ちょっと研究内容 その七

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   皆様ご機嫌いかがですか?私は至極元気であります。本日は久方ぶりの祝日日。と言うわけで、久方ぶりのブログの更新と相成りました。

本日は春分の日ですね!と言う事は、昼と夜の長さが同じと言うことですけど、こちら坂城は未だ真冬そのもの。長野の真ん中、坂城あたりで本当にホットする様な春が来るのは、漸くも五月の連休まで待たなくてはならないのが本当のところです。

さて、本日は久方ぶりに最新の研究結果をご報告致します。

前回、大豆麹乳酸菌発酵液の水相に於ける抗酸化能に就いてお話致しましたが、今回はそれの続編、油相での抗酸化能に就いてお話致します。因みに水相とは「水溶液」、油相とは「油の状態」と考えてくださって結構です。

今回は油相での抗酸化能を調べる実験ですので、大豆麹乳酸菌発酵液中の油に溶ける成分をまずは抽出しなくてはなりません。そのために、大豆麹乳酸菌発酵液を一旦凍結乾燥し、これにメタノールやエタノール、酢酸エチルなどの油に溶ける有機溶媒を混ぜ、攪拌し、油溶性成分を抽出して、これをリノール酸自動酸化と言う実験系で調べました。リノール酸自動酸化系実験とは不飽和脂肪酸の一種であるリノール酸を強制的に酸化させる実験系ですが、これにある種の成分を混ぜ、その結果リノール酸の酸化が抑えられれば、その成分には油相での抗酸化能が有る、と判断する実験系です。この実験系は、油相での抗酸化能を持つ物質を調べるのに良く用いられる方法の一つでも有ります。

さて、その様な実験系を用いて調べた結果、大豆麹乳酸菌発酵液のメタノール抽出物中に、非常に強い抗酸化能が有る事が分かりました。

次に前回と同様に、豆味噌、米味噌、ヨーグルトそれぞれのメタノール抽出物を作製し、大豆麹乳酸菌発酵液メタノール抽出物との抗酸化能をリノール酸自動酸化系を用いて比較しました。写真はその結果です。リノール酸自動酸化 100922.jpg

SKLとあるのは 大豆麹乳酸菌発酵液の事です。液の色がピンク色となっていますが、ピンクの度合いが強いほど抗酸化能が無い、と言う証となります。この実験系では一番右にVC、すなわちビタミンCを対照として置いていますが、水相に於いて強力な抗酸化能を発揮するビタミンCでも、油相に於いては全く効果を発揮しない事がここから分かります。対照的に一番左のSKL、すなわち大豆麹乳酸菌発酵液の場合はほぼ透明ですので、ここから大豆麹乳酸菌発酵液は油相に於いても強力な抗酸化能を発揮する事が分かります。

大豆麹乳酸菌発酵液が油の酸化を抑制する事が上記のような試験管的実験から分かりましたので、次のステップとして、細胞膜の酸化を抑制する事が出来るか調べました。細胞膜は我々の体を作る細胞を外部環境から隔てている膜の事ですが、基本的にはこの膜は油の性質を強く持っています。従いまして、何らかの酸化物質が体内に入ってきた場合、その酸化物質が油相でも作用する物質であったとしたら真っ先に細胞膜に傷害を及ぼす事となりますので、これを防御する事は大変重要な事となります。方法は、ウサギ赤血球の細胞膜を集めて酸化物質で処理する系を用いました。酸化物質処理時に大豆麹乳酸菌発酵液のメタノール抽出物を加え、その結果酸化が抑制されれば、細胞膜局所に於いても酸化抑制効果がある、と見なすわけです。

ウサギ赤血球膜酸化抑制-2.jpg 図はその結果です。SKL、すなわち大豆麹乳酸菌発酵液の添加によって、濃度依存的にウサギ赤血球膜は酸化傷害から防御される事が分かりました。

次に、それでは実際に大豆麹乳酸菌発酵液が生きた細胞を酸化傷害から守ることが出来るのか、生きた細胞を用いて実験してみました。ある種の培養細胞に酸化物質を混ぜると細胞は死んでしまいますが、そのとき抗酸化物質を添加すると酸化物質による細胞死を防ぐことが出来るはずです。その様な実験系を用いて調べたところ、ウサギ赤血球膜での実験と同じように、大豆麹乳酸菌発酵液は酸化物質による培養細胞の細胞死を濃度依存的に防御する事が分かりました(図は無し)。このとき、培養細胞をあらかじめ大豆麹乳酸菌発酵液メタノール抽出物で処理しておくと、その後に酸化物質を添加しても酸化傷害を防げる事が分かりましたので、大豆麹乳酸菌発酵液は細胞膜を通過し、細胞内で働く可能性が示唆されました。

これを証明する為に、CDCFHという物質を使った実験を行いました。CDCFHというのは細胞膜を通過して細胞内に入り、その後に酸化されると細胞内で蛍光を発すると言う特徴を持った物質です。培養細胞をあらかじめ大豆麹乳酸菌発酵液メタノール抽出物で処理しておき、その後にCDCFHを細胞培養液中に投与しました。CDCFHが細胞内に取り込まれた後、酸化剤を培養液中に加えました。

写真Aは大豆麹乳酸菌発酵液メタノール抽出物を加えずにCDCFHと酸化剤とで処理した細胞です。一方で写真Bは大豆麹乳酸菌発酵液メタノール抽出物処理後に両者を加えた細胞の写真です。

酸化阻害細胞写真.jpg 写真A:大豆麹乳酸菌発酵液を加えない場合 

 

 

8) 写真-2-2.jpg

 

 

 

 

 

 写真B:大豆麹乳酸菌発酵液を加えた場合

 

 

 

 

 

 

 

 

この結果から、大豆麹乳酸菌発酵液メタノール抽出物は、確かに細胞膜を通過して細胞内に浸透し、その後に細胞質内で抗酸化能を発揮する事が確認されました。

最後に、このような大豆麹乳酸菌発酵液の抗酸化能が、大豆麹乳酸菌発酵液のどのような分画に存在するのか調べました。その結果、液体大豆麹中に抗酸化能が存在する事が分かり、しかも、液体大豆麹の抗酸化能は、液体大豆麹の培養過程で培養日数に比例して増加する事が分かりました。図は、液体大豆麹と培養日数に伴って抗酸化能が増加する過程をグラフに表したものです。

参加阻害率-2.jpg 

 以上の実験結果から、大豆麹乳酸菌発酵液メタノール抽出物は試験管的な条件下での抗酸化能だけでなく、実際に生きた細胞に対しても抗酸化能を発揮する事が分かりました。前回の報告は水相での実験でしたが、今回は油相での実験です。加えて培養細胞系でも効果を発揮しましたので、大豆麹乳酸菌発酵液はオールマイティーな抗酸化能を有している、と結論づけて良いかと思われます。

一方で、前回同様に今回も試験管~培養細胞レベルでのお話ですので、この結果は直接ヒトに適用出来るものでは無い、と言う事もまた言うまでもないことです。その点、ご注意ください。

なお、今回の結果はNew Food Industry 誌 Vol.54、 2012年号に掲載されておりますので、ご用とお急ぎでない方は購入されて読まれるとよろしいかと、最後に頼まれもしないのにPRをさせて頂いて本日のお開きと致したく存じます。

それでは皆様、良い墓参りを!

 

 

 

 

 

 

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2012年3月20日 10:12に書いた記事です。

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