ちょっと研究内容 その二

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ここを読む前に「バイオジェニックスとは-5」を読んでおくと、より理解が深まると思います。

ここでは、

1.乳酸菌は死菌体であっても効果がある。

2.ある程度の量を飲まないと、効果がない。

の二点を理解していただく為に、いくつかのデータを公表したいと思います。

ACF-2.jpg  

図は、大腸癌(正確には大腸前癌病変)を作らせる為にある種の発がん物質を接種したマウス(はつかねずみ)に、Lactobacillus fermentum 、Lactobacillus rhamnosus 、そして酵母菌 の三種を混合培養して得られた培養液を餌に混ぜて8週間食べさせた時の実験結果です。(Nakayama et al. Bioscience and Microflora vol.21, p163-170, 2002)

図の見方は、棒グラフが短ければ短いほど、生じた大腸癌の数が少ないことを意味しています。 このとき用いた培養液は高圧加熱滅菌してありますので、投与した乳酸菌は全て死菌です。 死菌であるにも関わらず、グラフにある通り、餌に混ぜた培養液の濃度に比例して、大腸癌の数が減少しているのが理解されると思います。餌に10%に混ぜたときは、大腸癌数は1/3以下に激減しています。棒グラフに星印がついていますが、これは、実験結果が確かである確率が高い、と言うことを数学的に保証するものと考えてください。

この実験結果を人間に当てはめて見ます。

マウスの体重を30グラムとし、人の体重を60キログラムとすると、人の体重はマウスの2000倍となります。マウスが一日に食べる餌の量を5グラムとすると、餌の10%濃度は0.5グラムとなります。これに2000を掛けると、1キログラムとなります。

実験で用いた培養液中には、1ml あたり10億~100億個の乳酸菌がおります。間をとって50億個とします。ヨーグルトには1ml あたりおよそ1000万個の乳酸菌がおりますので、これで割ると、1キログラムの500倍、すなわち500kgの量になります。一日あたり500キログラム のヨーグルトを食べなくては、グラフで示したのと同じ効果が得られないことになります!

・・・なんかおかしいですよね?

体重とかマウスの食事の量とかの基本的な数値には大きな間違いはありません。けれども、マウスの様に小さな動物の体重あたりの代謝エネルギーは人間などの大型動物に比べて大きいので、体重比でより多くの餌を摂る必要があります。マウスの一日の餌の消費量5グラムは、そのまま体重比で換算すると、人間一人あたりの一日の食事量としては10キログラムです。牛乳、ジュース、味噌汁などの汁物を考慮に入れるとそれほど違和感のない数値ですが、マウスの餌はペレット状で、相当程度に乾燥したものです。それを考慮に入れると、過剰に見積もっていると考えられます。

次に、グラフでは確かに10%濃度で最大の効果が得られていますが、1%でも比較的良好な結果が得られています。ただし0.1%では星印はつきません。

さらに、この実験は、マウスに強制的に発がん物質を注射して作り上げた人工的なものです。日常生活において、実験で用いたような形で発がん物質が体内に入ってくることは、極めて考えづらいものがあります。

従って、実際に日常で予防効果的に摂取する分には、一日あたり500キログラムのヨーグルトを食べる必要は、もちろんありません。これまでの議論に基づいて再計算してみると、食事量で1/10、効果で1/10、実験バイアスを加えて1/10、総計1/1000を掛けますと、500キログラム×1/1000=500グラム=500ml となります。

この量は、「バイオジェニックス-5」でも述べましたように、食べようと思えば食べられる量ではあります。しかし、ヨーグルトは基本的には牛乳なので、毎日500mlの牛乳を飲むことの栄養学的な影響を考える必要があると思います。また、今回の計算結果は、先の実験に基づいたものであるので、別の種類の実験結果からは別の計算結果が得られます。

次回は別の実験を示し、それに基づいての計算結果を示したいと思います。

なお、最後になりましたが、あくまで今回の計算結果はマウスを用いた実験結果に基づくものであり、人の大腸癌に対する乳酸菌の治癒効果を保証するものでは決して無い、と言うことを重ねて強調しておきたいと思います。

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このページは、喜源テクノさかき研究室が2010年3月22日 10:56に書いた記事です。

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