸菌の死菌体を「食べる」ことによってこの様な一連の結果が生じる訳ですから、「乳酸菌は生きていなくても良い」事を裏付ける明らかな証拠であると言えます。死んでいようが生きていようが、日常的に乳酸菌を何らかの形で摂取していく事が免疫系の働きを高め、結果としてガンを含む様々な疾病予防に役立つ、と言う事を認識していただくことが大事、と言う本日のお話で御座います。

いつの間にか、外は雨風ともに止んでおります。ここ坂城町のど真ん中を日本一の大河である千曲川が蕩々と流れておりますが、上流部で降った大雨のお陰で水位がずいぶん上昇している様で、つい先頃、町役場からのお知らせで、千曲川にかかる橋のいくつかが通行禁止となった放送を流しておりました。新幹線も軽井沢近郊で停止状態。陸の孤島となっております。ま、明日までには解除となるでしょうけど、、、。

 

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2013年9月16日 11:16に書いた記事です。

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