ちょっと研究内容 その三

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前回は、マウスに発ガン物質を投与して大腸ガンを作らせる実験系の場合に大腸ガンの発生を予防するにはどれぐらいの数の乳酸菌菌体を飲ませればよいのか、と言うお話を致しました。

今回は、どれぐらいの数の乳酸菌菌体を飲めばガン細胞の転移が抑制されるのか、と言うお話を致します。

皮膚ガン細胞(メラノーマ細胞)をマウスのしっぽに注射すると肺臓に皮膚ガン細胞が転移し、結節を形成します。肺に転移した結節数を数える事によって乳酸菌の菌体を食べさせた群とそうでない群とを比較し、乳酸菌のガン細胞転移抑制効果を評価しました。なお、乳酸菌は加熱滅菌し、死菌体として与えています。図はマウスの肺に転移したメラノーマ細胞結節の写真です。左が正常な肺、右が転移した肺です。

肺転移対照のコピー1.jpg 肺転移陽性のコピー2.jpg

乳酸菌死菌体をマウスの餌に0.01%と0.1%の割合で混ぜて4週間与えました。餌を与え初めてから2週間後にメラノーマ細胞をしっぽに注射し、その2週間後に解剖して、肺に転移したガン細胞の結節数を数えました。

転移抑制実験-2.jpg グラフは、赤いカラムが乳酸菌を食べさせていない群の結節数で、一匹あたりおよそ300個ありました。真ん中のだいだい色のカラムは餌に0.01%に死菌体を混ぜた群で、結節数は約50%減っておりました。一番右の黄色の群は0.1%に混ぜた群で、結節数は70個ぐらい。何も食べさせなかった群の約25%程度の数でした。

このようなガン細胞の転移を抑制するメカニズムは、NK細胞と呼ばれる免疫細胞の機能が活性化されるためと考えられているので、同じ系を用いて、餌に混ぜた乳酸菌死菌体の量に比例してNK細胞の機能が高まるかどうか、調べてみました。

すると、NK細胞は餌に混ぜた乳酸菌の菌体量に比例して活性化し、0.01%の時に最大になる事が分かりました。実際の転移は0.1%の時の方がより抑制されるので、恐らく、ガン細胞の転移は、単純にNK細胞の活性化だけに依存しているのでは無いと思われます。

このときの乳酸菌の数を計算してみます。

このとき用いた乳酸菌は、Lactobacillus curvatus KN-40 と言う菌を用いました。マウス一匹あたりの一日の食事量を5gとしますと、0.01%は0.5mgに相当します。0.5mgというのはずいぶんと少ない量に感じますが、乳酸菌菌体を乾燥化すると重量は非常に減少してしまいますので、驚くべき数字ではありません。この菌の培養液中の数とその時の乾燥重量から計算すると、0.5mgは、およそ300μl (0.3ml) の培養液量に相当します。培養液1ml 中に10億個の乳酸菌がいるとして計算すると、およそ3億個の乳酸菌を毎日食べるとマウスはガン細胞の転移から50%ぐらい守られる計算となります。この値を人間に当てはめますと、3億個×2000として6000億個となります。

毎度毎度ヨーグルトを持ち合いに出してきて恐縮なのですが、この値をヨーグルトの量に換算しますと、ヨーグルト1cc あたり1000万個ですから、6000億÷1000万=6万cc、すなわち60リットルとなります。マウスを用いることのバイアスを考慮に入れて1/10にしても、一日あたり6リットルぐらいのヨーグルトを飲む量となります。抑制率を75%まで高めたい場合は0.1%となりますので、この場合は60リットル飲む必要があることとなります。今回の実験もまたマウスに強制的にガン細胞を注射すると言うものですからそのバイアスをも考慮に入れる必要があるかもしれません。しかし、その様な強制された系での転移を明確に抑制する量、と言う点を考えると、その必要は無いかと考え、今回はそのまま計算して見ました。

最後に、毎度毎度くどいほど繰り返しますが、今回の実験はマウスを用いた結果です。これが必ずしもそのまま人に適用される訳ではありませんので、その点ご注意ください。

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2010年8月13日 14:29に書いた記事です。

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